平成エンタメ研究所

最近は政治ブログのようになって来ました。世を憂う日々。悪くなっていく社会にひと言。

オーシャンと十一人の仲間

2007年08月19日 | 洋画
「オーシャンズ11」のオリジナルとなる作品。
 フランク・シナトラ、ディーン・マーチン、サミー・デイヴィス・JRなど、スターが共演しているのも同じ。

★まずこのストーリー形式は大人数のキャラクターを描くのに適している。
 オーシャンたちが襲うのは、サハラ・リビエラ・サンズ・デザートイン・フラミンゴというラスベガスの5つのカジノ。
 場所が5カ所あり、オーシャンたちはふたりずつ組んで強奪にあたる。
 つまり5つの場所があるため、5つのエピソード展開が可能になる。
 5つの場所で展開されることはカジノの売上金の強奪という点で同じだから、観客にはわかりやすい。
 あとはどうバリエーションをつけるかだ。
 そのバリエーションでキャラの描き込みが出来る。
 同じ行動をするのでも人それぞれやり方、リアクションが違うからだ。

★あとこの作品で考えたことは、キャラに感情移入させるにはやはり心情描写・葛藤が必要だということ。
 心情描写がなければ、人物はただの記号でしかない。
 警官は警官、サミー・デイヴィスJRが演じるジョシュはトラックの運転手。
 ところが心情が描かれると、人物はたちまち親近感のある人物に変わってくる。

・電気技師のトニーは最初この仕事を断る。
 刑務所から出て来たばかり、これからは家族と穏やかに暮らしたい。
 しかし肺の病気であと半年しか生きられないとわかると、「息子が大学に行く金ぐらいは手に入るか?」と言って、仕事に参加する。
 これでトニーは観客の共感を得る。
・オーシャンは妻とよりを戻したいと思っている。
 しかし妻はこう言う。
「あなたが愛しているのは手に汗握る危険よ。女じゃない。一攫千金の大きなことばかり求めて人生から逃げている。私がほしいのは普通の夫よ」
 これでオーシャンがどういう人物かがわかり、観客は夫、妻、それぞれの立場でオーシャンと比較する。
 自分はオーシャンの様な男か普通の夫か?
 オーシャンの様な夫がいたら自分ならどう答えるか?
 これがすなわちキャラへの共感・理解だ。
 このオーシャンに絡み「男を手玉に取る」ビーという女が出て来るが、ビーとの関わりでも観客は自分と比較できる。

★物語の構成は次の様なもの。
 集合→仕込み→リハーサル→本番・実行→計画のほころび・危機→オチ。

 起承転結のお手本の様な構成。
 「集合」で各キャラの描き込み、目的が表現できる。
 「仕込み」でさらにキャラを描き込み、目的達成のための手口の一端を見せられる。
 「リハーサル」では計画実行にあたっての不安要素を描き(例えばトニーの持病のことなど)、いったん盛り上がりを下げる。
 「実行」では最大の盛り上がりを。クライマックス・転。
 「計画のほころび」では盛り上がりを避けてオチへ・結。

★それにしても60年代の男たちは何とかっこいいのだろう。
 スーツに身を包み、ひとつひとつの所作に品がある。
 煙草ひとつくわえるにしてもかっこいい。
 ビリヤードをしても、ポーカーをしても様になっている。
 一番驚いたのは電話ボックスの前に彼らが立っている姿。
 立っているだけで様になるとは!
 それぞれポーズが違い個性となっている。
 
 そしてラストは盗みの手口とオチ。



 以下、ネタバレ

★盗みの手口はこう。
 大晦日のカジノで電気の鉄柱を壊して停電にする。
 客は演出だと思って不思議に思わない。
 オーシャンたちは事前に赤外線ペンキをカジノの至る所に塗ってあって、金庫まで暗闇の中でも自由に行くことが出来る。
 後は盗んだ金をカジノのゴミ箱に。→警察の走査線に引っ掛からない。
 それを翌朝、ゴミ回収車の運転手に扮したジョシュが回収する。

★ほころびとオチはこう。
 トニーが持病のために死んでしまう。
 この死に不審を持った悪党のサントス(→金回収のためにカジノ側から雇われた)が、オーシャンたちを突きとめる。
 オーシャンたちはサントスを出し抜くために、トニーの棺に金を入れて運び去ることを考えるが……。

★追記
 オーシャンたちは第2次大戦で共に戦った落下傘部隊の仲間だった。
 「戦争から15年。昔の様に動けると思ったら大間違い。だから計画を断念しよう」というせりふや「軍に教えてもらったことを(この強奪の仕事をして)今こそ活かして返すべきだ」というせりふが気が利いている。


 

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