平成エンタメ研究所

最近は政治ブログのようになって来ました。世を憂う日々。悪くなっていく社会にひと言。

松本清張「三億円事件」~戦後日本とアメリカと闘った男

2014年01月19日 | 推理・サスペンスドラマ
 三億円事件、松本清張さんの推理はこうだ。
 以下、ネタバレ。


 犯人は地元のカミナリ族の若者ふたり。
 その犯人のひとりは元警察官僚の祖父に持ち、父親も元警察官僚で現在は警備会社をしている。
 つまり警察一家だ。
 祖父と父親は<警察一家の子供が三億円事件の犯人>というスキャンダル発覚を恐れ、自殺に見せかけて青酸カリで犯人の若者を殺した。
 奪った三億円は、父親の警備会社の経営再建のために使われた。
 捜査をしていた警察は祖父の圧力により、真相を知りながら隠蔽し、単なる自殺事件として処理した。

 なるほど。
 すべて辻褄が合っている。
 真実を警察が隠蔽しているのだから、未解決事件なのも当然だ。
 ディティールも符合している。
 犯人が着ていた白バイ警官の制服は、父親の警備会社の制服。
 三億円はいったん近くの米軍基地に隠された。
 基地なら警察も手を出せないと考えた犯人は、犯行後、米軍基地に忍び込んで隠したのだ。

 おそらく清張さんは<有力容疑者の自殺><有力容疑者の父親と祖父が警察官僚><警備会社><近くの米軍基地>といった個々の事実を再構成して、こんな仮説を立てたのであろう。
 さすが豊かな想像力!

 最後に主人公の武田秀哉(田村正和)という人物について。
 武田はアメリカに迎合する戦後の日本に嫌気がさして、渡米し、アメリカの保険会社の査定部長をしている。
 いわば故郷をなくした人間だ。
 彼は、ひとりでもがき、闘っている。
 アメリカで働き、アメリカ人とポーカー勝負をするのもアメリカと闘うためだ。
 そして今回、彼は三億円事件を通して、戦後日本と闘った。
 ひとりで闘う孤高の男。
 しかし、彼はあたたかい心も忘れない。
 彼の母親に対する気持ちもそうだし、犯人の姉・戸田悦子(板屋由夏)の罪の意識を感じ取ったこともそうだ。
 この人物設定はドラマのオリジナルなのかな?
 だとすると上手い脚色だと思う。

 

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2 コメント

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Unknown (よしぼう)
2014-01-20 23:17:17
こんばんは。
清張さんの原作「小説3億円事件」を読んだのは、随分まえになりますが、調査員はアメリカ人、報告書スタイルの小説で調査中で終わっていたような気がします。
そして何がなんでも「米軍基地」を入れてくるのが、いかにも松本清張作品という印象でした。
ここのところ、TBS「クロコーチ」、フジ「50年目の新証言」、そして今回のドラマと3億円事件の話をドラマでやたらと見かけます。(私は個人的には「クロコーチ」の犯人は生きていた、がロマンがあって好きですが・・・)特にテレビ朝日は「オリンピックの身代金」も含め、昭和の話のスペシャルドラマが多いような気がします。何か理由があるんでしょうか?
主人公がアメリカ人から田村正和にしたのは、大人の事情もありそうですが、ラストで日本国の警察を告発するという決着をつけるためなんでしょうね。
ただ、田村正和だけじゃなく、調査員が余貴美子と段田安則で、ナレーションが中谷美紀って昨年の清張スペシャルのまんまなのには、なんだかなーと思いました。昨年余さんと段田さんは夫婦役で、田村さんと中谷さんが親子やくでしたから。
ところで、「三億円事件」だけで、2日目の「黒い福音」も良かったですよ。ご覧になったと思いますが、感想は書かないんですか。
それとNHKで裏番組の「足尾から来た女」の方が、コウジさんの好みかと思ってました。
今どき何故、足尾銅山と田中正造と思って見たんですが、銅山の鉱毒で土地の土壌が汚染され、主人公の生まれた村が鉱毒の溜池にされ、富国強兵政策のため銅山を廃止することが出来ないというのは、まんま電気が必要なため原発を止めることができず、最終処理場を作ってしまうという現在の状況とダブります。次回の後編が楽しみです。
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素材 (コウジ)
2014-01-21 09:34:10
よしぼうさん

おひさしぶりです。
最近、本当に「三億円事件」を扱った作品が多いですね。
衝撃的な未解決事件だったので、作家としては想像力をかきたてられるんでしょうね。
逆に「オウム事件」とかだと、まだ生々しいでしょうし。

昭和の事件を扱ったSPが多いのは、作り手の郷愁、団塊の世代などの高年齢視聴者を意識しているためでしょうか。
それとも昭和という時代から現代をとらえ直すという意図とかもあるんですかね。

「足尾から来た女」は録画しています。
レビューは後編といっしょに書こうと思っていますが、すごく楽しみです。
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