平成エンタメ研究所

最近は政治ブログのようになって来ました。世を憂う日々。悪くなっていく社会にひと言。

スラムダンク リョータ、三井登場!

2007年06月10日 | コミック・アニメ・特撮
 キャラクターが立つのはふたりで会話して漫才が出来る時ではないかと思う。
 例えば、ゴリと花道、流川と花道。
 ゴリと流川はツッコミで、ゴリはボケの花道にど突き漫才。流川は花道に「どアホウ」と突っ込む。

 さて陵南との練習試合が終わり、作者は新たなキャラクターを登場させた。
 宮城リョータと三井寿だ。
 ふたりとも問題児。
 先程のボケ・ツッコミで言えば、ふたりともボケ。
 ふたりはゴリに突っ込まれる。

 まずリョータ。
 リョータは背丈が違うだけで花道と同じキャラだ。
 ケンカ早くて彩子さんに惚れている。彩子さんの言うことなら何でも聞く。
 だからふたりは最初対立するが、同じ恋の悩みを持つ者どうし、翌日には仲良しになる。
 同じ行動、同じ発想をするキャラの登場はバラエティ番組で言えば、『キャラが被る』ということで作劇上危険だが、さすがは井上雄彦先生、リョータを花道と共感するキャラとして描き、うまく処理された。
 花道とゴリ、花道と流川は心の底では理解し合い繋がっているが、表面上は対立の図式。だが花道を他のキャラと対立させてばかりだと描き分けが大変になってしまうので(敵チームのライバルたちもいるし)、理解し合い共感するキャラも置いたわけだ。
 これでゴリは花道とリョータふたりにツッコミを入れなくてはならなくなったわけだが、「スラムダンク」はこうしたキャラの配置が抜群にうまい。

 さて三井。
 ここで作者は三井を凄まじい葛藤のある人物として描いた。
 怪我での挫折、格下だと思っていた赤木に抜かれ、バスケ部に恨みを持っている。一方でバスケへの情熱を捨てきれない。(リョータの「いちばん過去にこだわっているのはアンタだろ……」のせりふは名セリフ)
 それまでの「スラムダンク」のキャラたちはそんなに深い心の葛藤を抱えていない。花道の葛藤にしても「晴子さんへの想い」「勝利への想い」「ライバルへの想い」といった葛藤だ。
 少年漫画の主人公の葛藤としてはそれでいいのだと思うが、より深い葛藤を持つ三井を登場させることでドラマが深くなった。キャラにバラエティが生まれた。
 三井は深い葛藤を抱えてバスケに復帰した分、花道や流川、ゴリたちと一線を画する。
 以後、不良時代のブランクが体力不足という三井の弱点にもなるのだが、うまい弱点の作り方だ。キャラの過去とマッチしている。
 また、これから全国大会に向けての試合を描いていく際に『シロウト桜木』という弱点だけではドラマが作りにくい。花道も上達して『シロウト』のままではいられないわけだし、その点でうまく計算されている。

 この様に巧みな人物配置がドラマを作る。
 ボケとツッコミ。
 被るキャラ。
 より深い葛藤を抱えたキャラ。
 人物造型の上でも「スラムダンク」は勉強になる。

★追記
 ある意味、三井は流川も同様のキャラとして設定されている。
 ふたりとも中学時代のスタープレイヤーで攻撃の両翼、すぐれた得点能力を持っている。
 違いは過去の挫折の有無と葛藤。
 流川にはアメリカ行きで迷うくらいで三井や花道ほどの葛藤はない。
 逆にその葛藤のなさが流川の魅力になっているのだが。



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