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平成エンタメ研究所

最近は政治ブログのようになって来ました。世を憂う日々。悪くなっていく社会にひと言。

「ワルキューレの騎行」と映画「地獄の黙示録」~ワーグナーの音楽は人を狂気に誘う

2024年02月28日 | 洋画
 リヒャルト・ワーグナーの『ワルキューレの騎行』
 初めて聴いた時、これ頭のおかしい曲だと思った。
・高らかに奏でる主旋律を管楽器!
・キュンキュンと泣き叫ぶ弦楽器!
・ワルキューレのブリュンヒルデ(歌手)が Hojotoho! Hojotoho!  Heiaha!

 実際、ワグナーに心酔する人には狂気の人物が多い。

 バイエルンの狂王ルートヴィッヒ二世
 彼のノイシュバンシュタイン城はルートヴィッヒ二世の理想の世界を実現するために造られた。
 目指すのは神話世界の実現だ。
 ワグナーはこれをオペラで表現したが、ルートヴィッヒ二世は建築物で表現しようとした。

 
 ※ノイシュバンシュタイン城~ヨーロッパに旅行に行った時、拝観した。
  完全に観光地化されていたが、そうでなければルートヴィッヒ二世の狂気を感じたかもしれない。

 アドルフ・ヒトラー
 ワグナーは民族主義者で、英国の資本主義、フランスの共和主義を否定し、
 ドイツの偉大さを芸術で表現しようとしたが、ヒトラーはこれを現実で表現しようとした。
 ワグナー同様ユダヤ人を憎み、憎悪を加速させてホロコーストをおこなった。
 連合軍がベルリンに迫っているのに、バイロイトのワグナー音楽祭を強行しようとした。
 ……………………………………………………………………………

 そしてコッポラーの映画『地獄の黙示録』

 ベトナム戦争。
 飛来する米軍のヘリコプター部隊。
 任務はベトコンの一掃。
 ヘリコプター部隊の隊長は戦闘時に『ワルキューレの騎行』を高らかに鳴らす。
『ワルキューレの騎行』を響かせながらベトコンおよび民間人を攻撃していく。
 ワルキューレとは「戦場の戦士を天上の宮殿ヴァルハラへ連れて行く女神たち」のことだが、
 ヘリコプター部隊はまさにそれ。

 

『地獄の黙示録』は戦場でのさまざまな狂気が描かれたが、このシーンの狂気はすごかった。
 ここで『ワルキューレの騎行』を持って来るコッポラーのセンス!
 この狂気についていけないヘリコプター部隊の隊員が戸惑った顔をしている所にテーマを感じる。
 途中でベトナムの村の子供たちの退避シーンを入れた所もコッポラーの主張を感じる。

 ワーグナーの音楽は人間を狂気に誘う。
 もしかしたら人間は狂いたがっているのかもしれない。
 日常はあまりにも平凡で、人を常識や世間の目や法律や道徳で縛りつけるから。
 人がワーグナーの音楽に魅了される理由はこんな所にあるのだろう。


※動画はこちら
「地獄の黙示録」~ワルキューレの騎行(YouTube)

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映画「サウンド・オブ・ミュージック」~コンサートシーンの「エーデルワイス」で涙腺崩壊!(動画あり)

2023年12月08日 | 洋画
 映画『サウンド・オブ・ミュージック』
 僕はこの映画を初めて観た時、素晴しすぎて劇場の椅子から立ち上がれなかった。

 どのシーンも音楽も素晴しいが、圧巻なのはラストの「ナチス主催の音楽会」のシーン。

 トラップ大佐(クリストファ・プラマー)はナチスの旗を破るくらいのナチス嫌いだ。
 だから祖国オーストリアがナチスに併合されることを憂いている。
 しかし歌で有名なトラップ一家はナチスが主催するコンサートに出演させられる。
 ナチスにとってはトラップ一家のコンサート参加は、併合のプロパガンダになるからだ。
 トラップ大佐はナチスのために歌うことに苦しむ。
 葛藤の末、彼が選んだのは、祖国を讃える歌「エーデルワイス」を歌うことだ。

♪ エーデルワイス エーデルワイス
 祖国を永遠に祝福したまえ ♪

 これを聞いて、ナチス支持者たちは苦い顔をする。
 歌っているトラップ大佐は感極まって涙があふれて来る。
 それを見た妻マリア(ジュリー・アンドリュース)は夫のもとに駆け寄り、
 いっしょに「エーデルワイス」を歌う。
 トラップ家の子供たちもやって来て歌う。
 家族で歌いながら、トラップ大佐は観衆にも「エーデルワイス」を歌うことをうながす。
 オーストリアの観衆たちはそれに応えて歌い、「エーデルワイス」の大合唱!

♪ エーデルワイス エーデルワイス
 祖国を永遠に祝福したまえ ♪

 ……………………………………………………………………………

 映画『サウンド・オブ・ミュージック』の最大のクライマックスだ。
 このシーン、まったく台詞がないんですよね。
 歌と映像だけで登場人物たちの心の中を描いている。
 僕はすっかり忘れていたが、トラップ大佐は途中で感極まって泣くんですね。
 それを見てマリアが駆け寄る。子供たちも来る。
 素晴しい!
 続くオーストリアの観衆の大合唱で涙腺崩壊!
 ここで「エーデルワイス」は反戦歌になった。
 

※動画はこちら
 The Sound of Music - Edelweiss(YouTube)

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ワンダーウーマン~DCコミックのアメリカン・ヒーローも健在だ! ドイツ陣地を突破するシーン、カッコ良すぎる!(動画あり)

2023年07月01日 | 洋画
『バットマンVSスーパーマン』『ワンダーウーマン』『ジャスティス・リーグ』
をイッキ見しました!

 アメリカン・ヒーローにはマーヴェル・ヒーローとDCヒーローの2系統があるが、
 こちらはDCヒーローの方。
 この3作品ともワンダーウーマンは登場していて、
 演じているガル・ガドット様があまりにもお美しくて、
『ワイルドスピード マックス』『同 メガマックス』『同 スカイミッション』まで見てしまった!
 …………………………………………………………………

 さて、今回は『ワンダーウーマン』。
『バットマンVSスーパーマン』『ジャスティス・リーグ』は監督がザック・スナイダーでマニアックなのだが、こちらは違う監督でエンタテインメントに徹している。

 時代は第1次世界大戦のまっただ中。
 ワンダーウーマン・ダイアナ(ガル・ガドット)の設定が面白い。
 ダイアナは世界から閉ざされたセミッシラ島の住むアマゾン族のプリンセスだ。
 セッミシラ島は世界から閉ざされた島なのでダイアナは外の世界のことをまったく知らない。
 そこへ偶然やって来た英国人兵士のスティーブ・トレバー(クリス・パイン)。
 ダイアナはスティーブから外の世界で世界大戦が行なわれていることを聞く。
 世界大戦の原因を軍神アレスの仕業だと考え、アレスを倒すためにドイツと戦う。
 ダイアナはまったく違う世界観の中で生きているのだ。
 このギャップの面白さ。

 この作品で圧巻なのは、ダイアナがドイツ軍の陣地を突破して村を救いにいく戦闘シーンだ。
 機関銃と迫撃砲で武装されたドイツの武装陣地を攻めあぐねている英国軍。
 このままでは背後の村が壊滅してしまう。
 スティーブ・トレバーは村を諦めて前に進もうと主張するが、
 ダイアナは「困っている人を見捨てておけない」と反論。
 単身ドイツの武装陣地を突破する決意をする。

 このシーンがすごい!

 
 ※山のように飛んで来る機関銃の弾丸を盾で防御する! カ、カッケー!

 
 ※相手を倒して見栄を切る。東映戦隊ものの影響か?

 激しい動きのシーンがあったかと思うと、今度は静止画で決めポーズ!
 随所にスローモーションも多様。

 このダイアナの奮闘にトレバーたちも立ち上がり、他の英国兵もこれに続く。

 やっぱり面白いな、ハリウッド映画は!
 アメリカン・ヒーローは健在だな!
 ハリウッド映画ではいつも悪者にされるドイツって可哀想……!
 でもドイツは大人だから、こういうことに目くじらを立てないんだよな。
 日本の右派は「日本が悪く描かれている」と言って怒りそう。

 というわけで、この戦闘シーンの動画があったので、ぜひ御覧下さい!

 Wonder Woman | No Man's Land Battle (YouTube)

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「工作~黒金星と呼ばれた男」~安倍政権の支持率が落ちると、なぜ北朝鮮はミサイルを撃って来たのか?

2023年01月28日 | 洋画
 安倍政権の時代。
 選挙が近くなったり、支持率が落ちた時、なぜ北朝鮮はミサイルを撃って来たのか?
 ネットでは、こんなウワサが流れていた。

 実は安倍政権は北朝鮮は通じていて、
 政権が危機に陥ると北朝鮮にミサイルを撃つよう要請していた。


 僕はいくらなんでもそんなことはないだろうと思っていたが、
 最近、見た韓国映画『工作~黒金星と呼ばれた男』でこんなことが描かれていた。
 1997年の韓国大統領選挙で左派の金大中が当選しそうになった時のことだ。

・北朝鮮は外貨が欲しい。
・韓国の国家安全企画部(KCIA)は左派の金大中を大統領にしたくない。
・国家安全企画部は北朝鮮に40万ドルを渡し、
 選挙の直前、軍事的挑発をおこなうように要請する。
 北朝鮮の脅威が高まれば、韓国国民は安心を求めて与党に投票するからだ。


 これは『北風工作』と呼ばれる現実の事件で、後に発覚して逮捕者も出たらしい。
 なるほど。
 国際政治というのはこんなふうに動いているのか。
 一見、敵対しているように見える北朝鮮と韓国。
 でも、利害が合えば裏で簡単に手を結ぶ。
 ここには右や左といったイデオロギーは関係ない。

 この『北風工作事件』を考えると、
 安倍政権と北朝鮮のミサイルの関係が想起される。
 たとえば──
・安倍官邸は「選挙が近いからミサイルを撃ってくれ」と北朝鮮に要請する。
・工作資金は官房機密費など。
・要請ルートは『安倍政権→統一教会→北朝鮮』
 まあ、これは想像でしかないのだけれど。
 でも岸田政権になってから北朝鮮はほとんどミサイルを撃って来なくなったよね。

 というわけで、世の中に出来事はすべて裏があると思って見た方がいい。
 あまり行き過ぎると『陰謀論』になってしまうのだけれど。
 今、話題になっている中国脅威論も誰かが演出しているのかもしれない。

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ラブ・アクチュアリー~クリスマス・イブに観たい映画! これぞ英国のユーモア!

2021年12月24日 | 洋画
 本日はクリスマスイブらしい。
 昔はワクワクしたけど、今は平常運転。
 老けたことを実感する。青春は遠くなった?

 そんな中、クリスマスに観たい映画は『ラブ・アクチュアリー』
 オムニバス形式で語られる、クリスマスイブの何組かのカップルの物語だが、これらが英国のユーモアで全部お洒落。
 
 たとえば──以下、ネタバレ

 英国首相と秘書。
 首相は新任の秘書のことが気になっていて、こう尋ねる。
「君は誰と住んでいる? 恋人? 夫? 子供三人?」
「両親と住んでいますわ。恋人とは別れました。私のことを太ってると言ったから」
「その男を首相の権限で、狙撃手を使って暗殺してやろうか」(笑)

 恋に悩む首相はサッチャー元首相の肖像画に尋ねる。
「どうしたらいいんでしょう?」
 そして、何も答えない肖像画のサッチャーに対して、こうつぶやく。
「鉄の女には無理か」(笑)

 気になっている秘書が首脳会談でやってきたアメリカ大統領に誘惑された時には、記者会見でこうアメリカに怒りをぶちまける。
「われわれはアメリカには屈しない。英国は小国だが、偉大な国だ。われわれには偉大なものがある。シェークスピア、チャーチル、ビートルズ、ショーン・コネリー、ハリー・ポッター、それにベッカムの右足」(笑)

 下ネタのユーモアもある。
 破天荒でメチャクチャな老ロックシンガーがインタビューを受ける。
「今までで最高のSEXの相手は?」
「ブリトニー・スピアーズ」
「本当ですか?」
「ウソだよ。最低だった」(笑)

 こんなのも。
「この曲がNO.1になったら、TVで素っ裸になって歌ってやる。下見するかい?」
 と言って、ズボンのファスナーを下ろすロックシンガー。
 すると司会はズボンの中のモノを見てつぶやく。
「NO.1にはなれない」(笑)

 会社社長と女性社員はこんなお洒落な会話をする。
「君はここに勤めてどれくらいになる?」
「2年と7ヶ月、3日と3時間ですわ」(笑)
「私のことを好きになったのは?」
「2年と7ヶ月、3日と1時間半ですわ」(笑)

 そして作家と家政婦。
 作家がタイプライターで打ち出した原稿が、家政婦の不注意で風で飛んで湖の中へ。
 家政婦は冬の寒い中、湖に飛び込んで原稿を拾う。
 その時に家政婦は言う。
「駄作だったら許さないわ」(笑)

 ふたりの恋が深まってからはこんな会話。
 毎日夕方家政婦を駅まで車で送っている作家は車の中でこう言う。
「君を送る時が一日で一番楽しい」
 すると家政婦
「あなたに送られて別れる時が一番悲しいわ」

 圧巻なのは、ある青年が女性にボードで告白するシーン。
 女性には夫がいて、夫と告白する青年は友人同士なのだが、彼女が負担にならない形でユーモアを交えて告白する。
『重荷に思わず、クリスマスだから聞き流してほしい』で始まるこの告白は映画史上5指に入る告白シーンだと思う。

 監督はリチャード・カーティス。
『ブリジット・ジョーンズの日記』『ノッティング・ヒルの恋人』などの脚本家でもある。
 この脚本作品を観ても、どんな作品かわかるだろう。

 クリスマスの夜、たくさんの幸せな愛に浸りたい方は、ぜひ、この作品をご覧下さい。

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レ・ミゼラブル~『民衆の歌』を高らかに歌え! 戦う者の歌が聞こえるか?

2021年06月02日 | 洋画
『レ・ミゼラブル』
 かつては『ああ無情』と翻訳されていたが、
『貧しき人々』『虐げられた人々』『悲惨な人々』と訳されるのが妥当だろう。

 さて19世紀のフランスで『虐げられた人々』はどう生きたか?

 主人公ジャン・バルジャンはお金を儲け、金持ちになり社会的な地位も得た。

 宿屋の主人でコゼットをこき使っていたティナルディエは強請、たかりで
 貧乏人はもちろん金持ちからカネをむしり取る。
 これもまた『虐げられた人々』のひとつの生き方だ。

 ジャン・バルジャンとティナルディエが信じているのは「お金」だ。
 バルジャンの場合は、これに
 ミリエル神父によって啓示された「神への愛」「信仰」「博愛」、
 コゼットによって呼び覚まされた「愛」が加わる。

 一方、ジャン・バルジャンの宿敵・ジャヴェール。
 彼が信じているのは「法」だ。
「法」によって「秩序」が保たれるのが絶対だと考えていて、
 そこには「人間愛」とか「人間の弱さ」とか「悲惨な社会状況」といった考察がない。

 そしてコゼットの恋人マリユス。
 彼は家から勘当されて貧乏生活を送っているが、ブルジョワ出身のインテリだ。
 悲惨な社会に憤っていて革命を夢想している。
 ブルジョワ出身のインテリが革命を夢想するのはめずらしいことではなくて、
 たとえばロベスピエールなど、フランス革命の指導者たちもそうだった。

 バルジャン、ティナルディエ、ジャヴェール、マリユス──見事な人物造詣ですね。
 その他にもコゼット、フォンテーヌ、ティナルディエの娘のエポニーヌなど魅力的な女性も登場する。
 こうした人物を配置しながら、作者ユゴーが描くのは──
「貧困」「お金」「法」「秩序」「神」「信仰」「親子愛」「男女の愛」「革命」「理想」など、
 さまざまなテーマだ。
 これらを描き切るユゴーの筆力は圧倒的で感嘆以外の何物でもない。
 原作で詳細に描かれた「ワーテルローの戦い」なども第一級の歴史資料だと思う。

 さて、ここで話を戻すと、
 ジャン・バルジャンはマリユスを知って「革命」という社会を変える手段を認知する。
 革命=民衆の連帯。
 それはこれまでバルジャンが信じてきた「お金」「信仰」「博愛」とは違う手段だ。
 バルジャンも悲惨で理不尽な社会を目にして何とか変えようと思ったが、「民衆の連帯」という発想はなかった。
 がく然とするバルジャン。

 そんなバルジャンの思いが描かれたのが、
 映画『レ・ミゼラブル』の『民衆の歌』のシーンだ。

 民衆を弾圧するために通り過ぎる軍隊。
 人々は『民衆の歌』を歌い始める。

 

 そんな人々を茫然と見ているジャン・バルジャン。

 

 映画『レ・ミゼラブル』の中でも圧巻の名シーンだ。

 それでは御覧下さい。

 映画『レ・ミゼラブル』民衆の歌(YouTube)

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パラサイト 半地下の家族~人間の深層心理に根ざしたもやもやとした何か

2021年04月17日 | 洋画
 米国アカデミー賞の外国語映画賞を受賞した韓国映画「パラサイト~半地下の家族」

 半地下の家族は、
 大学生を装って家庭教師になり、
 美大生を装って絵画教師になり、
 今までいた運転手を罠にはめて運転手になり、
 今までいた家政婦をクビにして家政婦になり、
 金持ちの家に入り込んで寄生(パラサイト)する。

 知らず知らずのうちに見知らぬ家族がパラサイトしてる。
 ううっ、怖い……。
 でもコメディタッチで描かれているから笑ってしまう部分もある。
 でもこの家族、心のうちに狂気を秘めている感じがするから、どこか怖い。
 コメディタッチだけど怖い。
 不思議な感覚の作品だ。
 …………………
 
 象徴的なのは「窓」である。

 金持ちの家には一面に広がる大きな窓がある。
 窓の外には、豊かな芝生と計算され尽して配置された木々──
 美しく造園された庭がある。

 一方、半地下の家族の住んでいる窓は隙間のようで小さい。
 窓から見えるのは、通行人の足、
 台に上がれば、酔っ払いがゲロしたり小便をしている姿が見える。
 大雨が降れば、水が窓から入って来て家がプールのようになる。

 見える風景がまったく違う金持ちと半地下の家族。
 その格差の中で、半地下の家族は次第に怒りと憎悪を募らせていく。

 そんな静かな緊張感の中、物語を大きく動かすのは──
「金持ちの家の地下に住むもうひとつの家族」だった。

 おおっ、怖い。
 地上→半地下→地下。
 という三重構造。

 韓国の富裕層は、北朝鮮のミサイル攻撃や税務署の税金徴収から逃れるために家に地下室を造っているらしい。
 だが作中の金持ち一家は前の所有者から家を買ったので、地下室の存在を知らない。
 自分の家に地下室があって、そこに人が住んでいることを知らない……!
 地下に住んでいる人間はときどき地上に出て来て食料を調達する。

 くううっ……これで恐怖は頂点に達する!

 この3者の関係がどのように崩れて、どんな結末を迎えるかはネタバレになるので書かないが、
 何だろう、この観た後のモヤモヤした感じは?
 テーマ=「格差社会」と断定してしまえばスッキリするのだが、それだけでは収まらない感じもある。
 地上→半地下→地下。
 ここには人間の深層心理に根ざした何かがある。

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イミテーション・ゲーム~エニグマを解読した天才数学者アラン・チューリングの物語

2021年04月08日 | 洋画
 第2次世界大戦におけるドイツの暗号機エニグマのをめぐる物語は面白い。
 映画『イミテーション・ゲーム』では、いよいよ天才アラン・チューリング(ベネディクト・カンバーバッチ)の登場だ。

 チューリングは実在の人物。
 彼は現在のコンピューターの前身である演算マシーンを使ってエニグマの暗号を瞬時に解こうとする。
 エニグマを解読できれば、ドイツ軍の作戦や部隊の動きを把握できてさまざまな対応が出来るのだ。
 そしてチューリングは試行錯誤の末、マシーン・ボンブを開発してエニグマの暗号解読に成功する。
 結果、後の評価に拠れば、ドイツの敗戦が2年早くなった。

 ここまでで言えば、チューリングは英雄であり、成功の生涯だったかに見える。
 しかし、多くの天才数学者がそうであるように、チューリングの生涯は悲惨であった。
 2つのことが彼の精神を蝕んだのだ。

 ひとつはエニグマ解読に成功したことを極秘にされたこと。
 英国軍とMI6は、ドイツとの戦争を有利に展開するために「エニグマ解読」を秘匿する。
 もし解読されていることが知られたら、ドイツはエニグマを使わなかったり、改良したりするからだ。
 英国軍はエニグマ解読の結果を大きな作戦で効果的に使おうとする。
 解読されていないことを知られないために、わざと味方の犠牲を出したりする。
 チューリングは悩む。
 エニグマ解読で敵の動きや作戦がわかっているのに味方が犠牲になってしまうことに罪悪感を抱く。

 チューリングの精神を蝕んだもうひとつのことは、彼がゲイであることだった。
 当時の英国ではゲイであることは法律で罰せられていた。
 チューリングは自分の秘密を隠す。
 一時、同僚の女性ジューン・クラーク(キーラ・ナイトレイ)に魅かれて婚約したりするが、結局は破談。
 やはりチューリングは男性しか愛せなかったのだ。
 そして孤独の中で荒んでいく。
 このあたりは映画『ボヘミアン・ラプソディ』で描かれたフレディ・マーキュリーに似ている。
 フレディ(ラミ・マレック)もメアリー・オースティン(ルーシー・ポイントン)に魅かれたが、結局はダメだった。

 ハードな人生だな……。
 チューリングは国家と社会的偏見・差別の被害者だった。
 天才ならではの鋭敏さもチューリングを追い込んでいった。
 結果、彼は自殺。
 ゲイを治すための薬物治療(←そんなものがあるのか?)もされたらしい。

 唯一の救いは、エニグマ解読で終戦が2年早まったという後の評価。
 そして彼の恋したジューンの存在。
 自分がゲイであることを告白したチューリングをジューンは受け入れ、こう言う。
「わたしは普通の結婚なんて望まないって言ったでしょう? わたしはあなたと結婚したいのよ!」
 こんなことも言っていた。
「あなたが普通でないから世界は素晴らしい!」
 しかし、チューリングはこんなジューンも拒む。
『ボヘミアン・ラプソディ』のメアリーもそうだが、やはり女性は強いね。

 余談だが、
 トップシークレットであるチューリングと彼のチームのことが公になったのは21世紀になってから。
 英国はエニグマ解読を第2次世界大戦後も秘匿し、エニグマを暗号機としてインドなどの第三世界に提供していたらしい。
 そうすれば相手の情報はすべて筒抜けになるからだ。

 やはりエニグマをめぐるドラマは闇が深く、枚挙に暇がない。

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映画音楽で映画を語ろう!~「マンマ・ミーア!」 踊れば、あなたはいつくになっても17歳、ダンシングクィーンなのだ!

2020年08月14日 | 洋画
 僕が通っているスポーツジムのW先生はダンスのレッスンの終わりにこの曲をかける。
 僕たちはこの曲を踊る!

 ABA 「Dancing Queen」

♪ You are the Dancing Queen.
 young and sweet, only seventeen.

 あなたはダンシングクィーン!
 若くて可愛くて、まだ17歳!

 You can dance. You can jive.
 having the time of your life.

 踊って、スウイングして
 人生を楽しもう!

 See that girl. Watch that scene.
 digging the Dancing Queen.

 あの子を見ろよ、踊ってる姿を見ろよ
 彼女はダンシングクィーンだ!   ♪
 ………

 いいですよね、このメッセージ。
 年配の女性が集まるダンスのレッスンで、この曲を使用するW先生のセンスが素晴らしい。
 なので、W先生のダンスのレッスンは僕を含めて、みんな笑顔になる!

 さて、この曲を使ったミュージカル映画がある。

 映画『マンマ・ミーア!』

 

 中年女性のメリル・ストリーブ、ジュリー・ウォルターズ、クリスティン・バランスキーが「ダンシング・クィーン」を歌い踊るシーンは圧巻。

 すっかりおばさんモードになってしまったドナ(メリル・ストリーブ)に友人たちが挑発するのだ。
「何言ってるのよ、わたしたちはまだ若いのよ!」
「躍って、恋をして人生を楽しみましょう!」
「あなたはダンシングクィーンなのよ!」
 これに触発されて、ベッドの上で飛び跳ねてはしゃぎ、踊り出すドナ。

 これをイタいと言うなかれ。
 いや、他人の目なんか気にするのはつまらない。
 人生は楽しんだもの勝ちなのだ。

 こんなメッセージが伝わってくる。

 僕は「マンマ・ミーア!」のこのシーンを見るたびに前向きに生きる元気をもらっています。

 それでは聴いて下さい!

 Mamma Mia! (2008) - Dancing Queen (YouTube)

 歌詞を知りたい方はこちら
 Dancing Queen【訳詞付】- ABBA (YouTube)
 
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ポール・ニューマンは素晴らしい!~風格・愛嬌・笑顔・凄み・シャイが混在する見事な演技!(動画あり)

2020年07月29日 | 洋画
 ポール・ニューマンをトリビュートした動画を見つけました!

 ポール・ニューマンって、目がセクシーなんですよね。
 目尻が下がってて、眼光鋭い演技をしていても、どこか愛嬌ややさしさがある。

 

 目にやさしさがあるから笑顔も素晴らしい!
 ニヤリと笑っても

 

 爆笑しても

 

 絵になる!

 

 動画では、ポール・ニューマンの目の演技を散りばめ、ニヤリ笑い→微笑み→爆笑と展開している。
 この動画の作成者さん、わかってるなあ。

 上の4つの画像は映画「スティング」のポール・ニューマン。
 こんな葉巻の似合う役者さんはいない。
 ポール・ニューマンが演じた詐欺師ヘンリー・ゴンドーフは僕の記憶に残る『カッコいい男』のひとりです。

 それではポール・ニューマンの演技をご堪能下さい!

 Paul Newman: Raindrops keep fallin' on my head.(YouTube)

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