桃井章の待ち待ち日記

店に訪れる珍客、賓客、酔客…の人物描写を
桃井章の身辺雑記と共にアップします。

2013・8・1

2013年08月02日 | Weblog
もうここまで来ると救急車を呼んで文句を言われたい程ひどくなった俺の眠たい病。確かに今日だって疲れていた。午前中に洗濯その他家事をすますと、ちょっとしたトラブルが発生したイベント関係者との電話とメールのやりとり、介護保険に関することで港区役所への問い合わせと書類の作成などをこなしつつ、この日記を書いて、個人的な用事を済ませてから母の病院に向ったのだけど、バスを乗り換えていく途中、バスの中は勿論、品川駅前のバス停のベンチで待っている間に眠ってしまった程だ。でも、それだけならまだいい。六時に開店してお客さんが来るまでの間、俺はカウンターで先日送られてきた雑誌「映画芸術」最新号を読んでいる内に不覚にも眠ってしまっていて‥‥いや、こう書くといかにも雑誌がつまらなかったみたいな印象を与えるけと、決してそんなことはなく、それどころか現在公開中のポルトガル映画「熱波」の監督であるミゲル・ゴメスのインタビューや九月に公開される「共食い」(田中慎弥原作・荒井晴彦脚本・青山真治監督)の特集など俺にとっては興味あることが一杯掲載されているにも関わらず、眠り病は俺を夢に誘っていたのだ。どの位眠っていたのか分からない。気づいたら席を二つ挟んで30代半ばの見知らぬ女性が座っていた。「あ、すいません」「いえ、こちらこそ。起こしてしまったみたいで」「いえ、なにしましょう?」(カウンターに入っておしぼりを差し出す俺に)「あ、大丈夫です。寝ててください。お店の人が戻って来るのを待ってますから」どうやら俺を客だと間違えているみたいだ。そりゃそうだ。カウンターで居眠りしているのは酔客と決まっている。「すいません。僕がその店の人間でして」「そうだったんですか‥‥だったらジンライムを」「畏まりました」とジンライムを作りだす。「どの位ですか」「は?」「うたた寝している俺の傍で待っていた時間‥‥」「ホンの二三分ですよ」と彼女は答える。二三分‥‥考え方によっては短いけと、考えようによっては長い時間だ。その間、彼女はじっと店の人間が現れるのを待っていた。その店の人間であるマスターは隣で舟をこいでいると云うのに‥‥滑稽だけどちょっとしたシュールな画像だ。「実は俺、睡眠時無呼吸症候群と云う病気でして‥‥」と言い訳からはじまり、次のお客さんである小劇場マニアのSさんが来店してくれるまでの一時間ちょっと、初めてあった素敵な女性と妙なワクワク感でお喋りしていられるなんて、救急車を呼びたくなる程重症だけど、俺の眠り病も役に立つことがある。それにしてもこうして毎日のように新しく女性と知り合えるなんてやっぱりコレドっていい店だと実感。でも、これも後三か月余の命。他にお客さんはキャスティングプロデューサーのUさんとOさん、それに遅い時間に近所に住むシルバーモデルのMさんの五人だけ。12時に閉店。ポルトガル語のテープ聞きながら電車で帰宅。当然眠っていて、五反田駅に着いた時にはよだれまで垂らしている。その途端、ああっと思わず声をあげそうになる。俺は彼女が隣で「店の人」を待っている間によだれを垂らしていたのではないか?だとしたら最悪。