若い頃に読んだ清岡卓行さんの詩に『煙草を吸わなかった頃の空の青さが恋しくなり、ある日ふと煙草をやめる』という一節があって、何十年もそのフレーズを覚えているのは、詩的な人生を送ってない俺が煙草をやめる時ぐらいはせめて詩的に終わりたいと言う願望だったに違いなく、その時までニコチンタール共最高に強力なショートピースを1日40本以上は吸っていた俺が、そして死んだ時は棺桶の中には花の代わりにショートピースで埋め尽くして欲しいと言っていた俺が、『ある日ふと煙草をやめ』てから今日で6日目になるのは、その願望の実現ということか?18歳で煙草を吸い始めて以来、煙草を買う金がなかったら道に落ちているシケモクを拾ってでも吸っていた俺の体からニコチンが抜けていく。また『ある日ふと煙草が吸いたくなる』だろうから禁煙宣言はしない。でも、一つ分かったことがある。『空の青さ』は子供の時に見たということ。俺はどんどん子供になっていく。