緩和ケア医の日々所感

日常の中でがんや疾病を生きることを考えていきたいなあと思っています

パラリンピックから貰う励ましと臨時設立医療病床に思うこと

2021年08月29日 | 社会時事
パラリンピックがTVを賑わしています。
車椅子バスケや車椅子ラグビーは初めて観戦しました。
そして、ルールも少しわかるようになりました。

(写真は、pasja1000によるPixabayからの画像

多様な障害がある中で、どうやって、ある程度公平な試合を展開させていくのだろうか・・と思っていました。

障害や機能の分類や男女といった別を数値化し、総和の上限を決めることで公平に競うことができるといったことは、目から鱗が落ちる思いでした。

多様性を尊重した公平な場作りという課題について、新しい目線を得る機会があったこと、本当に、ありがたく、一層の興味を持ってTVの中の試合を観戦しています。



さらに、選手一人一人の様子に、ここまでの物語を感じます。

それは、指が何本とか足がどのような状態かといったことではありません。
プレーする姿に、その瞬間のプレーだけではなく、過去の時間や道のりが何か見えてくるような気持ちになるのです。

例えば・・
気管切開の痕がある選手・・
生命の危機的な状況を乗り越えて今があり、そこから加えて、ここまでの機能を獲得するまでにどれほどの努力があったのだろう・・、涙だって汗だってどれほど流してきたのだろう・・と走馬灯のような感覚を覚えるのです。

そしてそう思うと、応援に力が入り、さらに、自分が悩んでいたことなんて本当にちっぽけだなあという気持ちになり、もっとやりようがあるよといつの間にか励まされている自分に気づくのです。



そんなパラと新型コロナのことでリンクしているトピックスを一つ。

日本財団は長く、私が携わっている緩和ケアも応援してくれていて、研究費や人材育成、さらに大会長を務めた2017年の日本緩和医療学術大会では、同時通訳ブースの設置のサポートをしていただくなど、本当にありがたい支援を継続して頂いて気ました。

その日本財団は、2020年5月新型コロナウイルスの感染拡大により、以前から設立し支援してきたパラアリーナに宿泊療養施設を作りました。

パーテーションで区切られた宿泊型療養施設100床


さらに、140室の設置を都や厚労省と話し合いながら進めたそうです。
日本財団HPより)


そして、2020年9月から東京都に引き渡され運用開始となったそうですが、
2021年4月からパラアリーナに戻すこと決定したそうです。
日本財団2021年2月記事



その閉所の理由は・・

パーテーションで区切ったベッド100床を整備し、宿泊療養施設として都に貸し出したが、都は「個室」とする厚生労働省のマニュアルに沿っていないことを理由に未使用のまま返還。今年4月から、再びパラ競技団体の練習施設などとして開放されていた。 



そして、使われることなく返還されたそこに、再度、臨時医療施設を開所することになったようです。


新型コロナウイルスの感染拡大で医療提供体制が逼迫(ひっぱく)する東京都が、東京パラリンピックに向け整備されたパラスポーツ専用体育館「日本財団パラアリーナ」(品川区)を臨時医療施設に転用するため、日本財団と調整に入る方向で検討していることが26日、分かった。都議会自民党の要望に応じたもの。100床程度を確保し、入院先が見つからない搬送困難な患者らの受け入れを想定している。パラ大会終了後の来月中旬ごろの運用開始を目指す。
 

なんとも、ちぐはぐさを感じてしまうのは、私だけでしょうか。


資金も相当かかったことでしょう。
支援したいという気持ちやエネルギーが、きちんと機能するように連携し、マネジメントするのは行政の役目です。

そして、このハードが得られれば、次は、医療スタッフ集めでしょう。
この点においても、理不尽な働きかけ(協力しないと医療機関名を公表するといった(?))ではなく、誰かの役に立ちたいという純粋な気持ちが活かされるような行政であってほしいと思います。



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6 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (knsw0805)
2021-08-29 19:57:43
こんばんは、ご訪問ありがとうございます。ブログが勉強になります。私は軽井沢周辺を「光と影と緑」をテーマに撮影投稿しています。フォローボタン、いいねボタン押させて頂きました。今後ともよろしくお願いします。
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Unknown (e3693)
2021-08-29 21:28:43
@knsw0805 knsw0805さん

こちらこそ、ここにお立ちより下さり、ありがとうございます。
パラリンピックのタグでつながったことに、感謝です。
素敵な写真、楽しみです!
こちらこそ、よろしくお願いいたします。

aruga
返信する
Unknown (夢子)
2021-08-29 22:01:20
いつも貴重な医療や社会時事の情報をありがとうございます。
有難く楽しみに拝見しています。
私も車椅子ラグビーを初めて観戦しました。
障害の度合いが夫々違う選手がチームを組んでいるんですね。
女性もいることにビックリしました。
選手一人一人に人生の壮絶なドラマがあり、深い苦悩を乗り越え努力の結果が今この試合なのかと…魂を揺さ振られます。
生命の危機を乗り越えた心身の強さ、涙も枯れるほどに人の何百倍も流したことでしょうね。
銅メダルを勝ち取り、心からの賞賛を届けたいです。

臨時医療施設の開所はうれしいニュースですね。
日本財団のご支援に感謝します。
搬送困難な患者の受け入れが増えることは、非常に有難いことです。
野戦病院をどんどん増やして窮地を脱してほしいと願います。
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Unknown (e3693)
2021-08-30 05:40:44
夢子さん

温かなコメント、ありがとうございます。
パラリンピック、同じ目線で観戦くださっていることを知り、益々嬉しくなってきました。

臨時療養施設、作った後で個室ではないから使ってもらえないなどということがないよう、善意が活かせるよう都も国も提供者も話し合いながら進めてほしいと感じています。

aruga
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Unknown (makako12521726)
2021-08-30 21:42:48
こんなに頑張ってる選手の方々を見ると、
オリパラへの賛否とは全く別のところで
感動します。

色んなことが起き過ぎるていて、考えることも嫌になる時がありますが、みんな、みんな、それぞれの持ち場で、目の前のことをどうにかしようと頑張ってる!そういうのを見て、また、自分を奮い立たせる毎日です😄
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Unknown (e3693)
2021-08-31 20:07:31
@makako12521726 makako12521726さん

本当に、その通りですね!
難しいことも沢山あるけれど、何とか頑張れているという感じでしょうか。
そういう気持ちを書き込んでくださっているmakako12521726さんのコメントを見て、また、励まされる人がいて。
励まされている人も励ましてくださっている・・愛おしい今だなあって思います。

aruga
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