緩和ケア医の日々所感

日常の中でがんや疾病を生きることを考えていきたいなあと思っています

私達はバランスのグラディエーションの中にある

2019年02月11日 | 社会時事

昨日は、「がんになる前にしっておくこと」の
トークショーに登壇させて頂きました。

寒かったのですが、天気が回復し、
84席 満席!
でした。

消防法上立ち見ができないそうで、
御帰りになられた方もいらっしゃったとのこと。
ちょっと、切なかったです。。




トークショーの前に
打ち合わせをしていたときのこと。

三宅さんが、撮影のカメラを回しながら
気づいたこととして
お話しくださったことがありました。


「健康って、バランスなんですね。
 100%健康とか、不健康ではなくて。」


そうなんです。
その通り!
私は膝を叩かんばかりでした。







WHOは健康とは、単に疾病の罹患とか衰弱などではなく、
身体的、精神的、社会的にも、よい状態であること
といっています。

だから、がんになったら、健康ではない。。のではなく、
「がんになっても、心や取り巻く環境が落ち着いていることで
健康なのです。」
心までがんに占められている・・のではありませんから。






私達が映画の中では伝えきることができなかったことを
冊子にして、昨日は150冊準備してくださっていました。

トークショーが終わって、
84人の観客の方が70冊買ってくださったとのこと。
本当に、本当に、ありがたいことです。




いつも、三宅さんはフェイスブックに記事をアップしてくださいます。
昨日の記事から、

「痛み」ということについて有賀先生に医療用麻薬を例に紐解いて頂きました。例えばカラカラに乾いた地面の状態が痛みの状態で、医療用麻薬はホースで地面に水をまいてうるおいを与えるようなもの、そしてまきすぎて水浸しになった状態が依存状態で、乾きすぎず、水浸しになりすぎず、バランスを保つ状態が緩和医療と言えるようです。そして痛みを我慢しすぎると、カラカラに乾いた状態が続き脳が異常状態になるので、我慢せずに早い段階で痛みを医師に伝えていくことが大切なのだそうです。痛みをとることそのものがゴールではなく、その先に快適に日常生活を送る、QOLを大事にするという目的があります。
撮影中やトークの中でこの話を聞いて気づいたことなのですが、「健康」という「もの」は存在しない、100%健康という状態は存在しない、わたしたちはある意味、バランスのグラデーションの中にあるのにすぎないということです。例えば70%,80%健康であれば、特に不快や痛みを感じずに仕事や日常生活が送れ、20%、30%の状態であれば治療を必要とする病期の状態ということになります。そしてがんだから20%,30%の状態ではなくて、がんであっても70%,80%を状態を目指していくための手段のひとつが緩和医療・支持療法であり、クオリティー・オブ・ライフを最優先に治療と向き合うというのはそういうことなのだと納得しました。

ちなみに、この中の、水撒きとは、
ドパミンの投射のことを指します。




「私達は、バランスのグラデーションの中にある・・」

何て、素敵な、的を得た表現なのでしょう。

いつも、私は同じように話しているのですが、
三宅さんのフィルターを通したこの言葉に、
改めて、学ぶ思いでした。

映像や音をとり、物語を作る専門家ならではの言葉だなあと思いました。






さらに、このK'sシネマさん。
沢山のこれからの上映予定の
パンフレットやポスターが掲示されていたのですが、
ありきたりではなく、
ウケや売り上げでもなく、
とても、ポリシーを感じたシネマでした。



で、やっぱり・・と思ったのが、
無名の俳優で作られたにも関わらず、
一大ムーブメントに至った
「カメラを止めるな!」を
最初に上映した映画館でした。

そのような所で上映された映画に関わることができたことを
とても光栄に感じています。






また、さらに嬉しかったのが、
このブログを見て、
映画を見に来てくださった方が
何人もいらっしゃったこと。

こうして、一方通行のように毎週書いているのですが、
どこかで読んでくださっている方がいるということ、
言葉にならないほど、心が温かになります。

ここにお訪ね下さり、皆様、本当にありがとうございます!


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