プロメテウスの政治経済コラム

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北朝鮮核実験  どう出る米オバマ政権  定まらない対北朝鮮政策

2009-05-25 19:23:04 | 政治経済
オバマ政権発足から4ヶ月。確たる対北朝鮮政策をもたないまま模索を続けている間に、北朝鮮の挑発行為は、エスカレートする一方である。
北朝鮮は25日、地下核実験を成功裏に実施したと発表した。核爆発力とコントロールを新たな段階まで強めたという。気象庁によると、25日午前9時54分40秒ごろ、北朝鮮北東部を震源とする地震波を観測した。震源地は北緯41度、東経129度で、規模を示すマグニチュードは5・3と推計している。地震波が発生したのは、北朝鮮が前回核実験を行った2006年10月と、ほぼ同じ場所と見られるという(「読売」5月25日13時20分)。
また、韓国の聯合ニュースによると、消息筋の情報として25日、北朝鮮が咸鏡北道(ハムギョンプクド)花台郡(ファデグン)舞水端里(ムスダンリ)から短距離ミサイル1発を発射したと報じた。報道によると、発射されたのは射程130キロの地対空ミサイル。消息筋は「韓米情報当局が情報を分析中」と語った(「毎日」5月25日14時15分)。
北朝鮮は4月のロケット発射に対する国連安全保障理事会の制裁を謝罪しなければ、核開発を再開、核実験を強行すると脅しをかけていた。誰も本気で相手にしないものだから、苛立ちを強めている。

「米国がアフガニスタンやパキスタンに集中していることに、北朝鮮は苛立っている。オバマ大統領が6カ国協議の“共同声明”を履行すると宣言すれば、北朝鮮の核問題は解決するであろう」――18日、クリントン米元大統領とソウル市内で会談したときの金大中(キム・デジュン)韓国元大統領の言葉である(「しんぶん赤旗」2009年5月25日)。
2005年9月に6カ国協議で採択された共同声明は、北朝鮮が核兵器と既存の核計画を放棄するとともに、米国が朝鮮半島に核兵器を有せず、北朝鮮への攻撃・侵略の意思のないことを確認するというものであった。北朝鮮は、韓国・日本に駐留する米軍がいつ力で金正日体制を転覆しに来るかと常に恐れている。そのため、朝鮮戦争を正式に終結させ、米朝間が国交正常化することを何よりも望んでいる(戦後賠償をさせるために日朝間の国交正常化も望んでいるが、カネ以外になんの興味ももたないだろう)。しかし、誇り高い彼らは、決して頭を下げない。6カ国協議が膠着しているのは、言ったとおりに実行しない米国以下5カ国の責任だと思っている。だから、国際世論がいくら自制を求めても、ロケットは発射するわ、安保理が議長声明を採択すると「6カ国協議に二度と絶対に参加しない」などという。そして今回、とうとう2回目の核実験に踏み切った。

北朝鮮の政府機関紙「民主朝鮮」は17日、「米政権は『変化』と『聞き取り協調外交』を標榜しながら、ブッシュ前政権の敵対政策をそのまま踏襲している」、「力でわが国を屈服させようとする米国の野心は少しも変わっていない」とオバマ政権を批判する論評を掲載した。金大中(キム・デジュン)元大統領が言うとおり、北朝鮮は苛立っているのだ。
韓国「毎日経済」紙13日付は、「米国の朝鮮半島専門家は、強硬論から交渉論まで百家争鳴状態」「オバマ政権は、いまだに対北朝鮮政策の方向を明確に設定しないような態度を見せており、論争が増幅されている」という(「しんぶん赤旗」同上)。
米政府は5月7日~12日、ボズワース北朝鮮政策担当特別代表を中国、日本、韓国に派遣したが、「対話と交渉だけが、現在の問題を解決する唯一の適切な方法。米国は6カ国協議の枠内で、北朝鮮と直接対話を行う用意がある」というだけであった。米政権との直接対話が6カ国協議再開の条件とする北朝鮮は、一貫して強気の姿勢を崩さない。

米国のオバマ大統領は25日、北朝鮮による核実験実施と短距離ミサイル発射について「国際法違反だ」と非難する声明を発表しているので、今後、国連安保理による対北制裁は一段と強化されるであろう。安保理常任理事国である中国も今度は拒否権を発動しないだろう。
それにしても、製造能力や配備能力が完全ではないとみられている北朝鮮の核兵器開発がなぜすすむのか。北朝鮮が核兵器の技術をどの程度高めたか、今回の核実験の結果は、向こう数日間で明らかにされるだろう。北朝鮮の挑発行為は腹に据えかねるが、北朝鮮の核兵器が現実的に世界の脅威となるのは何年も先というのが、専門家の見方である。いま私たちに必要なことは、北朝鮮の行動に対しは冷静な対応が必要で、特定の政治目的をもった一部勢力に煽られて過剰な反応に陥らないことである。乱暴な言い方だが、金正日体制をたたきつぶすのが一番早いのだがそれができないのなら、辛抱強く付き合う他ない。



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