プロメテウスの政治経済コラム

プロメテウスは人間存在について深く洞察し、最高神ゼウスに逆らってまで人間に生きる知恵と技能を授けました。

平壌へ担当者派遣   日本側としての「解決とはなにか」を明確にすること

2014-10-20 19:31:37 | 政治経済

菅義偉官房長官は20日午後の記者会見で、北朝鮮による拉致被害者らの再調査の現状を把握するため、訪朝団を派遣すると発表した。担当者を北朝鮮に派遣する政府方針に対し被害者の家族会は16日、「拉致被害者に関する報告を聞ける段階まで待つべきだ」と政府に申し入れている。文書は、支援組織「救う会」などとの連名で、北朝鮮に期限を切って調査結果を出すよう求めることも要望。対応がない場合、「制裁をかけ直し、協議を白紙化するという断固たる措置を通告すべき」とした。田口八重子さん(59)=拉致当時(22)=の兄で家族会代表の飯塚繁雄さん(76)は「(拉致被害者について)発表する内容がなければ、平壌に行く必要はない」と話し、慎重な対応を求めた。

 

これまで政治家は、家族会と同じレベルで、支援組織「救う会」や「拉致議連」を中心に共和国を一方的に「悪の枢軸」として「圧力」を加える米国の戦略に乗るだけであった。北朝鮮はけしからんというばかりでは、両国間に横たわる歴史を背景とする問題の真相を覆い隠し、日本国民は憎悪と不信に巻き込まれ、対話の道は閉ざされるだけである。「日本は過去に何万人と朝鮮人を拉致したんだから、20人やそこら拉致して何の問題があるんだ」と共和国側は思っているかも知れない。勿論、相殺はあり得ない。過去は過去、拉致は拉致であり、個別に問いたださねばならない。しかし、朝鮮半島を植民地支配した負の歴史、敗戦があり、東西冷戦の最前線としての南北の分断があり、日朝両国の不幸な敵対関係の中で拉致が引き起こされたというのも厳然たる歴史的事実である。早くに国交正常化がなされ、日朝関係がいいものであったなら、拉致事件そのものが起きなかったといえるだろう。

 

「すべての拉致被害者を取り戻す」――家族会のスローガンとしては理解できるが、再調査の対象は政府認定の拉致被害者のほか、行方不明者、残留日本人・日本人配偶者、日本人遺骨などが含まれる。すべての被害者とは誰のことを指すのか。行方不明者には、警察庁が拉致の疑いが排除できないとする860人全員が含まれるのか。そもそも取り戻すとはどういうことなのか。

誰だって、死んでいることを前提にはしたくはない。しかし、タブーにしていいのか。タブーとなった結果、死亡なんて報告は許さないという風潮が日本国内にある。死亡報告は、すべてウソだとなると、共和国は出す情報も出せなくなる。真実は隠され、あるいは捏造されるかもしれない。

 

生存していれば日本に戻す。亡くなっていると言ってきたら、証拠を求め検証する。真相を明らかにし、生存、死亡にかかわらず拉致被害に対する国家責任を明確にする。解決とは何かをあらかじめ定義し、相手と合意し、それを国民に示し、「解決」のゴールについて相互理解を得る。「解決とはなにか」を明確にしないまま、向こうは死亡したと言い、こちらはウソをつくなと言い、互いの主張をぶつかり合わせるだけでは、何時まで経ってもゴールは見えない。

勿論、われわれのゴールは、「北朝鮮側とともに、日朝平壌宣言にのっとって、不幸な過去を清算し、懸案事項を解決し、日朝間の信頼を醸成し関係改善を果たし、国交正常化を実現する」ことである。


最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。