昨年（2005年）4月25日午前9時18分――。多くの人々の人生が断ち切られ、あるいは暗転しました。死者107人、負傷者555人にのぼる史上最悪の鉄道事故となった兵庫県尼崎市のＪＲ西日本福知山線脱線事故から一年が経ちました。 兵庫県の調査では、負傷者の４４％に強い心的外傷後ストレス障害（ＰＴＳＤ）の症状が出るなど、後遺症に苦しむ人も少なくありません。「稼ぐ」第一、「安全」第二のＪＲ西日本の体質は、どう変わったのか。
半径三百メートルの急カーブに制限速度を30キロも上回る時速100キロで進入したことによる転倒脱線―事故の直接の原因は、運転士の無謀な運転にあったとされます。しかし、それにとどまらぬ背景や要因が次々明らかになりました。 ▽余裕のない運行ダイヤや定時運行の強要▽速度を監視し、異常なスピードの列車を減速させるＡＴＳ（自動列車停止装置）の未設置▽懲罰的な日勤教育など運転士のあせりを生む人的・組織的要因▽車体そのものの軽量化による列車の強度不足―などなど。
福知山線は昨年10月に、東海道線などは3月にダイヤ改正がありました。福知山線の宝塚～尼崎間は1分5秒長くなり、最高スピードも120キロから95キロに落としました。東海道線の新快速は、大阪駅～京都駅を27分（昼間）で走っていたのを28分に1分長くしました。大阪駅の停車時間も60秒から105秒にのびました。現役運転士は多少の「余裕」がでたが、最低もう1分の余裕がほしいと語っています（「赤旗日曜版」06.4.23号）。
福知山線の事故現場などには速度チェック機能を付加したATS－SWを設置しました。事故が起きたときには、カーブにATSを設置しておらず、制限速度70キロのところを、運転士が100キロを越すスピードで走り、脱線しました。事故後、JR西はカーブの制限速度を60キロに落としました。しかし、事故現場のカーブから340メートル手前に、最高速度が110キロのATSがあることが明らかになりました。運転士からは、「95キロしか出すなといっているのに、なぜ110キロか？また、スピードアップするのではないか」と疑問の声があがっています。
分割・民営化以降、JR西は運転士らに「命令と服従」「上位下達」の労務管理を強いてきました。運手席の後ろから管理職が監視し、懲罰的な日勤教育を受けさせ、乗務停止処分もしばしばおこなわれました。いまは、日勤教育のマニュアルがつくられ、1～3日で終るようになりました。
「企業理念」に初めて「安全第一」をかかげ「安全憲章」に福知山線事故を「決して忘れず」と書き込みました。
ＪＲ西日本は変わったのか。ＪＲ西は事故後の「安全性向上計画」で、企業の「風土・価値観の変革」をいっています。しかし、国労西日本がおこなった社員アンケート調査では、「計画策定後職場は実際に変わったか」という問いに、七割以上が「まったく変わらない」と答えています。
典型例が今年1月、鳥取県江府町のＪＲ伯備線で起きた事故です。昨年7月、「安全性向上計画」の一環として行われた本社役員との緊急ミーティングで、施設労働者が「伯備線は曲線区間が多い。ヒューマンエラーを100％なくすのは困難。ハード面でカバーを」と提起しました。本社側は「お金の制約は当然あるが、列車接近警報装置は検討すべきだ」と回答しました。
しかしＪＲ西は列車接近警報装置をつけませんでした。米子支社長は事故後、『人間はミスをするもの』ということを基本にしたことはなかった」と堂々と発言。「ヒューマンエラーはおこりうる」という認識を自ら徹底するとした「安全性向上計画」の中心ポイントがおざなりになっていたことが明らかになりました。
ＪＲ西が人員削減計画を撤回していないことも問題です。ＪＲ発足時、五万一千人が０４年度には三万人台へ。さらに０９年度までに五千人減らす計画です。「安全は人」。現場には利益第一主義に戻るのではないかという不信感が根強くあります。
いま、規制緩和万能の小泉「改革」の矛盾と破たんが、社会のあらゆる分野で噴き出しています。ＪＲ各社で事故やトラブルがあとをたたず、航空業界でも重大なミスが相次いでいます。ルールなき市場競争のなかで「安全より効率」がまかり通っていることが、大きな問題です。
大量交通機関の安全の確保のために、安全規制、監視・監督を強めることは公共（国）の責任です。国民の命と安全を守るためにあらゆる手立てをつくす、まともな政治をつくることこそが、犠牲者の無念に報いるいちばんの道ではないでしょうか。
半径三百メートルの急カーブに制限速度を30キロも上回る時速100キロで進入したことによる転倒脱線―事故の直接の原因は、運転士の無謀な運転にあったとされます。しかし、それにとどまらぬ背景や要因が次々明らかになりました。 ▽余裕のない運行ダイヤや定時運行の強要▽速度を監視し、異常なスピードの列車を減速させるＡＴＳ（自動列車停止装置）の未設置▽懲罰的な日勤教育など運転士のあせりを生む人的・組織的要因▽車体そのものの軽量化による列車の強度不足―などなど。
福知山線は昨年10月に、東海道線などは3月にダイヤ改正がありました。福知山線の宝塚～尼崎間は1分5秒長くなり、最高スピードも120キロから95キロに落としました。東海道線の新快速は、大阪駅～京都駅を27分（昼間）で走っていたのを28分に1分長くしました。大阪駅の停車時間も60秒から105秒にのびました。現役運転士は多少の「余裕」がでたが、最低もう1分の余裕がほしいと語っています（「赤旗日曜版」06.4.23号）。
福知山線の事故現場などには速度チェック機能を付加したATS－SWを設置しました。事故が起きたときには、カーブにATSを設置しておらず、制限速度70キロのところを、運転士が100キロを越すスピードで走り、脱線しました。事故後、JR西はカーブの制限速度を60キロに落としました。しかし、事故現場のカーブから340メートル手前に、最高速度が110キロのATSがあることが明らかになりました。運転士からは、「95キロしか出すなといっているのに、なぜ110キロか？また、スピードアップするのではないか」と疑問の声があがっています。
分割・民営化以降、JR西は運転士らに「命令と服従」「上位下達」の労務管理を強いてきました。運手席の後ろから管理職が監視し、懲罰的な日勤教育を受けさせ、乗務停止処分もしばしばおこなわれました。いまは、日勤教育のマニュアルがつくられ、1～3日で終るようになりました。
「企業理念」に初めて「安全第一」をかかげ「安全憲章」に福知山線事故を「決して忘れず」と書き込みました。
ＪＲ西日本は変わったのか。ＪＲ西は事故後の「安全性向上計画」で、企業の「風土・価値観の変革」をいっています。しかし、国労西日本がおこなった社員アンケート調査では、「計画策定後職場は実際に変わったか」という問いに、七割以上が「まったく変わらない」と答えています。
典型例が今年1月、鳥取県江府町のＪＲ伯備線で起きた事故です。昨年7月、「安全性向上計画」の一環として行われた本社役員との緊急ミーティングで、施設労働者が「伯備線は曲線区間が多い。ヒューマンエラーを100％なくすのは困難。ハード面でカバーを」と提起しました。本社側は「お金の制約は当然あるが、列車接近警報装置は検討すべきだ」と回答しました。
しかしＪＲ西は列車接近警報装置をつけませんでした。米子支社長は事故後、『人間はミスをするもの』ということを基本にしたことはなかった」と堂々と発言。「ヒューマンエラーはおこりうる」という認識を自ら徹底するとした「安全性向上計画」の中心ポイントがおざなりになっていたことが明らかになりました。
ＪＲ西が人員削減計画を撤回していないことも問題です。ＪＲ発足時、五万一千人が０４年度には三万人台へ。さらに０９年度までに五千人減らす計画です。「安全は人」。現場には利益第一主義に戻るのではないかという不信感が根強くあります。
いま、規制緩和万能の小泉「改革」の矛盾と破たんが、社会のあらゆる分野で噴き出しています。ＪＲ各社で事故やトラブルがあとをたたず、航空業界でも重大なミスが相次いでいます。ルールなき市場競争のなかで「安全より効率」がまかり通っていることが、大きな問題です。
大量交通機関の安全の確保のために、安全規制、監視・監督を強めることは公共（国）の責任です。国民の命と安全を守るためにあらゆる手立てをつくす、まともな政治をつくることこそが、犠牲者の無念に報いるいちばんの道ではないでしょうか。
