プロメテウスの政治経済コラム

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「集団的自衛権」――閣議決定はこれから始まろうとする本格的なせめぎ合いの第一歩にすぎない――

2014-07-10 20:48:29 | 政治経済

奇妙奇天烈な論理が罷り通っている。「国連憲章など国際法では集団的自衛権だが日本国憲法のもとでは自衛の措置」(安倍首相)、「個別的自衛権に匹敵する集団的自衛権」(公明党・山口代表)・・・??

憲法9条の下で「許されない」と「許される」は、相互に両立しない2律背反である。これを無理に解釈で変更しようとするから、訳の分からない言葉の遊びとなる。この矛盾を解消するためには、憲法9条を自民党改憲草案のように改定するほかない。他国のための戦争に参加する集団的自衛権が、戦力不保持と交戦権否認を明記した憲法第9条と両立しないのは明らかである。

 

何故、こんな無茶苦茶なことになるのか。現下の情勢では明文改憲は実現不可能である。しかし、既存の政府解釈はすでに限界まで来ており、それをすり抜けるような解釈改憲では、自衛隊を米軍と一緒に行動する、海外で一緒に戦争する軍隊にすることができない。「自衛隊は派遣しても派兵はしません」、「集団的自衛権は認められません」、「武力行使と一体化した活動は認めません」ではアメリカの要求に応えられない。これまで政府がつくってきた解釈をちゃぶ台返しのように、ひっくり返してしまなければならない。これをやることができるのは、ならず者、独裁者である安倍晋三をおいてほかにない。安倍首相は物事を論理的に考えることのできない呆れるばかりの自己陶酔型人物である。取り巻き連中から「いいね」と言われて高揚し自信を深め、さらに発言を先鋭化させてまた支持される循環に自己陶酔する。アメリカは、安倍首相が中国や韓国と摩擦を起こすのは気に食わないが、米軍の手足となる自衛隊をつくったり、TPPでも辺野古移転の強行でもこれらをやってのける安倍を支えざるを得ない。また、公明党の今回の変節は、6月2日、キャンベル前国務次官補とマイケル・グリーン元NSCアジア上級部長らが山口代表と極秘会談をもったように日米合作の公明党を「抵抗勢力」のダミーに仕立て上げる目眩まし、陽動作戦にすぎない。

 

「国の存立を全うし、国民を守るための切れ目のない安全保障法制の整備について」の閣議決定を受けて、今後、一つは12月に予定されている新しい日米防衛協力の指針に集団的自衛権行使や国際平和協力活動での武力行使、グレーゾーンで自衛隊が行動することを前提にした内容を盛り込むこと。もう一つは集団的自衛権行使や国際平和協力活動で武力行使をすることを前提にした安保関連法案の改正作業が進むことになる(国会への提出は秋の臨時国会を避けてほとぼりの冷めた来年の通常国会だと言われている)。

 

憲法の条文を変えないで、解釈の変更で、条約、法律、政令、省令など、自衛隊の活動範囲、武器使用等に関わる法改正が行われるわけだから、はじめから論理破綻は明らかである。

早速、今日の「毎日」(2014年07月10日 07時30分)に奇妙な報道があった。<7月1日の閣議決定は、集団的自衛権を「わが国を防衛するための自衛の措置」としており、新たに認める自衛隊活動は「他国防衛」ではないことを条文上明確にする狙いがある。>もうぐちゃぐちゃ。他国への攻撃でも日本の存立が脅かされるような事態があるからとして、集団的自衛権の解釈改憲が強行された。しかし、そんな事態があるとすれば、それは集団的自衛権ではなくて個別的自衛権だろうと批判され、閣議決定は両者ごちゃまぜの支離滅裂状態。「国際法上は、集団的自衛権」だといって、アメリカに胸を張る。一方で、日本国民には「我が国を防衛するためのやむを得ない自衛の措置」と弁解する。「日本への武力攻撃が発生」したときに自衛隊が防衛出動するのが自衛隊法76条だが、そのなかに他国に対する武力攻撃が発生した場合の「防衛出動」を潜り込ませる。これって、一体どう言うこと?!

 

現行憲法の平和主義を関連法案の改正によって立法改憲の形でゴリ押しする安倍政権にたいする私たちのたたかいは、まさにこれからである。閣議決定はこれから始まろうとする本格的なせめぎ合いの第一歩にすぎないのだ。


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