プロメテウスの政治経済コラム

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衆議院選挙制度改革  マニフェスト総崩れのなかで「比例定数80削減」に固執する民主党・野田政権

2012-02-15 20:15:09 | 政治経済

衆院の選挙制度改革に関する各党協議会が本日(15日)午前、国会内で開かれ、座長の樽床伸二民主党幹事長代行が、衆院の比例定数80削減や、小選挙区比例代表連用制を検討対象に含めることなどを盛り込んだ「座長私案」を各党へ正式に提示した。しかし、比例80減に公明党などから異論が相次ぎ、16日も協議会を開くことになった。

「4年間は上げない」(鳩山由紀夫元首相)との公約を踏みにじって消費税増税に暴走する民主党・野田政権。「国民生活が第一」も「コンクリートから人へ」も「対等な日米関係」もことごとく裏切り、「マニフェスト総崩れ」の果てに「比例定数80削減」のマニフェストだけは譲らない。何故か。新自由主義「構造改革」が生み出した危機を新自由主義的対応策で乗り切るためには、日本共産党など「構造改革」に強く反対する政党が国会に存在し「対決軸」を示していることは、支配勢力にとって従来以上に大きな障害である。国民世論を反映した対決軸が国会内に存在すると、自公も容易に妥協できないからである。「構造改革」に強く反対する政党を国会から一掃したい――そこに比例定数削減の強い衝動の根源がある

 

最近の民主党・野田政権の議員定数削減のレトリックは、消費税増税などで国民に負担増を求める以上、「行政の無駄」排除に加えて、「議員定数削減など国会議員も身を切る覚悟が必要だ」というものだ。これは、負担増に反対する国民に対し、それを決める国会も「身を切るから認めてほしい」と言ってるだけで、議員削減自体の積極的理由にはならない。その理由をもっぱら財政難に求めるとしても、衆議院の場合は、なぜ比例区だけなのか、なぜ議員歳費や政党助成金を切らないのか、素朴な疑問にはまったく答えない。その深層に「構造改革」に強く反対する政党を国会から一掃したい、という真相が隠されているからである。「しんぶん赤旗」によれば、仮に国会議員を80人減らしても、国会議員の歳費、立法事務費、秘書給与など含め56億円の削減で、政党助成金年総額の6分の1にすぎず、逆に政党助成金をなくせば国会議員457人分もの経費削減となるという

 

いま、野田政権は、財界・アメリカの要求に忠実に応えて、税・社会保障「一体改革」、環太平洋連携協定(TPP)、普天間基地「移設」問題、原発再稼働という「四大悪政課題」を、何が何でも実現しようと、自民、公明両党との事実上の大連立、協調体制をつくりあげることに総力を挙げている。しかし、民主党の変節への不信と怒りは大きく、支持率は低迷し、政策的にほとんど違いのない自民・公明も総選挙をにらむと簡単には民主党と連携する姿を見せられない。衆参両院のねじれもあり、保守二大政党政治がうまく機能しない状況に陥っているのだ。もともと比例定数の削減で小選挙区制を純化し、国民の声を議会に反映させないようにするのが支配層の長期の戦略であった。ところが、いま反国民的「四大課題」を強行する企てと結合して、比例削減が短中期の喫緊の課題として浮上してきた。民主・自民、あるいは公明を巻き込んでの事実上の大連立づくりの取引材料として、比例削減が選挙制度改革とセットで議論され落としどころが探られているのだ。 早速、自民党は樽床私案について「一歩前進」と理解を示した。

比例定数を削滅するということは小選挙区制がますます重点になるということだが、その小選挙区制では、圧倒的な民意が死票となり、相対多数の民意だけが議席を独占するという、民意の「捏造」が常態となる怖いのは、ゆるぎない支持者は迷うことなく、当選可能性とは関係なく支持政党候補者に投票をするかもしれないが、当選第一を考える素朴な市民感覚だと、本来の投票先がどうみても当選できそうもないと見ると、あきらめてセカンドベストに投票先をシフトすることになり、それが回を重ねると、やがて本来の支持先まで変更するということになってしまうことだ。こうなると、消費税やTPPの問題などでも、自分たちの日常的な意見、感覚と政党の選択とが違うということが当たり前になる。民意と議席の乖離が国民の積極的な政治参加を阻み、多くの国民が自分では動かず、テレビのトークショーあたりで受ける印象だけで、投票先を選ぶという観客民主主義のレベルに堕ちこむことは支配階級の思うツボである。大阪の橋下の似非リーダーシップにすがる若者だけを責めることはできない。

小選挙区制度が民意を反映しない良くない制度だということは、この20
年間の国民的経験で明瞭である。比例定数削減に反対し、一番明快に民意を反映する、比例を中心とする選挙制度をつくることは、現在の閉塞状況を打破する第一歩である。自分たちの声が世論調査と同じように議席に反映し、「構造改革」に反対する声が議会に代表されるようになれば、事態は大きく変わるだろう分の意見に近い人たちを政治に送り出す意欲が国民の中に沸き起こってくることは間違いない。

 


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