プロメテウスの政治経済コラム

プロメテウスは人間存在について深く洞察し、最高神ゼウスに逆らってまで人間に生きる知恵と技能を授けました。

「いざなぎ景気」を超えた景気は何「景気」―その特徴は? 貧困化の新しい日本型形態

2006-12-04 19:18:21 | 政治経済
今回の景気拡大の最大の特徴は、多国籍企業化した一握りの大企業が史上最高の利益をあげている一方で、労働者・国民の側では、失業・雇用不安とワーキングプア、格差と貧困の拡大が長期化しているということである。中小企業、農業、地域経済の停滞感も改善されるどころか、いちだんと深刻化している。気が長期に拡大しながら、労働者の賃金が大幅に低下するということは、日本の過去の景気回復期には例がないし、おそらく欧米諸国でも経験しない現象である。貧困化が政府の「構造改革」政策として強力的に進められたという意味で“貧困化の新しい日本型形態”とでも呼ぶべき現象なのだ。

貧困化とは、一般的には資本の蓄積にともない、労働者階級の状態が悪化すること、ひろい意味では、資本蓄積によって、労働者階級をはじめ農民や都市自営業者などの小生産者をふくめ勤労者の状態が悪化していくことをいう。資本蓄積の進行は、小生産者層を分解し、搾取される労働者の数を増大させるとともに、相対的過剰人口(失業、半失業者のこと)をつくりだし、労働者をはじめ勤労国民の労働と生活をますますかたく資本主義的再生産のなかにくみこんでいく。そして、資本蓄積がすすめばすすむほど、大資本の側に巨大な「富の蓄積」を、一方の労働者階級、勤労国民の側には貧困・抑圧・労働苦などの「貧困の蓄積」をもたらす。マルクスはこれを資本主義的蓄積の絶対的・一般的法則とよんだ。

貧困化の具体的あらわれ方は、時代によってさまざまである。「いざなぎ景気」の当時、勤労者はカラーテレビ、マイカーやクーラーを手にした。日本経済の拡大とともに労働者の生活も向上した。マルクスの貧困化論は間違っていると盛んに喧伝されたものである。同時に、はなやかな経済成長の半面で国民生活のうえに大きな“ひずみ”が生じ、繁栄のなかの「新しい貧困」が問題となった。職場での労務管理の強化、資本による生活管理、技術革新による労働の疎外、ローン返済に追われる生活、公害、環境の悪化等々である。公害・環境破壊や「新しい貧困」の広がりは、1967年の革新都政を生み出し、70年代はじめまで、革新自治体の大波が怒涛のような勢いで全国に広がった。

今回の日本型の「格差景気」のもとでは、雇用や賃金などの労働の現場で、そして税金や年金、医療などの暮らしの現場で、さまざまな困難が幾重にも積み重なり、労働者、勤労者の生活状態の悪化が進んでいる。経済のグローバル化のもとで、日本の大企業の国際競争力強化のための構造改革によって、大都市の一部ホワイトカラー上層部を除く労働者、勤労者の総貧困化が強力的につくりだされているのだ。一億総中流といわれた日本社会はいま欧米以上の階級社会に意識的、強力的に改編さているのだ。その過程は「いざなぎ景気」時に問題となった相対的貧困化というよりもむしろ絶対的貧困化を伴っている。そして、強力的につくりだされつつある下層・貧困層は新自由主義的「教育改革」で補完されながら、ひとつの階層・階級として未来永劫的に再生産される運命にある。今回の「戦後最長景気」=「日本型の格差景気」は、多国籍企業の競争力強化のために労働者、勤労者の総貧困化を強力的につくりだす過程で生じた“貧困化の新しい日本型形態”とメダルの裏表の関係にある現象なのだ。

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1 コメント

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その通り (じぱんぐ)
2006-12-05 03:45:43
その通りです MBAもユダヤの教え
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