プロメテウスの政治経済コラム

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事務所費問題 「赤旗」に八つ当たりする前に国民の疑惑にこたえることだ

2007-01-15 19:06:26 | 政治経済
賃料のない議員会館を資金管理団体の「主たる事務所」にしながら、家賃が中心で領収書のいらない「事務所費」の支出を年間一千万円以上も計上している国会議員が十八人もいる(「しんぶん赤旗」2007年1月3日)。いまマスコミを騒がせているのは、伊吹文明・文部科学相4146万円、松岡利勝・農水相3359万円、中川昭一・政調会長3096万円、松本剛明民主党政調会長1866万円などである。

朝日新聞の取材によれば、伊吹氏の政治資金団体は、「交際費やお返し代、ご苦労様代、飲食代」を事務所費に計上しているようだ(「朝日新聞」2007年1月13日)。これは、明らかに政治資金規正法違反である。同法の施行規則は、領収書を付けなくていい事務所費の中身を次のように定義している。「事務所の借料損料(地代、家賃)、公租公課、火災保険金等の各種保険金、電話使用料、切手購入費、修繕料その他これらに類する経費で事務所の維持に通常必要とされるもの」とし、交際費や飲食代は政治活動費に計上し、5万円以上のものには領収書の添付が義務づけられるからだ。
伊吹氏は10日の記者会見で「冠婚葬祭など領収書のとれないものは人件費と事務所費でしか処理できない」とも言っている
“領収書のとれないものは事務所費につっ込めばよい”という仮装・隠蔽を自ら語ったようなものである。慶弔費など社会通念上、領収書をもらえない政治活動費については、その旨と明細を記した書面を付けて報告するよう規正法は定めている。
改悪教育基本法を強行した伊吹文科相は、何度も国民に「規範意識」を繰り返したが、伊吹氏の規範意識はどうなっているのか。

松岡農水相や中川自民党政調会長、松本民主党政調会長らに対しても国民は、伊吹氏と同じような疑惑を持っている。彼らはいずれも「不適切な経理はしていない」と言うばかりだが、国民の不信感を軽く見ているのではないか。 本気で信頼を取り戻したいなら、すぐにもできるやり方がある。疑問がもたれている政治団体の事務所費の明細を公開することだ。「手間がかかる」というのは言い訳に過ぎない。規正法は、政治団体にすべての収支の明細を記した会計帳簿をつくるよう義務づけている。収支報告書のもとになるものだが、それをそのまま公開すれば済むことだ(「朝日新聞」同上)。

事務所費問題が議論となった14日放映のフジテレビ番組「報道2001」で、不透明な支出が指摘されている自民党の中川政調会長と民主党の松本政調会長が「赤旗」の取材・報道を攻撃。松本氏は「『赤旗』さんの取材を受けた覚えはない。いわば問答無用で書くのは、ちょっと政党の機関紙で(どうか)」「白昼歩いていて、いきなり殴られた気持ちだ」などと八つ当たりした。国民だれもが閲覧できる政治資金収支報告書を記事にするのに取材申し込みがいらないのは当然である。中川氏にいたっては「『赤旗』のような政党機関紙も、ほんとうにきちんとやられているのかも、この際、徹底的にやった方がいい」「機関紙をきちんと購入しているかどうかとか、公表したらどうか」などと意味不明な攻撃をし、司会者に「『赤旗』に何か不透明なところがあるのか」「何のことをいっているのか」と問われるとまったく支離滅裂になってしまった(「しんぶん赤旗」2007年1月15日)。

「事務所費」や「備品・消耗品費」に領収書が不要ということは、この費目に事実上、政治活動費の付け替えが可能ということを意味する。政治資金規正法は、「政治団体及び公職の候補者により行われる政治活動が国民の不断の監視と批判の下に行われるようにするため、政治資金の収支の公開並びに政治資金の授受の規正その他の措置を講ずることにより、政治活動の公明と公正を確保し、もつて民主政治の健全な発達に寄与すること」を目的とする。
資金の支出を透明化するためには原則的に細かな支出まで領収書を添付させるように法改正すことが必要だ。その前に、疑惑の政治家は「年間数千万円もの事務所費を記載する以上、きちんと使途を説明する必要がある。虚偽記載であれば、政治資金規正法で罪に問われる」(日経1月12日)のが当然だ。

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