新テロ特措法が15日失効し、2001年のアメリカ同時テロ以降8年にわたりインド洋で米艦船などに給油支援してきた海上自衛隊が撤退することになった。早速、「産經」を筆頭に、「読売」、「日経」など日本の大手マスコミは、給油延長しない鳩山政権に非難ゴウゴウである。
「同盟国として米国を強く支持し、最大限の支援を行う」(01年9月23日、小泉純一郎首相)―こうして強引に支援したアメリカの「対テロ戦争」は、アフガン、パキスタン、イラク国内を混乱させ、「テロ」を勇気付け、彼らの活動範囲を拡大しただけである。「読売」は「アフガンでは、困難な情勢が続く中、40か国以上の部隊が1500人超の犠牲に耐えつつ、治安維持や復興支援に従事している。日本も一定のリスクを共有し、ともに汗を流すことが大切だ」という(「読売」2010年1月15日)。アフガン戦争は、「不朽の自由作戦」(OEF)も国際治安支援部隊(ISAF)も国連の責任のもとに行われている戦争ではない。アメリカの有志連合国とNATO加盟国がそれぞれの思惑でやっているだけである。惨めな失敗に終わることが目に見えている戦争に自衛隊を派兵しなくても誰からも批判されることはない。安倍元首相は、この給油を中断させないため、自分は辞任してもいいとまで思い詰め、とうとう体調を崩してしまった。つい数ヶ月前まで自民党は、民主党が選挙に勝って給油が中断すれば、日米同盟は破局を迎えるかのような宣伝をしていた。自民党の論に従えば、もうすぐ日米関係は破局を迎えるのだろうか。残念ながら、自民党や大手マスコミが騒いでいるほど米国はバカではない。
アフガニスタンでの戦争は国連憲章が禁止する9・11同時テロに対する「報復」戦争である。しかし、戦争でテロがなくせないことは、いまだに首謀者の逮捕もできず、アフガンの治安も確保できていない8年間の事態が証明している。戦争でテロはなくせない―これがブッシュ前政権の失敗の教訓であったはずである。
ブッシュ路線の転換を目指したオバマ大統領は、当初、グアンタナモ収容所の閉鎖方針を発表し、「対テロ戦争」という言い方をやめていた。しかし、昨年末の航空機テロ未遂事件後、右派からの批判や攻撃に直面して「米国はアルカイダと戦争中だ」と宣言して、いまでは公然と「対テロ戦争」を復活させた。
「対テロ戦争」の戦場であるインド洋に自衛隊を送り込んだことは、アメリカが世界で引き起こす戦争に日本を協力させるという、日米同盟を「地球規模の侵略同盟」に引き上げるものであった。その後、アメリカのイラク侵略に伴い、イラクにも自衛隊を派遣した。その流れの中で、現在の米軍再編は、日米が「役割・任務・能力」の分担を確認し、司令部機能の統合、基地の共同使用、共同演習の拡大、情報・通信、作戦などで米軍と自衛隊の一体化をすすめること、米軍基地の強化、固定化をはかることが目指されている。米国は、大きなことを目指しているのであって、この大目的の達成にとって障害となると思えば、給油活動の中断でも、普天間基地「移転」でも、日本の世論を敵に回すようなヘマはやらない。
米各大手紙は13日、ハワイで12日に行われた岡田克也外相とクリントン米国務長官との日米外相会談の内容を報じる記事を掲載した。ワシントン・ポスト紙は、米政府が、沖縄問題にとらわれて両国の同盟関係を損なうべきではないとの判断から姿勢を変化させ、普天間飛行場の移設問題の結論を5月まで先送りした日本政府の立場に理解を示したと指摘した。クリントン氏は、「移設先をめぐり、連立政権内に多くの懸念があることは承知している」と理解を示した上で、日本の取り組みを尊重すると表明した(琉球新報2010年1月15日 )。残念ながら、自民党や大手マスコミが騒いでいるほど米国はバカではないのだ。
日本の給油支援は、米国など8カ国で構成する有志連合軍の不朽の自由作戦(OEF)の一部としての海上阻止活動(OEF-MIO)の一環であり、明らかな戦争協力活動であった。日本の給油支援は、アフガン空爆を行う米艦船を支え、罪のないアフガン市民の殺戮に結果として加担するものであった。06年9月に米強襲揚陸艦「イオウジマ」に行った給油では、給油直後から攻撃機ハリアーが出撃し、136回も空爆した。戦争を否定した憲法を持ち、戦後一貫して他国の国民を殺したことがないといわれた日本が、アフガンでは民間人殺戮に手を貸した事実は、絶対に消し去ることはできない歴史上の汚点である(「しんぶん赤旗」2010年1月16日)。
アフガンの人びとには、日本の給油活動はあまり知られていないというが、伊勢賢治さんが常々仰っている“美しい誤解”が暴露されるのも時間の問題であろう。活動の制約が多い自衛隊にとって、洋上給油は戦闘に巻き込まれる危険が少ないうえ、国際的に高く評価される「ローリスク・ハイリターン」(海自幹部)の国際貢献でもあった、などと呑気なことを言っている場合ではない。「読売」(同上)は「テロとの戦いは、日本の平和と安全に直結する」というが、私は今後、日本がテロの標的となるリスクの方がはるかに恐いと思う。
私たちは、現地の人が敬意を抱く「ペシャワール会」の伊藤和也さん(享年31)がなぜ殺されなければならなかったのかを考えなければならないだろう。アジアプレスの白川徹さんは言う。「伊藤さん拉致の一報を聞いた際は盗賊の仕業ではないかと思った。日本人NGOの評判は良かった。(それでも)外国人に対する不信感は想像以上に高まっていた。背景には各国の軍隊によるPRT(地域復興支援チーム)活動がある。地元の人たちからは民生支援も軍も一緒に見られてしまう。インド洋上での給油活動が明らかになってから日本がアメリカに協力しているように見られるようになった」。
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