プロメテウスの政治経済コラム

プロメテウスは人間存在について深く洞察し、最高神ゼウスに逆らってまで人間に生きる知恵と技能を授けました。

岩国市民の声は「地域エゴ」でない―住民投票結果

2006-03-13 20:37:45 | 政治経済
米軍再編をめぐる住民投票として全国で初めの山口県岩国市の住民投票は3月12日、投開票され、再編計画反対が圧倒的多数となりました。投票率58.68%、「反対」に賛成43,433票反対5,369票でした。全国の大きな注目のなかでおこなわれた住民投票の結果は、全国各地で米軍基地再編・強化に反対するたたかいにとって重要な意義をもつものとなるでしょう。同時に戦後60年以上たって、いまなお事実上の占領をつづける在日米軍とは日本国民にとっていかなる存在であるのかを改めて考えさせるものです。

小泉首相は13日昼、岩国市の住民投票で空母艦載機部隊の岩国基地受け入れに反対多数の結果が出たことについて「どこでも住民投票をすれば反対でしょうね、基地は」と述べた上で、今月中に日米間で米軍再編の最終報告を取りまとめる方針については「変わりありません」と語り、岩国移転計画を変更する考えはないとの認識を示しました。在日米軍が日本防衛とは関係なく世界相手に“殴りこみ”をかける。そのときの出撃基地を日本国民の税金で用意し米国に尽くすことが、日本国民からなんと言われようと自分としては国益だというわけです。

戦後7年間(イラクはただ今三年です)の米軍直接占領を経て日本が独立国になっても、アメリカは自己の世界戦略にとっての日本の位置を極めて重視し、米軍の駐留継続を事実上強制しました。1951年サンフランシスコ講和条約と同時に調印された日米安全保障条約は、日本における米軍基地の新設・拡張・使用を無制限に近く容認するもので、その後の対米従属の法的根拠を与えました。在日米軍はもともと日本防衛とは関係なくアメリカの世界戦略の必要から、日本に押し付けられたのです。1960年の改定日米安全保障条約(新安保条約)は、旧条約が米駐留軍の日本防衛義務を規定しない、露骨な片務的形式のものであったため、これを形式上双務・対等のものに改めました。10年間の最低存続期間の設定もおこないましたが、その後の経過からわかるように日本の対米従属的地位を固定化する条約の性格は変わりませんでした。アメリカの世界戦略の変化にあわせ自衛隊の従属的補完部隊としての役割分担や基地機能の強化の要求がますますエスカレートしそれに唯々諾々と従っているのが日本の政府・与党の昨今の状況です

このような歴史的経過をみれば、米軍への物品・サービスの納入や政府の基地対策事業で儲けている一部の企業や人々を除いて圧倒的日本国民にとって在日米軍基地の存在は迷惑以外のなにものでもありません。これを国益だという人々は、もしその人が経済的利益を得ているのでないのであれば、マインドコントロールを受けているだけです。米軍が日本防衛のために駐留していると考えることほどお人好しはありません。在日米軍基地に反対するのが圧倒的日本国民にとって当然だとすれば、基地周辺の人々の反対の意思表示は地域エゴでもなんでもなく国民共通の要求を生活体験から表現しているに過ぎません

今回の住民投票で、岩国市民は初めて、基地という「国策」にものを申したのです。政府は市民の声を真摯に受け止めるべきです。この期に及んで「住民投票に否定だった方々は投票していない。新しい岩国市が(20日に)誕生するが、(合併相手の)周辺町村はこの住民投票に疑問を持っている方々が多いと聞いている」と住民投票そのものに疑問を呈するような発言を繰り返す安倍晋三官房長官はこのことだけで、次期首相候補として失格といわざるを得ません。


最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。