プロメテウスの政治経済コラム

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民主党分裂劇をどう見るか   支配階級・大手マスメディアの立場と国民の立場

2012-07-03 19:42:48 | 政治経済

消費税増税、原発再稼働、沖縄の米軍基地強化、TPP参加――日本を支配する財界とアメリカ政府が彼らの政治的代理人に要求する現在の最大の実現課題である。小沢、鳩山と支配階級の不信と不満をかった民主党は、彼らが引き摺り降ろされた後、国民に信を問うこともなく、菅、野田政権と汚名返上に必死となった。菅が原発問題で躓いたあと、野田は支配階級にいっそう奉仕することで、自己の保身をはかった。衆参ねじれのなかで、支配階級に奉仕するためには、民主党を自民・公明に売り渡すほかなかった。支配階級の政策課題実現のための世論操作を使命とする大手マスメディアは、産經、読売、日経、朝日、毎日と少しずつ色合いを変えながら、暴走する野田政権に作戦を授け、叱咤激励を続けた(尤も、消費税増税では、色合いの違いもなくなり、一色となった)。小沢グループの民主党分裂劇の大手マスメディアの報道も、すべて支配階級の立場からのものであり、国民の立場からではない

 

小沢一郎元代表率いる衆参両院議員計50人が離党届を出し、民主党は事実上分裂した。消費税大増税と社会保障改悪などの相次ぐマニフェスト(政権公約)破りに加え、原発再稼働強行、オスプレイ配備受諾などの暴走を繰り返した結果、各種世論調査の内閣支持率も2割台に、民主党の政党支持率も10%前後にまで落ち込む中での今回の分裂劇であった。

大手マスメディアは、野田政権による、消費税を「4年間は上げない」、「国民の生活が第一」の公約破りを批判する小沢氏の大義に国民が同調しないように躍起である。そのためには、小沢氏のダーティーな過去の経歴を殊更、強調する

 

「産經」は主張する(産經ニュース2012.7.3 03:07)。

<今回の小沢氏の動きを見れば、過去に旧新生党や旧自由党など新党を作っては壊してきたことがよみがえる。「またか」というのが率直な印象だろう。・・・小沢氏は2日夕の記者会見で「もはや野田首相の下での民主党は、政権交代を成し遂げた民主党ではない」と野田政権と真っ向から対決する姿勢を示した。だが、産経新聞社とFNNの合同世論調査では小沢氏による新党への期待は11%にとどまり、「期待しない」が87%に上った。とくに小沢氏の造反行動について「国民生活を第一に考えた」と思っている人は2割にすぎず、7割以上がそう受け止めていない点に注目したい。

小沢氏は消費税増税に加え、原発問題も新党で取り上げる考えを示した。小沢氏の支持議員らは野田政権による大飯原発3、4号機の再稼働決定を批判し、小沢氏もそうした議員を評価している。しかし、「反原発」を叫ぶだけでは無責任だ。電力危機や産業空洞化への対処なども合わせ政策を構築するのでなければ、国民の生活を守ることにはならない。>

 

小沢氏の過去の経歴がどうであろうと、消費増税関連法案に反対票を投じたことには大義があり、むしろマニフェストに反する消費増税に賛成票を投じた民主党内の議員は、選挙に当たって、どうしてマニフェスト違反の消費増税に賛成したのかと有権者から問われた場合、何と答えるつもりなのだろうか。消費増税だけではなく、おそらく小沢新党は原発の再稼働やTPPへの反対も争点として掲げるだろう。これらの問題についても、「大義の旗」は小沢氏の側にある。野田・民主党のマニフェスト違反や民意に反する原発再稼働などによって、「ダーティー小沢」は「大義の旗」を押し付けられた格好になった。だから、大手メディアは、小沢氏のダーティーな過去の経歴を殊更強調し、小沢氏の大義に国民が同調しないように躍起になるのである。
 

今回の分裂劇は、消費税増税や環太平洋連携協定(TPP)参加への慎重論やマニフェスト回帰を主張するまともな民主党議員らが、世論の批判に押されるなかで起こったというのが真相である。しかし、支配階級の走狗に堕落した大手メディアには、ことの真相が見えない


再び、「産經」の言い分を聞いてみよう(産經ニュース 同上)

<民主党の小沢一郎元代表ら衆参国会議員計50人が離党届を提出したことで、野田佳彦政権はダメージを受けた。だが、衆院離党者は38人にとどまり、民主党は過半数割れにならなかった。小沢氏の一連の行動に対し、国民が冷ややかに見ているからだ。野田首相は早急に政権与党の態勢を立て直し、社会保障・税一体改革関連法案の早期成立に努めなければならない。民主、自民、公明による3党合意は、日本の危機を深めている重要課題に与野党が協力して取り組む政策連合だ。>

 

そして、財界と大手マスメディアが全面的に協力して進めてきた、「自民か」「民主か」の「二大政党」づくりの崩壊を前にして、<政治の信頼回復への真の分岐点とするには、主要政策をめぐり異なる政党が新たな枠組みを目指す動きを、さらに加速すべきである。すでに動き出した3党による政策連合を一歩として、こうした再編の実現を期待したい。政策本位の連合を通じて国民に多くの選択肢を示し、国民の信を問うことこそが国政の閉塞(へいそく)感打破にもつながるのではないか。>と締め括る。

 

どのような政策連合も「アメリカいいなり」、「財界中心」の「ビジョン」と「覚悟」しか持ちえない政治家は、1年も持たないというのが、この間の日本の閉塞状況の実態である。そこまで、支配階級が行き詰っているにもかかわらず、新しい展望を開けないのは、ひとえに革新勢力の不甲斐無さと多くの国民が大手マスメディアの世論操作から抜け出せないでいるためである。

野田内閣と自公大連立のこれ以上の民意に背く暴走を止めるためには、なんとしても、増税法案の参院議決まえに、衆院解散・総選挙に追い込み、国民の審判を下すことだ。


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