プロメテウスの政治経済コラム

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小沢氏強制起訴  元凶は、大甘「政治資金規正法」

2010-10-05 22:30:31 | 政治経済
民主党の小沢一郎元幹事長が検察審査会の議決を受け強制起訴されることになった。小沢氏の資金管理団体「陸山会」の土地購入をめぐる事件で、東京第5検察審査会は4日、政治資金規正法違反(虚偽記載)罪で告発され、嫌疑不十分で不起訴処分となった平成16、17年分の虚偽記載容疑について、「起訴すべき」(起訴議決)と判断した。第5検審は4月に「起訴相当」と議決しており、昨年5月に施行された改正検察審査会法に基づき、小沢氏は、東京地裁が指定する弁護士によって強制起訴される。第5検審は4月27日、衆院議員の石川知裕被告=同法違反罪で起訴=ら元秘書3人と共謀が成立すると認定し、「起訴相当」と議決。だが、再捜査した東京地検が5月に再び不起訴処分としたため、第5検審で再審査が行われていた(産経新聞 10月4日)。
本件に関しては、日頃は進歩的な法学者や弁護士まで、<感情に基づき「情況証拠」だけで「共謀共同正犯」と結論づけている、「不起訴」とした東京地検特捜部の処分は妥当、やむを得ない>とする有力な意見がネットを飛び交っている。なかには小沢氏を、権力による弾圧の“被害者”かのように描くものまである。しかし、これほど馬鹿げた議論はない。陸山会の政治資金報告書に20億円超の巨額の虚偽記載があることは、何人も否定できない事実である。虚偽の財務諸表を提出すれば、提出者だけでなく、会社も罰せられる。これが世間の通常の掟である。秘書だけが逮捕されて、責任者の小沢氏が罰せられないとすれば、非常識な「政治資金規正法」こそ問題である。

メンバーを一新した検察審査会で再び小沢氏の起訴を決めた。検察の2回の不起訴処分が、国民の判断によって再度覆されたのだ。現在、厚労省村木事件をめぐって大阪地検特捜部が「朝日」を先頭にマスコミや国民から袋叩きにあっている。日本の刑事司法に重大な欠陥があることはいまや周知の事実である。「初めに有罪ありき」という立場での密室の取り調べ、自白の強要、重要証拠を提出しない、事実をねじまげる強引な手法、あげたらきりがない。過去の幾多の事件で冤罪を生んだ元凶は、徹底的に批判され、糺されなければならない。しかし、ちょっと待ってほしい。特捜部は、政治家などによる汚職事件や経済・企業犯罪など、権力犯罪の検挙・摘発を主な仕事している。一般民間人に対する冤罪と権力者の犯罪とを同列に扱えば、権力者が喜ぶだけである。村木元課長は課長公印が自分の知らないところで押印され、公文書(証明書)が発出されたのに、自分の管理責任についてまったく触れない。会社であれば、部下が自分の知らないところで自分の公印を使って不利益な契約をしてしまって、管理責任を問われないだろうか。公印を保管している部署がいきさつを問われないことがあるだろうか

小沢氏に対する疑惑の核心は、みずから提供したといわれる土地購入資金が一体どこから出たかということである。検察審査会は、資金の出所を明らかにしない小沢氏の供述を、「虚偽記載の動機があったことを示している」と批判した。土地購入資金の4億円について、小沢氏は当初、「献金してくれた皆様のお金」と説明。その後、「金融機関からの借り入れ」、「家族名義で積み立ててきた個人資産」と説明は二転、三転してきた。しかし、東京地検特捜部は、結局、この資金の原資や流れをよく解明できなかった。確かにゼネコンの裏金が入り込むと会社の帳簿にも、銀行口座にも痕跡を残さないので調査は非常に難航する。本格的にやろうとすれば、税務調査のベテランが何人も、何か月も必要だろう。

結局、東京地検特捜部は、「陸山会」の収入、支出のうち、記載漏れとなったもの、架空計上しているものなど、政治資金収支報告書の虚偽記載の罪で、会計責任者の大久保隆規被告(公設第1秘書)、会計事務担当だった石川知裕被告(衆院議員)、後任の池田光智被告(元私設秘書)の3人を起訴することとし、小沢氏も「共犯」として、告発しようとしたが、「嫌疑不十分」で不起訴処分とした。政治資金規正法には、提出すべき書面に虚偽の記入をした者については、罰則規定があるが、代表者の連座制の規定がない(会計責任者の選任及び監督について相当の注意を怠つたときに罰金があるだけ)。

今回の事件で小沢氏を「共犯」で起訴しようとすれば、小沢氏が石川秘書の収支報告書への不記載を承知して提出させたこと=小沢氏の故意の存在が、小沢氏を起訴するための構成要件となる。「虚偽の報告」をすることについて「説明」を受け、「了承する」・・・・・小沢氏は否認するに決まっている。石川秘書がたとえ認めたとしても小沢氏が関与していた客観的な物証を揃えることは不可能だろう。
秘書だけが逮捕されて、責任者の小沢氏が罰せられないとすれば、その元凶は、すべて非常識な「政治資金規正法」にあるのだ


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