プロメテウスの政治経済コラム

プロメテウスは人間存在について深く洞察し、最高神ゼウスに逆らってまで人間に生きる知恵と技能を授けました。

JAL経営破綻   ここにも見え隠れする日米安保の陰

2010-01-20 20:49:08 | 政治経済
「ナショナル・フラッグ・キャリアー」と呼ばれ、日本を代表する航空会社だった日本航空が19日、経営破綻した。日本航空(JAL)は19日、東京地裁に会社更生法の適用を申請し、受理された。JALは企業再生支援機構をスポンサーとして再建を図ることとなった。負債総額は2兆3221億円となり、事業会社としては戦後最大、負債の多い金融業を含めると戦後4番目の大型経営破綻である。JAL株式は2月20日に上場廃止される。更生法を申請したのは、日本航空と子会社の日本航空インターナショナル、JALキャピタルの3社。
瀬戸英雄企業再生支援委員長が記者会見で端無くも明らかにしたように、JAL経営破綻の陰には、負の遺産とも言うべき、数字には表れないしがらみからがいっぱいあるJALは純粋な民間企業ではない。『沈まぬ太陽』でも、その一端が描かれているように、国策会社として政官業癒着の出鱈目経営を続けた。その意味で、経営破綻は当然の成り行きだったのかもしれない。そのなかでも、見過ごせないのが、日米安保の陰――アメリカの圧力である

 JALが破綻に至った背景には、政官業癒着による出鱈目経営がある。自民党政権は地方空港を造り続け、完成すると航空会社に就航を迫った。全国98の空港と新幹線、高速道路が旅客を奪い合い、2009年度上半期、日航の国内線の7割近い路線が採算の目安とされる利用率60%を下回った(「朝日」2010年1月20日)。
前原誠司国土交通相も「全国各地に98の空港を造って、そして不採算路線であっても飛ばし続けるということを、特に大手2社に対しては今まで強いてきた」と認めている。旧運輸省・国土交通省は、空港建設・整備の財源を航空会社が支払う着地料など「公租公課」に求めた。日航の負担分は、年間1200億~1700億円にものぼった(「しんぶん赤旗」2010年1月20日)。

 なぜ日本政府は、需要を大きく超える空港を造り続けたのか
宇沢弘文さんは、日本の場合、アメリカ占領政策のひずみが今も残っているという。「アメリカの日本占領の基本政策は、日本を植民地化することだった。そのために、まず官僚を公職追放で徹底的に脅し、占領軍の意のままに動く官僚に育てる。同時に二つの基本政策があった。大戦中に国のために協力したという名目で、アメリカ自動車産業に日本のマーケットを褒美として差し出す。もう一つは農業で、日本の農村を、当時余剰農産物に困っていたアメリカとは競争できない形にする。
ポスト・ベトナムの非常に混乱した時期に、アメリカは経常赤字、財政赤字、インフレーションの三重苦に苦しむことになったが、とくに対日貿易赤字に焦点を当てて、円高ドル安を強引に迫ったのが1985年のプラザ合意であった。それでもなお、対日貿易赤字が続く中、もっぱら日本に焦点を当てた“新貿易法・スーパー301条”を制定し、強引な報復・制裁措置という保護政策の虚にでた 」。
「最後にアメリカが日本を従属させるために持ち出し、今も続いているのが『日米構造協議』である。それは、アメリカの対日貿易赤字の原因は、日本市場の閉鎖性、特異性にあるとし、経済、商業的側面を超えて、社会、文化などを含めて日本の国のあり方全般に干渉するものであった」(宇沢弘文・内橋克人『始まっている未来』岩波書店2009)。

「日米構造協議」でまず最初に迫ったのは、1989年7月の日米首脳会談で、パパ・ブッシュが宇野首相に迫った、GNPの10%を公共投資に当てろという要求であったしかもその公共投資は決して日本経済の生産性を上げるために使ってはいけない、まったく無駄なことに使えという信じられない要求であった。それを受けて、海部政権の下で、10年間で430兆円の公共投資が、日本経済の生産性を高めないような形で実行に移されることとなった。その後、それでも不十分ということで、1994年には、最終的に630兆円の公共投資を経済生産性を高めないように行うことを政府は公的に約束した。まさに、日本の植民地化を象徴するものだった(宇沢・内橋 同上)。
全国各地で、どこもかしこもリゾート開発の名で、レジャーランド建設のようなものに走ったのは、このためだったのだ(私、個人としては、気楽なサラリーマン生活を送ることになったのだが・・)。

 全国各地に98もの空港を建設したのも、日米構造協議による630兆円の公共投資であった。日本経済の生産性を高めないということは、はじめから無駄な空港だったのだ。日米構造協議によるアメリカからの規制緩和要求で、ドル箱路線は、新規航空会社の参入による低価格競争を強いられ、日米貿易摩擦の解消要求で、大量のアメリカ製大型航空機を買わされる。政官業癒着の出鱈目経営の陰には、諸悪の根源――日米安保条約の存在があったのだ。安保条約第2条は、日米間の「国際経済政策におけるくい違いを除く」、「経済的協力を促進する」となっている。日本の経済政策への米国の不当な介入を許し、世界に例のない経済的従属が制度化されたのだった

最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。