プロメテウスの政治経済コラム

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ソマリア沖派兵  陸・海・空 自衛隊の格好の実戦訓練場 海外恒久派兵はスグそこに

2009-05-05 18:56:11 | 政治経済
自民、公明両党は4月23日の衆院本会議で、「海賊対処」を口実に自衛隊の海外での武力行使と海外派兵恒久法に道を開く「海賊対処」派兵新法案を強行可決した。「海賊対処法」は、任務を海賊対策に限定しているが、自衛隊が世界のどこへでも、いつでも出動するという意味で自衛隊の海外派兵を恒久化する役割を担っている。任務を「テロ」対処とすれば、米軍とともにいつでも世界のどこへでも出かけていく「自衛隊の海外派兵恒久法」につながるものだ。ソマリアは、米軍の指導のもと「テロ」戦争の共同演習を進めている自衛隊にとっては、格好の実戦訓練場である。

ソマリア沖アデン湾への自衛隊派兵問題で政府は、海上自衛隊の護衛艦に加え、(海自)P3C哨戒機や陸上自衛隊の中央即応連隊を今月中に派遣しようとしている。航空自衛隊もC130輸送機による人員・物資の輸送を計画。ソマリアはさしずめ、米軍の指導のもと近年訓練を積んできた対「テロ」戦争の訓練成果を実戦で発揮する陸・海・空そろい踏みの実戦訓練場である。
護憲派が自衛隊の海外派兵を憲法違反だと騒いでいる間に、現場は、もっと先に進んでいる。「海賊対処法」は参院審議が残っておりまだ正式に成立していないが、アデン湾には現在、護衛艦「さざなみ」「さみだれ」の二隻(乗員計約400人)がすでに展開している。周知のように新「テロ」特措法のもと、同湾を含むインド洋では「対テロ」戦争支援のためにすでに、護衛艦「あけぼの」と補給艦「ときわ」(乗員計約330人)が米軍など他国艦船への補給活動を行っている。

政府・防衛省は、ソマリア隣国のジブチ(旧仏領ソマリランド)に海自のP3C2機を派遣する準備を進めている。P3Cは空から警戒監視を実施。同機が収集した情報を現場で指揮している米軍に提供することが目的である。ジブチ空港の一角を駐機場として借りることから警護要員が必要だとして陸軍の中央即応連隊所属の隊員も派遣しようと狙っている。P3Cの整備要員などを加え、人員は約150人に上る。この結果、アデン湾とその周辺のインド洋には、全体で900人近い大規模な自衛隊員が派兵されることになる。P3Cも中央即応連隊も実戦経験は初めてである。中央即応連隊は、海外派兵への即応部隊として昨年3月に新設されたばかりの“精鋭部隊”である。米軍とともに実戦を経験したいと思っている自衛隊にとっては、ソマリアの海賊は貴重な機会を与えてくれたということになる。

最近、琉球新報記者の松元剛さんの話を聞く機会があったが、沖縄の自衛隊と米軍の共同軍事演習をみていると米軍指揮下に自衛隊を置き、両者はすでに一体化、融合しているという。そこで行われているのは、偵察、爆破、謀略、情報工作のノウハウであり、またイラク戦争派遣部隊からの直接指導といった、およそ日本防衛とはなんの関係もない訓練である。沖縄や本土で自衛隊が米軍と融合するということは、自衛隊が海外で戦争する米軍とともに下働きする方向に進まざるを得ないのは当然である。なぜなら、江畑謙介や小川和久といった軍事評論家が明言するように、「在日米軍で日本を守るための部隊なんて存在しない」のだから

自衛隊と米軍の融合によって、自衛隊が憲法上の建前である「日本防衛のための必要最小限度の実力」組織を超えていよいよ大手を振って海外に出かける軍隊となろうとしている。米軍の下働きをしようとすれば、「集団的自衛権」の憲法解釈を変えるのも時間の問題である最後に残るのが、憲法で禁止する交戦権、武力行使の限界である。下働きをさせる米軍からすれば、単なる後方支援ではなく、むしろ危険なところを受け持ってもらいたいのは、当然である。殺し、殺されることに制限があったのでは、肝心なときに役に立たない。今度の「海賊対処法」では、「危害射撃」を認めることになっているから、相手は「海賊」ということだが、殺す可能性がある「海賊」と思ったが、実際は、反政府武装勢力かもしれない。こうなったら、もう「テロ」戦争である。報復攻撃で自衛隊員が殺されるかもしれない。「海賊対処法」が、米軍とともにいつでも世界のどこへでも出かけて行き、殺し、殺される「自衛隊の海外派兵恒久法」のスグそばまで来ているといわれる所以である

日本の貿易・経済はシーレーンに依存している。海賊対処は「国益」だという世論誘導がうまく進んでいるようである。これに対し、東京外国語大の伊勢崎賢治さんは、日本人は新憲法で強大な軍事力を持たない、軍隊を外に出さないと守れないような「国益」は求めないと誓ったはずだ。憲法9条の根幹をゆるがすのがソマリア派兵だと鋭い指摘を護憲派にも投げ掛けている。血を流すようなシーレーン防衛は二度としないというのが、世界の人びとに尊敬される日本人の生き方なのだ。

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