プロメテウスの政治経済コラム

プロメテウスは人間存在について深く洞察し、最高神ゼウスに逆らってまで人間に生きる知恵と技能を授けました。

「和風幕の内」と「多国籍幕の内」――日本の食糧自給率の内幕

2006-08-19 20:45:48 | 政治経済
食材を調べると米やたくあんは国産ですが、トリ肉はブラジル産、あえもののコマツナ(中国)、金時豆(ボリビア)、油揚げになる大豆はアメリカ産、サケは北欧の島といった具合に、19の食材のうち14が外国産でした。これでは「和風幕の内」ではなく「多国籍幕の内」ではないかというわけです。

日本の食料自給率は1960年の79%から2002年には40%まで低下し(2004年も40%、ここ数年横ばい),穀物の自給率は82%から28%にまで低下しました。
食料自給率には、大きく分けて品目別食料自給率と、総合食料自給率という2つがあります。
通常食料自給率といった場合、カロリーベースの総合食料自給率のことをいいます。日本の食料自給率は長年にわたって年々下がってきていて,おもな先進国の中で最低の水準です。他の先進国では食料自給率が上がっているのに、日本では下がっています(日本40%に対しフランス132%、アメリカ125%、ドイツ96%、英国74%―2000年度数字)。

なぜ日本の食料自給率は下がってきたのか。その要因については、急速な洋風化による食生活の変化であると説明されています。しかし、いかなる産業分野でも消費が変化しないものはなく、それぞれに対応してきています。なぜ我が国農業は対応できなかったのか。農政に問題はなかったのだろうか。

それは、ひとことで言って、1人1年当たりの米消費量がピーク時の1962年118kgから60kg程度に減少しているにもかかわらず、米価政策以外、なんの有効な対策も打たなかったからです。
高度経済成長時代、農村は労働力供給基地とされ、自民党は選挙の票田として、米の供給過剰が分かっているにもかかわらず、米だけを焦点にした農政をおこなってきました。消費構造の変化に対応した農業部門を育てる気などさらさらありませんでした。
戦後の食糧難の時代人口7000万人に対し農地は600万ha存在していました。現在人口1億2000万人に対し農地は500万haを切るまで、農村を荒廃させてしまいました。

現在の世界の人口は62億人とこの40年間で2倍になっていますが、国連の人口推計では2050年には91億人に達すると予想されています。また、生活が豊かになるに従って、アジア地域を中心に肉類や乳製品といった畜産物の消費が増加することが予想されており、家畜のエサとして使用されるとうもろこしなどの穀物の消費量が大幅に増加する可能性があります。今までどおりの食料輸入を続けることができない可能性が大いにあります。

WTOでも紛糾しているように各国の農業自主権、自国で生産可能な農産物はできるだけ自国で生産する体制を整える、そのために農業部門を基幹産業として位置づける国民的コンセンサスが必要です。

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