プロメテウスの政治経済コラム

プロメテウスは人間存在について深く洞察し、最高神ゼウスに逆らってまで人間に生きる知恵と技能を授けました。

外国人の地方参政権付与法案 「同化」か「排除」かに翻弄され続ける特別永住者(旧植民地国民)

2010-01-13 21:15:06 | 政治経済
鳩山内閣は永住外国人の地方選政権付与法案を、18日召集の通常国会に提出することを検討中であるという。永住外国人の地方選政権付与に関しては、政権が自民党から民主党に交代し、特に民主党の実力者小沢幹事長が積極的であることから、右翼の連中を中心に反対運動がここに来て一段と喧しい。“在特会”(在日特権を許さない市民の会)などは、何もわからない在日コリアの幼稚園児の遊技場にまで押しかけ、暴力団まがいの罵詈雑言を投げつけているという。彼らは、在日コリアがどのような歴史的経過でなぜ生まれ、戦後の日本政府と韓国軍事独裁政府にどのように人間的尊厳を奪われ、そのなかで歯を食い縛って生きてきて、やっと現在のような行政上の取り扱いを受けることになったかをまったく理解しない。彼らがいう“在日特権”(実は特権でもなんでもないのだが)に到達するまでには、在日コリアの長くて、悔しい、苦しい運動があったのだ。旧宗主国の国民は旧植民地国の国民にもっと寛大であるべきだ。今にも主権が奪われるかのように騒ぎ立てるバカ丸出しの日本人が恥ずかしい(在日韓国人・北朝鮮人をまとめて「在日コリア」と呼ぶことにする)。

 公職選挙法などは国政・地方選の選挙権を日本国民にしか認めていないが、最高裁は95年、「自治体と密接な関係を持つ永住外国人に地方参政権を与えることは憲法上禁止されていない」との判断を示した(反対する右翼連中は傍論にすぎないというが、ためにする議論でここでは詳しく触れない)。欧州では他国と互いに地方参政権を認め合う国が多い。韓国は05年、永住権を得てから3年以上で19歳以上の外国人を対象に認めた( 2009-08-26 朝日新聞)。
 民主党で検討されている法案は、地方自治体の首長と地方議員の選挙権を、戦前から日本にいるか、またはその子孫の在日韓国・朝鮮人らの「特別永住外国人」(42万人)に加え、その他の「一般永住外国人」(49万人)の成年者にも与える内容。ただ、「朝鮮」籍保持者には付与しない方針[「北」だけを差別するのは、いかにも日本政府らしいが、料簡が狭いのう]だという(「産經」1月12日7時56分配信)。
  「一般永住外国人」の国籍別内訳についてはよく知らない(中国人、ブラジル人、アメリカ人などが多いのだろう)。“在特会”などが問題にして騒いでいるのも主に「特別永住外国人」である。特別永住者とは、「日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法」(平成3年法律第71号。略称・入管特例法)により定められた在留の資格を有する者をいう。日本の降伏文書調印日(1945年9月2日)以前から引き続き日本に居住している平和条約国籍離脱者(朝鮮人(韓国人)及び台湾人)とその子孫のこと、要するに旧植民地国民とその子孫のことである

 1945年8月15日、日本が敗戦したとき、日本には約240万人の朝鮮人が住んでいた。その多くは戦時労働力として、各地の炭鉱や土建関係、軍需工業、港湾荷役などの作業場に徴用されていた。その中には、強制連行された者も多くいた。
 解放を迎えて在日コリアは、誰もが歓喜し、独立朝鮮に帰りたいと思った。しかし、日本政府は敗戦のドサクサで、船の手配など帰国の便宜を図ることをすぐにはしなかった。帰国希望者にたいする日本の計画的輸送が始まったときには、すでに38度線以南にはアメリカの軍政がしかれ、また故郷に生活の基盤を失っていたにもかかわらず、財産持ち帰りの制限が一人当たり1000円ということで、帰国希望者は激減した。こうして多くの朝鮮人が在日コリアとして日本に残ることとなった

 戦前の朝鮮人は、植民地国民として徹底して「皇国臣民」あることを強要された(「同化」政策)。牛馬のような労働力として、兵士や日本軍「慰安婦」として、「日本国民の義務だから」「天皇の恩義に報いるため」と天皇制国家命令に奉仕させられた。ところが日本政府は敗戦するやいなや、一転して朝鮮人が「日本臣民」ないしは「日本国民」であることを否定して彼らを外国人として「排除」する。
1945年12月17日に改正・公布された「衆議院議員選挙法」の付則で、まず、朝鮮人・台湾人の参政権を奪い、ついで新憲法施行直前、最後の勅令として「外国人登録令」を公布、朝鮮人及び台湾人は「外国人」という「みなし規定」を設け、旧植民地出身者を「外国人」として排斥する(尹建次『もっと知ろう朝鮮』岩波書店2001)。
現在の「特別永住外国人」に到るそれ以後の在日旧植民地出身者およびその子孫の苦難の歴史はここでは省略する

 その後、在日コリアは朝鮮が南北に分裂したために、「北」(朝鮮人)「南」(韓国人)「日本」(日本人)という三つの国家のはざまで生きることになった日本は戦前、朝鮮人を徹底して「皇国臣民」として「同化」を強要しておきながら(そしてまた現在、参政権がほしいなら「帰化」せよと櫻井よしこ氏らは「同化」を強要している)、都合が悪くなると外国人として「排除」し、さまざまな差別を押し付けてきた日本で税金を納め、もはや故国には帰れない、しかし自分のコリアとしてのアイデンティティーを失いたくない在日コリアの二世、三世に地方参政権を付与することになぜそんなに拘るのか。旧宗主国の国民は旧植民地国の国民にたいして、もっと心広く接する余裕を持たなくては、恥ずかしいではないか。

最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。