プロメテウスの政治経済コラム

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核密約   鳩山さん、岡田さん これからどうするつもりですか

2010-03-31 18:17:26 | 政治経済

3月9日、岡田克也外務大臣が、「日米間に核密約はあった。歴代の自民党政権が外務官僚とともに日本国民には、密約の存在を隠し続けていた」と発表したときには、「政権交代」の意味があったと期待したものだ。しかし、共産党の志位和夫委員長が警告したとおり、鳩山政権は、核密約を今後どうするかについて、国民に問うこともなければ、米国政府との話し合いの議題にしようともしてないアメリカにたいしてなにもモノをいわないということは、現状をそのまま続けるということである。これでは、自公政権となにも変わらない!
アメリカに対しモノをいいたくない、事を起こしたくないというために、鳩山政権は、「有識者委員会」の「報告書」で布石を打った
2000年の国会の党首討論で、共産党・不破哲三委員長(当時)が核密約である「討論記録」を示し政府を追及した。報告書は、その「討論記録」の存在はたしかに確認できたが、それは密約と言えないとしたのである。これを密約でないと言ってしまえば、核密約について周辺の文書はいろいろあるが、条約・交換公文の付属文書としては、「討論記録」以外にない。廃棄すべき「密約」文書がなくなるので、アメリカにたいしてモノを言わなくて済む、ウヤムヤのうちに済ませられると考えたのだ。
この鳩山政権のよい加減なやり方に党首討論の当事者だった不破さんが怒った。もちろん不破さんは、冷静な理論家なので、丁寧に証拠文書を示して、「有識者委員会・報告書」の言い分を突き崩した

 「有識者委員会」が「討論記録」は密約とは言えないとした根拠は、核搭載艦船の寄港を事前協議の対象外とする米側解釈を「(安保改定)交渉当時…日本側に明らかにした形跡はない」という交渉過程であった。したがって、日本側も特別の問題意識を持たなかったというわけである。
不破さんは30日、国会内で記者会見し、「交渉当時核持ち込み問題を日本側に明らかにした形跡はない」という報告書のウソを(1)安保改定交渉が開始された第1日目に、米側が説明していた証拠を示す文書(2)条約、交換公文、「討論記録」は、「単一のパッケージ」(正式な二国間契約)として、日本側が受け入れたことを示す証拠文書のふたつを示したうえで、
「『討論記録』が安保条約と事前協議に関する交換公文と一体不可分のものであることを示している。『討論記録』は58年から59年の安保改定交渉のわき道ではなく、核心部分をなすものであったことも明確だ」と指摘。「政府は誤った解釈をただして事実を正面から受け止め、密約である『討論記録』を廃棄し、文字通り『非核三原則』の(何の裏づけもない口先だけでない)根拠のある実現を強く求めたい」と強調した(「しんぶん赤旗」2010年3月31日)。

 第一の文書は、1958年10月4日、安保改定交渉が開始された第1日に、米政府代表のマッカーサー駐日大使が、日本政府代表の岸信介首相と藤山愛一郎外相に何を説明したかを示す同大使の電報(マッカーサー大使が駐マニラ米大使に送った電報58年10月22日)。
同電報は、事前協議の定式についての説明は米国務省・国防総省共同の訓令に従って行われ、その訓令は「核兵器を積載している米軍艦の日本の領海と港湾への立ち入りの問題は従来通り続けられ、(事前)協議定式の対象にならない」と指示していたこと―を明記している。「核兵器を積載している米軍艦」の寄港には事前協議を適用しないという米側の立場を、交渉の第1日から日本側に明確に説明していたのだ。また、同電報は「条約草案」と「(事前)協議の定式(のちの岸・ハーター交換公文)」、それについての解釈(のちの「討論記録」)を「一括(パッケージ)提案」している。
第二の文書は、交渉の合意成立当時の交渉経過を伝えるマッカーサー大使の報告電報(同大使が米国務長官にあてた電報59年6月20日)。
同電報では、同年6月18日、マッカーサー大使が条約、交換公文、「討論記録」の米側最終案を手渡し、これは「単一のパッケージ」だとして、「まるごと全体を受け入れるか拒否するか」の回答を迫っていたこと。これに対し翌日、日本側が岸首相の意思として、3文書の「すべてのポイントを受け入れ」るが、交換公文について1点だけ修正を求めるとの回答を行ったこと。それを米側が20日に承認して、「完全な合意に達した」という経過が明記されている(「しんぶん赤旗」同上)。

 日本が今後も「非核三原則」を堅持するのであれば、条約付属文書である「討論記録」を廃棄し、核積載艦船の、事前協議なしの日本寄港を認めない旨、米国政府に認めさせなければならない米側が、なおも「核の有無については肯定も否定もしない(NCND)」というなら、米軍艦船の入港には、すべて「非核証明書」が必要だということで、「答えないなら入港できません」と言えばよい。非核「神戸方式」の日本全国版であり、ニュージーランド方式である。
日米同盟にしがみつく人びとは、そんなことをしたら、「米国は安保条約を破棄して、米軍を撤退させかねない」と大騒ぎするかも知れない。しかし、浅井基文(広島平和研究所所長)さんは、心配ご無用という。
米国にとって、日本の基地なくして世界戦略は成り立たないから、米国は非核三原則を受け入れるほかない(米側から日本を出ることはありえない)。かりにNCNDにこだわって米軍が引き上げるようなことになれば、それこそ米国の軍事覇権政治の見直しにつながることになり、アジアや世界の平和につながるだろう。要は、私たちが本気で「核の傘」から出て、核廃絶を決意するか否かがポイントなのだ(浅井基文「オバマの核政策とヒロシマ」『週刊金曜日』2010・3・26)


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