プロメテウスの政治経済コラム

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民主党代表選  5年間で6人目の首相に  なぜ日本で政権が安定しないのか

2011-08-28 22:41:40 | 政治経済

菅直人首相の後継を選ぶ党代表選が27日告示され、前原誠司前外相、馬淵澄夫前国交相、海江田万里経産相、野田佳彦財務相、鹿野道彦農水相の5氏が立候補した。投開票は29日に行われる。小泉純一郎政権以降、自民党政権末期の安倍晋三、福田康夫、麻生太郎の3氏の政権と、民主党政権になってからの鳩山由紀夫、菅の2氏の政権はいずれも1年前後しかもたなかった。なぜ、こうも日本の政権は安定しないのか。それは、一言で言えば、支配階級の階級支配と国民の利害との矛盾が新しい政治転換を促す段階に達しているにもかかわらず、自公政権も民主党政権も新しい政治転換を展望することも、実行するもできないでいる。そして、それにもかかわらず、変革主体が十分に形成されていないからである。民主党の代表選といえば次の総理大臣を事実上選ぶ選挙になるのに、どの候補者も、この日本をどうしていくのかという旗印をさっぱり示せないのは、そのことを端的に物語っている。小泉政権は、高度経済成長時代の旧い自民党の利益誘導型開発主義政治がいよいよ行き詰まり、支配階級の支配が動揺するなかで、独特のキャラクターを駆使して、国民の「変革への期待」を新自由主義「構造改革」という階級支配の建て直しに結びつけることに成功した。しかし、皮肉にも彼の成功は、支配階級の支配と国民の利害との矛盾をいっきに深刻化させた。多数の国民が貧困化し、大企業とそれにつながる富裕層との格差拡大を合理化するために「自己責任」のイデオロギーが徹底された 


「現在、日本を基本的に支配しているのは、アメリカ帝国主義と、それに従属的に同盟している日本の独占資本である。わが国は、高度に発達した資本主義国でありながら、アメリカ帝国主義になかば占領された事実上の従属国となっている」(
20回党大会以前の日本共産党綱領)。この支配階級の支配と国民の利害との矛盾は、自民党の利益誘導型開発主義政治のもとで、覆い隠されてきた。高度経済成長による経済大国化のなかで、独占資本の側にも一定のパイを分配する余裕があり、国民生活が確実に向上したからである。また、戦争体験者が社会の多数を占め、彼らの体験的平和主義が、アメリカ帝国主義の軍事大国化の要求に一定程度の歯止めをかけた。

しかし、先進資本主義諸国の経済の拡大テンポが低下し、ソ連型社会主義体制が崩壊する情勢のもと様相が一変した。各国の独占資本間の競争の激化、新興国資本の追い上げに直面した独占資本、経済的覇権の動揺を軍事的覇権で巻き返そうとするアメリカという日本を基本的に支配している二つの支配階級は、労働者、国民への搾取・収奪の強化でこの危機を乗り切ろうと攻撃を強めた。こうして多数の国民が貧困化し、格差が拡大したのだった

 

自民党政権末期の安倍、福田、麻生の3政権は、日米同盟の強化、財界の新自由主義「構造改革」推進という支配階級の要求と国民の利害との対立の狭間の中で立ち往生し、1年前後という短期のうちに退陣を余儀なくされた。こうした中で、政治情勢をみることに敏感な小沢一郎元民主党代表は、構造改革政治をやめてもらいたいという国民の期待と圧力を一定程度受け入れ、支配階級の要求に一部修正を加えるマニフェストを掲げ、2年前の総選挙で民主党の大勝をもたらした。その期待を受けて登場した鳩山政権は、不十分ながら、構造改革の政治をやめる第一歩を踏み出そうとし、あるいは日米同盟強化を見直すような方向を模索した。小泉政権以来の福祉削減路線に対し、子ども手当、高校授業料の無償化、農家の戸別所得保障など福祉型財政支出拡大に踏み出した。また、日米同盟の問題についても、テロ対策特措法にもとづく自衛隊のインド洋への派兵を打ち切り、普天間基地の県外・国外移設を打ち出した。自民党政権が長い間、その存在を無視してきた日米安保にまつわる密約の調査・公開も不十分ながら行われた。しかし、鳩山政権も長く続かなった。アメリカの怒りと財界のいらだちのなかで、動揺を繰り返し、鳩山、小沢は、ジャパンハンドラーや官僚のクーデター、マスコミの包囲によって排除された。

 

こうなると、首相の座に執着すること以外に能のない菅政権が支配階級に屈服し、構造改革・日米同盟路線に回帰するのは、時間の問題であった。菅政権は昨年7月の参議院選挙では、鳩山政権が掲げていた福祉支出の公約をあいまいにするとともに、法人税の引き下げ、消費税の引き上げを公約に掲げ、構造改革回帰を公然と打ち出した。しかし、財界とアメリカが安心したのもつかの間、参議院選挙で菅・民主党は、国民の、とくに構造改革政治をやめてもらいたいと願って民主党に期待した「地方」の人びとの離反を招き、大敗北を喫した。

菅首相がここまで政権にしがみ付いたのは、自分には財界、アメリカ、そして大手マスコミの支持があるという思い込みだった。しかし、支持率が10%台に落ちた菅政権を支配階級が見放すのも、これまた時間の問題であった。

 

菅・民主党政権は、米軍普天間基地の問題、消費税増税の問題、環太平洋連携協定(TPP)の問題、それに加えて大震災・原発問題にたいする対応でやるべきことをやらなかった。「政治を変えてほしい」という国民の願いをことごとく裏切ったのだ。さらに「特例公債法案」の成立と引き換えに、自民、公明に魂を売り渡し、国民の要求に押されて多少とも前向きな要素を含んでいた「子ども手当」の廃止や「高校無償化」の見直しを約束。政治の中身としては完全に自民党と一体化した。これでは、民主党代表選挙のどの候補者も、この日本をどうしていくのかという旗印をさっぱり示せないのは当然である

 

自民党も民主党も国民の願いに反した政治を抜け出せないのは、これらの党に、「アメリカいいなり」「財界本位」といった日本の二つの支配階級の支配に対抗する姿勢がないからである。「アメリカいいなり」を正さなければ、沖縄の米軍基地は県内でたらいまわしするという結論しか出てこず、「財界本位」を正さなければ、財政赤字は大企業や大資産家にも応分に負担をしてもらうのでなく、国民に負担を押し付けるという結論にしかならない。民主党代表選で誰が新しい代表となっても、これまでの鳩山政権や菅政権が行ってきたような路線、すなわち、政権交代のときの公約を裏切り、政治を変えてほしいという国民の願いを裏切り続けるという道をすすむ限り、早晩ゆきづまらざるをえない。1年前後での首相交代が続くことになる。

 

財界や大手マスメディアなどは、この行き詰まりを切り抜けようと、自民・民主の「大連立」に活路を求めようとしている政治を根本から正す新しい政治の転換が求められているにもかかわらず、変革主体が十分に形成されていないのが最大の問題である。「大連立」を阻止できるかどうかは、これからの私たちのたたかいにかかっている

 

 

 


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