プロメテウスの政治経済コラム

プロメテウスは人間存在について深く洞察し、最高神ゼウスに逆らってまで人間に生きる知恵と技能を授けました。

憲法施行65周年  憲法をないがしろにする公権力の変革を求め立ち上がろう

2012-05-04 20:57:59 | 政治経済

日本国憲法が3日、施行から65年を迎えた。戦争放棄(9条)、幸福追求権(13条)、表現の自由(21条)、生存権(25条)…。東日本大震災後にあらためて浮き彫りになった野田政権や橋下市長による憲法をないがしろにする現実の数々。憲法を政治、経済、社会の隅々に行き渡らせるためには、「憲法と相いれない現実」に一つひとつに「ノー」を突きつけ、公権力を変えるたたかいに立ち上がらなければならない。

福島原発事故の被害は、事故から1年2カ月後のいまも拡大しつづけている。今なお約16万人の人びとが避難生活を強いられ、そのうち6万人は故郷を遠く離れた県外での避難生活を余儀なくされている。東電と政府による憲法22条の居住・移転及び職業選択の自由の明白な蹂躙である。昨年6月に相馬市の酪農家が「原発さえなければ」と壁に書き残して自殺した。憲法13条(個人の尊重・幸福追求権)を無残にも踏みにじって彼らは、未だに人災と認めようとしない。復興庁の最近の集計では、避難で体調を崩し亡くなったり、自殺したりなど「震災関連死」と認定された人びとは、10都県で少なくとも1600人以上にのぼる。憲法は、「すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする」として、公権力に最大の尊重を義務付けている。被災地 の人びとの幸福追求・生存権の蹂躙を見過ごすわけにはいかない

原発と日本国憲法は両立しえない。憲法前文では「われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する」とある。「平和」とは単に戦争のない状態ではなく病気や飢餓、貧困や人権侵害、災害を含め、生活を脅かす脅威から免れて心穏やかに生きることができる、ということだ。13条はさらに生命の脅威を排除することも人権として保障している。放射能の危険にさらされないで生きたいという人権を、憲法は保障しているのだ(伊藤真・「伊藤塾」主宰)。
5月5日には、北海道泊原発が止まり、稼働する原発がゼロになる。民主党の仙谷政調会長代行は、再稼働ができなければ「電力不足」で「集団自殺」になると脅した。原発問題は、「電力需給のために、多少の危険に目をつぶれ」というような筋の話ではない。原発と日本国憲法は両立しえないのだ。
 

公権力による憲法蹂躙が60年以上続いているのが、「日米安保条約と憲法」の問題である。日本国憲法は、「武力による平和」を認めていない。2度の世界大戦の体験からの教訓である。そして、憲法9条は日本の侵略によって犠牲となったアジア諸国に向けられた日本国民の誓約でもある。在日駐留米軍も自衛隊も「陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない」という9条2項の規定に明確に違反する。憲法違反を承知しているから、自民党は結党以来、改憲を党是としてきたのだ
日米安保は、実態の上で、すでに安保条約を大きく踏み越えている。最近の「日米共同声明」で、日米の「動的防衛協力」を初めて明文化した。「動的防衛協力」とは何か。米軍と自衛隊が、海外に打って出て、共同の軍事行動を行うことだ。グアムとテニアンに、日本国民の税金を投入して、日米両軍が共同使用する「訓練場」を建設し、共同訓練を行い、有事に共同行動をとる能力を高める。アメリカの帝国主義的介入のために、アメリカの手下として海外で共にたたかう――“あいまいな日本人”(大江健三郎さん)が居眠りしている間に、「憲法と相いれない現実」がますますエスカレートしているのだ。
 

憲法をないがしろにする公権力の問題で、最近、看過できないのが、橋下・「大阪維新の会」の動きである。
昨日、私は「神戸憲法集会」に参加したが、集会アピールで、「橋下市長(大阪維新の会代表)による憲法敵視の政治に抗議する」を採択した。橋下一派は、ただの改憲派ではない。人権と民主主義を窒息させる憲法違反の政治を、口で言うだけでなく現実に実行しているところに、特別の危険がある。憲法で保障された思想・信条・良心の自由、教育の自由を土足で蹂躙し、職員・教員を橋下の「下僕」に貶め、人格を丸ごと隷属下に置こうとしている。橋下が独裁体制のもとやろうとしていることは、どれも、手あかのついた“アメリカいいなり、財界中心“の政策であり、古い改憲論のむしかえである。橋下・「維新の会」の行動は、明らかに「憲法と相いれない現実」のひとつである。

憲法を政治、経済、社会の隅々に行き渡らせるためには、「憲法と相いれない現実」に一つひとつに「ノー」を突きつけ、公権力を変えるたたかいに立ち上がらなければならない。

 


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