プロメテウスの政治経済コラム

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電気用品安全法を巡る2つの問題

2006-02-20 19:07:29 | 政治経済
規制緩和をすすめるための「電気用品安全法(電安法)」が施行されて以来、家庭用電気製品の事故が電安法施行前の2000年度は647件だったのが、04年度には1024件に増加。事故のなかで、「製品に起因する事故」の比率が急増し、電安法施行前年の2000年度は57・86%だったのが、04年度は75・86%になっています。一方、同法で、事後チェックを強化するとして新表示(PSEマーク=Product Safety Electrical Appliance and Material)のない中古家電の販売を禁止したことがいま、消費者とリサイクル業者の間で大問題になっています。

電気用品安全法は、99年(平成11年)、電気用品取締法が改正されて電気用品安全法となり、2001年(平成13年)4月1日より施行されました。
電安法では、行政のあり方を「事前規制型」から「事後チェック型」に転換するとし、法律の目的を政府認可制から、第三者検査機関制度を活用した自己確認制 に変更しました。型式認可の政府認証などを廃止して、製品流通前の国の安全性チェックを後退させ、公的検査機関のみだった分野にも民間検査機関の参入を認め、製品安全検査も緩和しました。あわせて事業者による自主検査等をパスしたことを示す新表示(PSEマーク)と検査記録の保存を義務化。新表示のない製品の販売禁止、罰則規定などを盛り込みました。その際、既に電気用品取締法に基づく表示を付して市場に流通している規制対象製品については、経過措置として、期間を限って販売又は販売目的で陳列することが認められました。

製品の事故情報収集件数や「製品に起因する」事故率の増加の背景には、電安法による製品の安全検査の規制緩和があります。もう一つは、製造業の産業空洞化により、日本の優れたものづくりを支えてきた下請け中小企業切り捨て、労働者のリストラが影響しているものと思われます。国内の製造能力、製品の研究・開発力が弱まるなど技術水準が落ちているということです。

電安法は電化製品に安全確認済み「PSEマーク」を付けて製造・販売することを義務づけましたが、今年3月31日までは同法の猶予期間として、「PSEマーク」マークなしの製品でも販売可能でした。ところが、4月以降は、猶予期間が5年と定められていたシンセサイザーやアンプ、レコードプレーヤー、電源内蔵型ゲーム機、テレビ、電気洗濯機など259品目は、PSEマークがないと販売できなくなります。「PSEマーク」のない中古の電気製品で販売禁止になるのは、今年4月から対象になる259品目につづいて、08年から101品目、2011年4月から87品目と拡大していきます。

電安法は、「事前規制型」であろうが、「事後チェック型」であろうが「電気用品による危険及び障害の発生を防止する」こと――つまり、電化製品の安全性を確保することが目的の筈です。同法施行以前に製造された中古電化製品は、旧法(電気用品取締法)による、製造・販売に国のチェックが入っており、PSEマークがない製品でも、旧法に適合していれば、安全性は国によって担保されていることになります。にもかかわらず、なぜ、4月から一律禁止となるのか。リサイクル店や楽器・オーディオ店、質屋、骨とう品店などの関係業界に「これでは商売がやっていけない」という戸惑いと怒りの声が広がっています。一部の中古製品、オーディオ楽器/ゲーム機などは、愛好家の間で新規生産できない(「PSEマーク」がない)名機として流通しているものもあるようです。

「猶予期間の満了が十分周知されていない現状のまま本格実施することは、多くの市場をいたずらに混乱させることにも成りかねない。対象機器毎の規制内容の見直しと、検査等をより低コストで行えるよう、当面の間猶予期間を延長し充分議論する事が必要だ」という声が上がっています。


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