プロメテウスの政治経済コラム

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北朝鮮による延坪島砲撃  改革・開放を阻む「先軍政治」  「先軍政治」に追込む米韓、米日同盟

2010-11-24 20:44:45 | 政治経済

昨日、エルサレムでイスラーム・ユダヤ教・キリスト教諸宗派間の対話と平和の構築に尽力しているパレスチナ人キリスト教司教・ダワーニ夫妻の講演を聞いて帰宅すると、マスコミは北朝鮮が海岸砲から韓国延坪島に向けて50発以上を発射し、韓国軍戦闘機がすぐに出撃したと大騒ぎになっていた。ウラン濃縮施設を米国技術者に公開するという「切り札」を見せても、米韓両国が思うように反応しないのに腹を立て、軍事的挑発という極端な手段に出たのだろう。北朝鮮は、今のような 「先軍政治」を続けても、軍事力で米韓に遥かに及ばないことを早く悟るべきである。そして、米国が、米韓、米日同盟から利益を吸い取るために、北朝鮮を「先軍政治」に追込んでいることに早く気付くべきである。

 

23日午後、朝鮮半島西側の韓国の延坪(ヨンピョン)島に北朝鮮が50発以上の海岸砲を撃ち込み、韓国軍も北朝鮮の海岸砲基地に向けて80発以上を撃ち返して南北の間で砲撃戦となり、韓国の海兵隊兵士2人が死亡、十数人が重軽傷を負った。韓国合同参謀本部のイ・ブンウ公報室長によると、北朝鮮軍は午後234分から同55分までと、午後310分から午後442分まで、海岸砲と曲射砲を発射した。北朝鮮の砲撃は、韓国軍海兵隊の延坪部隊駐屯地を狙った無差別射撃だった。軍部隊を狙った砲撃だったため、軍人死傷者が多かったが、民間人3人も軽傷を負った(その後、島の住人でない民間人の2遺体が発見されたという)。合同参謀本部は、北朝鮮の砲撃は国連憲章、朝鮮戦争休戦協定、南北不可侵合意に背くもので、計画的、意図的に行われた違法な攻撃だと指摘。「無防備な民間人居住地にまで無差別に砲撃を加えた、非人道的な蛮行」だと非難した(「聯合ニュース」1123日)。

北朝鮮の社会体制は、20世紀社会主義=一言でいえば、戦時「共産主義」体制の極端な遺物である。金正日総書記は先軍政治について、「人民軍隊は我々の革命の柱であり、チュチェ革命偉業完成の主力軍です」という。それは、金日成が朝鮮人民軍の前身である朝鮮人民革命軍をまず創建し、祖国解放を成し遂げた後に朝鮮労働党が創建され、続いて軍を正規武力に強化発展させ、建国偉業を成し遂げたことを承継する流れからでたものである。軍事が何よりも優先される先軍政治のもとでは、本来の外交は存在せず、なにかにつけ軍事的危機を高め、突破口を開こうとするしかし、北朝鮮にとって不幸なことは、その軍事力そのものが、長年の生産力停滞のなかで、いくら頑張ってみても、米韓に遥かに及ばないということである。世間知らずの自分たちは、最新兵器を開発しているつもりだろうが、もはや朝鮮戦争当時と時代は全く違う。10数キロ離れた海岸から延坪島の海兵隊基地を狙って命中させたのだから、米軍の半意図的な住民誤爆よりは、北朝鮮の腕の方が確かかも知れないが、韓国軍の反撃によって、内陸の海岸砲・曲射砲基地が相当集中射撃を受けたはずであり、韓国軍が本気になれば、朝鮮戦争当時のような互角ということはありえない(F1516戦闘機も出撃したが爆撃を控えたという)。

 

戦時「共産主義」体制は、平時の経済運営にはついていけない。金正日総書記は中国を何度も訪問しているわけだから、そのことを知らないはずはない。金正日総書記は、故金日成主席の生誕100周年の2012年が強盛大国の大門が開く年だと内外に宣布している。共和国人民にもっとすばらしい生活を一日でも早く保障するためには、戦時「共産主義」体制の改革・開放が避けて通れない。しかし、経済資源をすべて軍事力増強に動員し、乏しい配給を続ける「先軍政治」のもとで、「改革・開放」に舵を切ることは勇気のいることである。北朝鮮は、改革開放に成功すれば、本当に強盛大国の大門を開くことができるかもしれない。しかし、今のような「先軍政治」のままでは、それは不可能である

 

米国は、今度の事件を心から歓んでいるだろう。韓国、日本を軍事同盟に縛り付ける格好の口実がまたできたからである。沖縄の知事選もある。同盟の義務を果たすから、安心しなさいともったいぶって言えるのだ
米国は、北朝鮮を脅威とも何とも思っていない。北朝鮮のミサイルの射程がどのくらいのもので、見せてもらったウラン濃縮施設がどの程度のものか百も承知である。米国本土にとって痛くも痒くもないから、相手にしないで放っておくと、北朝鮮が苛立ってことを起こしてくれる。米国にとってこんな有難いことはない。金正日総書記は北朝鮮を「先軍政治」に追込み、改革開放による経済発展を妨げている米国の企みに早く気付くべきである(尤も、何かというと、米韓、米日同盟にしがみ付きたがる韓国、日本の為政者の馬鹿さ加減を非難しないのは片手落ちだろうが)。


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