プロメテウスの政治経済コラム

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10─12月期実質GDPマイナス  縮む日本経済

2012-02-14 18:16:51 | 政治経済

内閣府が13日発表した2011年1012月期国内総生産(GDP)は実質・名目とも2四半期ぶりにマイナス成長となった。この結果、2011年実質成長率は前年比マイナス0.9%と、2009年以来2年ぶりのマイナスとなった。東日本大震災と夏場以降の歴史的な円高の長期化、欧州債務危機を契機とする海外経済の減速、タイ洪水の影響による供給制約などの一時的要因もあるが、2011年の貿易統計(速報)で貿易収支が31年ぶりの赤字(2兆4927億円の赤字)となったように、いよいよ日本経済の輸出依存による成長の限界が見えてきた。今回のマイナス成長は、日本経済の構造的な問題と結びついている。まさに縮む日本経済である。

 

新自由主義型の経済政策によって、大企業・金持ち優遇の税制、医療・福祉の改悪、非正規雇用の拡大、金融投機野放しの規制緩和などが推進され、大企業・富裕層には莫大な過剰資金が蓄えられる一方で、中小企業や国民の暮らしは苦しくなるばかりである。厚生労働省によると、2011年の現金給与総額は前年比でマイナスとなり、過去2番目の低い水準となった。大企業による国内生産の切り捨て、リストラは国内需要をいっそう冷え込ませる。国内需要が落ち込む中で、物価は長期的に下落。総合的な物価の動向を示すGDPデフレーターは、9期連続で前年を下回るありさまである。「超円高」も結果として格差の拡大をもたらす。大企業は円高対策として為替予約・多通貨ヘッジなどの対応をとっているが、中小企業にはできない。大企業は円高を理由に、中小企業に対しコストの引き下げを強要する。富と貧困の格差拡大が生産と消費の矛盾を深刻化し、長期不況が構造化しているのが日本経済の現状である。

 

日本経済の低迷と世界経済危機を口実に、大企業は大リストラ攻勢をかけてきている。リーマン・ショック後、大規模な非正規切りを進めた自動車や電機など大手製造業は、国内雇用を破壊し、若者たちから仕事を奪った。自ら国内経済を疲弊させながら、大手メーカーは今では、国内生産よりも海外生産を急拡大させている。このままでは、日本経済は縮むばかりである。

ところで、昨年から今年にかけて、勤労者の暮らしを守る運動が世界的に新たな盛り上がりを見せている。昨年の今ごろは、チュニジア、エジプトで中東の政治変革が始まり、夏に入ると、欧州の財政・金融危機が激しくなり、犠牲を勤労者に押し付ける「緊縮路線」に対する反撃が各国で起こった。秋には、米国でもウォール街占拠の若者のたたかいが全米に広がった。「ウォール街を占拠せよ」として立ち上がったアメリカの運動は「We are the 99 percent」(われわれこそが99%だ)というスローガンを掲げた。そして、この99%のスローガンは「われわれは、1%の人々のどん欲と腐敗をもはや我慢しようとは思わない。立ち上がろう」というメッセージとともに、瞬く間に世界に伝わった。

 

縮む日本経済のもとで、野田政権は、消費税率を10%に引き上げようとしている。回の国民負担は、消費税10%への引き上げで13兆円、年金額の削減などを含めると年間16兆円。さらに、年金、医療などの保険料引き上げによる負担増をあわせると年間20兆円もの負担増になる。多くの中小企業が経営難に陥り、地域経済が深刻な疲弊のもとにあるさなかでの大増税は、国民の暮らしと経済に計り知れない打撃を与え、日本経済を愈々どん底に突き落とすことになるだろう。そして、そのことが税収減をもたらし、財政悪化をもたらす―まさに新自由主義ドミノの悪循環だ

今こそ、消費税増税に頼らずに、社会保障を再生・拡充し、内需を温め、財政危機を打開する福祉国家型経済政策の方向に転換するときだ。世界で広がる99%の運動と連帯して、日本でも新自由主義路線の下で、異常にゆがめられた資本主義の税制・財政・金融・労働(雇用・賃金)などの政策や制度を根本的に是正する国民運動に立ち上がろう。


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