プロメテウスの政治経済コラム

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所得税法第56条問題  中小零細企業の親族給与の特別扱いは廃止を

2009-04-25 20:08:15 | 政治経済
中小零細企業は、家長のもとで家族全体の協力のもと共同で財産を管理・使用している場合が多いから、家族従業員(事業主と生計を一にして事業に従事する配偶者・親族)の個別所得を認識しないという所得税法第56条の規定は、個人を家から独立した個々の人格と捉える戦後の憲法の精神からいっても、本来、個人単位課税を原則とする所得税法の例外的規定、いまや時代遅れ規定である。戦前の家族制度の残滓を引きずるこの規定を業者婦人の地位向上をめざす全商連(全国商工団体連合会)の婦人部の皆さんが怒るのは当然である。所得税法第56条は当然廃止されるべきである。

所得税法第56条は、同一生計親族に支払う対価(給与、地代家賃、支払利息等)を事業所得等の必要経費とせず、またこれを受け取った側の所得としない旨規定している。
「居住者と生計を一にする配偶者その他の親族がその居住者の営む不動産所得、事業所得又は山林所得を生ずべき事業に従事したことその他の事由により当該事業から対価の支払を受ける場合には、その対価に相当する金額は、その居住者の当該事業に係る不動産所得の金額、事業所得の金額又は山林所得の金額の計算上、必要経費に算入しないものとし、・・・・この場合において、その親族が支払を受けた対価の額・・・は、当該各種所得の金額の計算上ないものとみなす。」
どんなに働こうとも、事業主の所得から控除される働き分は、配偶者の場合は86万円、家族の場合は50万円と決められている。

所得を認識しないということは、「算定基礎がない」ということで国民健康保険の傷病手当・出産手当の適用外となり、年金などの社会保険でも劣悪な扱いを受け、社会的にも経済的にも自立しにくい状況におかれることになる。これが戦後ずっと続いてきた。人格、人権を認めない、憲法13条(個人の尊重)、14条(法の下の平等)、24条(両性の平等)、男女共同参画社会基本法違反の扱いだと、業者婦人の皆さんが怒るのはもっともである。
ドイツ、フランス、アメリカなど、世界の主要国では、自家労賃を必要経費として認め、家族従業者の人格・人権、労働を正当に評価している
事業主から支払われた対価をそのまま必要経費として認めると,個人事業者がその所得を恣意的に家族に分散して不当に税負担の軽減を図るおそれが生じ,さらに,適正な対価の認定も困難であるから、そのようなな方法による税負担の回避を防止するために設けられた条項というのは、単なる言い逃れにすぎない。税務申告をチェックすれば、すぐわかることだ。

日本共産党の大門実紀史議員の追及を受けて、財務省の加藤治彦主税局長は「『青色申告』では、税制優遇を認めている」と言い訳したが(3月24日の参院財政金融委員会)、「申告の仕方で差別する前提が間違っている。まず実際に働いている人を『働いている』と税法上で認めることが大前提」(大門氏)なのだ。
たしかに、所得税法第57条によれば、特例として青色申告を税務署長から承認を受ければ、給料を経費にすることができる。しかし、同じ労働に対して、青色と白色で差をつける制度自体、論理的に破綻している。

4月23日の参院財政金融委員会で、日本共産党の大門議員は改めて「所得税法第56条の廃止」を求めた。今度は、加藤主税局長は、「抜本税制改革の中できちっと研究していきたい」と答弁した。すでに、与謝野馨財務相が3月24日の大門氏の質問にたいし、同条の規定について「研究してみる」と答弁。見直しを拒んできた財務省の見解を初めて修正する意向を示していた。
速やかな税制改正を実現するためには、いっそうの世論の喚起が必要だ。



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