プロメテウスの政治経済コラム

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日産ゴーン体制初の減益   賞賛から7年 「ゴーン改革」とは何だったのか

2007-05-02 20:41:50 | 政治経済
1999年、仏ルノー社から乗り込んだカルロス・ゴーン氏が社長に就任。日産リバイバルプラン(NRP)を打ち出し、赤字経営に陥っていた日産を短期間に黒字に転換させたときには、「ゴーン改革」と称賛された。氏はコストカッターと呼ばれるように、リストラを推進、従来の調達先協力体制を破壊し、社員、下請け、材料購入などのコストを切りまくった。その結果のV字回復であったのだ。しかし、よく見てみると「そもそもゴーン社長の名を世に知らしめた01年3月期のV字回復マジックも、カラクリが分かればなんてことはない。前年に、工場閉鎖や早期退職割増金による損失を先取りし、最悪の決算にすれば、次の期以降は黙っていても業績は回復していく」(自動車業界アナリスト)。

国内の販売実績に限っていえば、2006年度は前年比12・1%減の74万台、これには軽自動車約10万台を含むので、NRPがスターとする一年前98年度の66万4千台に比べて横ばい、むしろ下回っている(日産はスズキと三菱からOEM生産を受けて01年度から軽自動車の販売に参入した)。日産は販売不振の原因について「国内外で新型車の投入が不足しているため」としてきた。しかし、米国で小型車アルティマを投入した秋以降も、「想定していたほどは伸びなかった」(役員)のが現状だ。リストラ競争で、一時的に収益を改善しても、雇用不安・所得減から消費の低迷を招き、販売不振が企業業績に跳ね返る典型的パターンをここに見る。NRPは、政府の後押しをうけて、村山工場の閉鎖、下請け・系列企業の整理と大幅なコストダウンなどの強引な手法で黒字転換を図ったもので、性能に優れた車を販売することによって業績を向上させたものではない。「日産がV字回復をしていた当時、ある車評論家が日産改革について危惧している記述があった。協力会社のグループ化を解消し、メーカー色など関係なく安い部品をどこからでも購入していく方針をうちたてたが、どうしたものかと。将来必ず品質と開発の手かせ足かせになるということを懸念していた。それが出始めているのかもしれない」(気になるニュース・気になる内幕2007年4月16日)。

「失速ゴーン流」(「毎日」06・10・27)などと揶揄される一方でゴーン流「錬金術」経営は、彼自身の個人的役員報酬と親会社ルノーにしっかりと儲けを保障している。筆頭株主ルノーが持っている日産株は、20億400万株(44・33%)。一株当りの配当が半期で17円。配当金だけで年間680億円である。ゴーン社長の持ち株は1048千株。配当は3500万円強にのぼる。ゴーン社長の役員報酬は8億円あるいはそれ以上といわれている(日本は個人別役員報酬を公開しない)。
ルノーが日産と資本提携する当時の日産の株価は410円。それが現在の株価は少し下がったとはいえ、1200円台である。ルノーにとって含み益は膨大である。NRPについては、当初から、それが日産のリバイバルのためにあるのではなく、ルノー資本の利益につながるものと指摘があった(ジャーナリスト・阿部芳郎「日産自動車で何が 下」―「しんぶん赤旗」2006年12月13日)。

各社が力を入れているハイブリッド車開発で後れをとっている日産。「技術よりカネ」「モノづくりではない投資ファンドの手法」といわれるゴーン流経営の実像がみえてきた。私たちは、NRPの達成に対し、小泉前内閣が総理大臣表彰まで行って礼賛したことを忘れられない。国民生活を踏みつけながら、金融財政、規制緩和などあらゆる政策手段を使って、多国籍大企業の資本蓄積に奉仕する小泉構造改革を安倍政権も推進することが間違いないからである。

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