プロメテウスの政治経済コラム

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私「ネット右翼でした」 琉球新報社の記者になった青年

2018-04-08 18:42:13 | 政治経済

2018年3月25日、琉球新報に掲載された1本の記事がインターネット上で話題を集めた。

話題となった記事は、入社2年目の塚崎昇平記者(26)が書いた「ネット右翼でした」というタイトルのコラム。なぜ「ネット右翼」だった彼が琉球新報の記者になったのだろうか。(https://ryukyushimpo.jp/style/article/entry-691863.html)

ーなぜ、自分を「ネット右翼」と定義したんですか。

「ネット右翼」という言葉も定義はきちっと定まっているものではないと思います。ただ私が思う「ネット右翼」の定義としては、現場に行かないで、例えばインターネット上の情報で自分の考えを固め、「右」的な考えをネットで発信するというものではないかと考えました。例えば、ネット上などでよく言われているように「中国や北朝鮮を抑えるため、沖縄には基地が必要だ」という意見などです。日本政府はそう説明しますが、私も過去、それを無批判に受け入れていました。

―影響されたネット上の情報というのはどのような内容ですか。

ファクトチェックを受けていない根拠のない情報や、個人の考えがそのまま載ってしまっているブログなどです。ある意味、事実と反する情報でもネットではそれなりに影響力を持つ場合があります。ネットだけでなく、本を読む際にも自分に都合のいい情報だけを集めていたように思います。

―琉球新報に入社しましたがメディア志望だったんですか。

なんとなくマスコミに入りたいと思っていました。イラク戦争の時、米軍と共に行動しながら取材している記者のテレビ番組を見た時に、マスコミに興味を持つようになりました。いろいろな人に話を聞くことは楽しいだろうなと思い、新聞記者になりたいと考えるようになりましたが、直接のきっかけは思い出せません。ただ当時、琉球新報への入社は考えてもいませんでした。

―当時、琉球新報についてはどのように思っていましたか。

ちょうど大学時代に東日本大震災があり、米軍の「トモダチ作戦」に共感を覚えていました。琉球新報は「トモダチ作戦」について米軍が自分たちの宣伝活動に使っているのではないか、と思われるような論調で報道していると受け止めていました。「現場の人たちは頑張っているのに何を考えているんだ」と怒り、そういう思いを自分のツイッターに書き込んだ記憶があります。

―「記者ですが」(コラムの表題)に、「考えが変わり始めたのは友人と訪ねた辺野古や東村高江の現場を目の当たりにしてからだ」とあります。大学時代には辺野古や高江の現場をよく訪ねたんですか。

はい。大学3年だった2012年の夏、ヘリパッド(ヘリコプター発着場)造成に対する反対運動が行われている東村高江の現場に足を運びました。座り込んで反対運動をしている人たちが何を考えているんだろう、ということに興味がありました。ただ、あわよくば、座り込みをしている人たちの考えを論破してやろうという思いもありました。

―「記者ですが」には県民大会に参加した際、「ネット上のデマが現実離れしていると感じた」と書いています。

「反対運動をしているのはお金をもらった人々」というデマです。現場に足を運ぶと、現場を見ていない人が言っているんだなということが分かりました。現場には家族連れも普通の学生も、いろいろな立場や世代の人がいますから。

―お金をもらっているから反対運動をしている、というネット上の言説に対しては間違いだと思いますか。

はい。むしろ現場に来るためにガソリン代やバス代などの負担は大きいと思います。ネットではよく中国などの勢力がお金を出して運動を扇動し、日米安全保障体制を崩そうとしている、とか、現場には中国人や韓国人がいっぱいだ、という記述をよく目にします。実は私もそのように思っていた時期もありました。でも、私自身は辺野古や高江の現場に足を運んで中国の人に会ったことは一度もありません。もし、いたとしても一市民として、この状況が問題だと思って参加しているんだと思います。

「ニュース女子」(東京MXの番組)で高江の現場について「中国人はいるわ、韓国人はいるわ」と伝えていました。番組を見て「本当に現場に行ったことがあるのか」と怒りを感じました。ただ、昔だったら信じてしまっていたのではないか、もしかしたら喜んでその主張に飛びついていたのではないか、とも思います。


若者の社会認識が不完全なのは、当たり前である。大人になっても社会を正しく認識できない人々がいっぱいいることは、安倍政権の高支持率が示している通りである。

現代の支配階級は、力ずくで人民を抑え込むことはしない。あらゆる社会機構を通じて、人民が体制擁護にまわるように体制派諸政党を組織し、各種の政治団体、地域・職場などの諸大衆団体から、マスコミ・御用学者・ネット言論などを動員して支配階級の権力保持を支る。だから、社会の仕組みを掴むためには、一定の学習が必要である。しかし、ただ学習せよと言っても何をどのように学んでいいのかわからない。

塚崎昇平記者は、沖縄の現場を体験する機会に恵まれ、徐々に真実に近づく道を歩み始めることができた。そして、「ネット右翼」とは権力に取り込まれた人たちだという認識まで到達することができた。これからもっともっと学習を重ね、沖縄の歴史と現実の総体を掴んで行ってほしいと思う。ともに頑張りましょう。



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