プロメテウスの政治経済コラム

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イラク戦争開戦から15年 きちっとした検証のないまま今、日報問題で騒いでいる日本

2018-04-17 17:59:59 | 政治経済

今年の3月20日は、イラク戦争が開戦してから、15年目であった。アメリカはじめイギリスやオランダなどとっくの昔にイラク戦争の検証を終えているのに、日本は本気で検証することもなく、今日に至っている。イラク戦争では、報道されただけでも、約30万人が犠牲となった。そして今なお現地の情勢は混乱が続いている。それだけではなく、世界にテロ戦争を拡大し、軍事大国の軍需産業のおいしい飯のタネとなっている。 

なぜ、このような戦争を始めてしまったのか。あらためて、イラク戦争の検証をやるべきだ。

「イラクへの軍事行動は、最後の手段ではなかった」「軍事行動に法的根拠があるとは到底言い難い」―2016年7月6日、イギリスのイラク戦争への関与を検証する「イラク戦争調査委員会」は、報告書を公表、同委員会のジョン・チルコット委員長は冒頭のように、イラク戦争に参戦したブレア政権の判断を厳しく追及した。「特別な関係」とされる英米関係については「国益や判断が異なる部分で無条件の支持を必要とするものではない」と指摘。イラク戦争を無条件で支持したうえ、安保法制で集団的自衛権を可能とし、これまで以上に米国の戦争に進んで巻き込まれようとしている安倍政権のもとイギリスでの検証は他人事ではない。

イギリスでのイラク戦争調査委員会、通称「チルコット委員会」が立ち上げられたのは、2009年のこと。トニー・ブレア元首相含む、当時の政権中枢や外務省、国防省の官僚など、政府要人を呼び出しての公聴会、関連の政府公文書を機密解除し、公開するなど、徹底的な検証をチルコット委員会は行ってきた。2012年末にA4用紙でたった4枚の概要のみを公開した日本の外務省のいい加減さとは、本気度が違う

公開されたブレア氏側の一連の文書によれば、2003年3月のイラク戦争開戦から1年以上も前、2001年の12月には、既にブレア氏はブッシュ氏にイラクのサダム・フセイン政権を崩壊させることを示唆。翌2002年の7月には、「どんなことがあろうとも、私(ブレア氏)は貴方(ブッシュ氏)と共にある」と書いている。つまり、大量破壊兵器の廃棄や査察受け入れなどの国際社会の努力は、はじめから眼中になく、ブッシュ氏とブレア氏にとって戦争は既定路線であった。

チルコット委員長は「内紛や地域の不安定化、アルカイダの活動のリスクは、侵攻前にはっきりと確認されていた」「英国政府は戦争準備の段階で、イラクを安定化し、管理し、再建する仕事の大きさや、英国にふりかかる責任の重さを考えなっかった」

無制限に「特別な関係」が重んじられ、米国の戦争に追従した挙句、米国の戦争の無茶苦茶ぶりに振り回され、危惧されたリスクが現実のものとなり、それに直面することになる ー イラク戦争でのイギリスの状況は、安保法制で米国の戦争にこれまで以上に加担しようとする日本の、未来の姿だとも言える。

安倍首相によれば、「そもそもイラク戦争が起きたのは大量破壊兵器がないことを証明できなかったイラクが悪い」というのだ。このような無責任な安倍首相が、国民の命と財産を守るなどとよくも大言壮語できたものだ。

各国が誤りと認めた根拠に今なおすがり、イラク戦争支持が間違いだったことすら認められない日本。今後、安保法制下での米軍の軍事行動への一体化においても、何の歯止めもなく泥沼にはまることは、必然と言わねばならない。改憲に向かって暴走する安倍政権のもと、今、日本でイラク戦争の検証を行うことは、単に過去の政策の誤りを修正することだけではなく、日本の未来のためにも必要なことなのである。

(https://news.yahoo.co.jp/byline/shivarei/20170321-00068940/)




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