プロメテウスの政治経済コラム

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柳沢厚労相罷免問題  政治的駆け引きではなく公人としての適格性の観点から辞任は当然

2007-02-02 18:59:02 | 政治経済
柳沢氏は、少子化問題を含む福祉、健康、労働の分野で国民の人権を守ることを職責とする厚生労働大臣である。少子化の原因と解決策を女性に押し付けて、しかも女性を生殖の道具と見なすような発言をすれば、職責不適格として辞任するのが当然である。日本の政治システムからいって安倍首相に任命責任があるわけだから、柳沢を罷免し別の適格者を任命するのが首相の責任である。これは、「柳沢氏を辞めさせないと、女性票が逃げていく」、かといって「2人目の閣僚辞任となれば、政権は深く傷つく」(「朝日社説2007年2月2日」)といったような統一地方選・参院選を前にした損得勘定をすることとは、まったく無関係な話である。
野党についていえば、「民主党の小沢代表と社民党の福島党首はきのう、名古屋市を訪れ、週末の愛知県知事選の応援演説に並んだ。『女性は機械』発言への世論の反発を追い風にしたい。そんな思惑が透けて見える」(「朝日社説」同上)のだ。

私は、資本主義が「正当な労働の対価」をやり取りすることから離れ、村上ファンドやライブドアに代表される「六本木ヒルズ資本主義」に傾斜し、社会のあらゆる分野で道徳性、人間性、倫理性がいよいよ失われてきたと思う。保守・革新の立場をこえて、物事を真摯に考え、責任をもって自分の役割を果たすという当たり前の人間としての規範を喪失してしまっているのではないか。特権階級の公人にはとりわけ大きな責任があることはいうまでもない。現職閣僚や、政党の幹部にまで広がった「事務所費」疑惑についてもそうである。国民から疑惑をかけられた閣僚や政治家は、他から追及される前に、保管が義務づけられている領収書と帳簿を自ら率先して公表して、事実を国民の前に明らかにするのが公人としての当然の責任である。

公人の責任について、私には思い出すことがある。昔、細かいやり取りは忘れたが、日本共産党の宮本顕治委員長が、酒を嗜むか、晩酌はどうかと聞かれ、酒は嫌いなほうではないが委員長という立場上、晩酌はやらないという。何故かと問われ、政治は一寸先は闇といわれるように、真夜中でも何時マスコミから、委員長としてのコメントを求められるかわからない。そのとき、赤い顔をして答えるわけにはいかないというわけだ。なるほど職責に責任をもつということは、そのくらい自分には厳しいものだといたく感心したことを覚えている。

柳沢厚労相更迭の帰趨は、与野党とも、週末の愛知県知事選と北九州市長選の結果待ちといわれている。しかし、問題の本質は、柳沢発言によって示された柳沢伯夫という人物が、厚生労働大臣の職責に適格かどうかである。安倍首相がその判断をすることができないのであれば、主権者である国民が声をあげることで教えてやるほかない。

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