Dr内野のおすすめ文献紹介

集中治療関連の文献紹介が主な趣旨のブログ。
しかし、セミリタイアした人間の文献紹介なんて価値があるのか?

CPPを測定するときのA-lineの高さ

2018年06月14日 | 神経
McNett MM, Bader MK, Livesay S, et al.
A National Trial on Differences in Cerebral Perfusion Pressure Values by Measurement Location.
Neurocrit Care. 2018 Apr;28(2):221-228. PMID: 29067632.


フラットにしていれば関係ないけど、ICPが高い患者さん(まあそれ以前に挿管されている患者さんはみんな)は座っているから、A-lineとICPのゼロ点の高さが異なる。それだとCPPがちゃんと計算できないから、ICP患者さんではA-lineも耳の高さにしよう、という意見がある。

オーストラリアにいた時に、コンサルタント(専門医のことね)の中で一人だけそうする人がいて、へーそういう考え方があるんだな、と思ったのがもう20年近く前。

未だに、その時と議論の内容が同じ。
進歩するには、CPPは重要か、重要ならその閾値は、という研究が進まなくてはいけなくて、ICPに意義はあるかどうかで議論がある状況では、進歩しないのも仕方ないか。
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SAH後の痙攣予防の期間

2018年06月13日 | 神経
Human T, Diringer MN, Allen M, et al.
A Randomized Trial of Brief Versus Extended Seizure Prophylaxis After Aneurysmal Subarachnoid Hemorrhage.
Neurocrit Care. 2018 Apr;28(2):169-174. PMID: 28831717.


84例の1施設RCT。レベチラセタムをSAH発症後3日投与するか退院するまで投与するかで比較。痙攣は3例と1例に発生(p=0.2)。痙攣が起こったほとんどの症例で、CTでSAH以外の異常が認められていた。神経予後は有意に短期群で良かった。

早期の痙攣は予後の悪化と関連がない。
抗痙攣薬は神経の回復に悪影響を与える。

という可能性が以前から言われていて、でもほぼすべての脳損傷(頭部外傷、脳梗塞、脳出血)で予防的抗痙攣薬についてのちゃんとした研究がない、はず。
そんな中、1施設とはいえRCTが行われて、やっぱり予後に悪影響があるかもという結果を示した研究で、ちょっと意義深い。ピュアなSAHでは短期で十分かも?そもそも不要かも?
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DM患者の血糖コントロール

2018年06月12日 | その他
Luethi N, Cioccari L, Biesenbach P, et al.
Liberal Glucose Control in ICU Patients With Diabetes: A Before-and-After Study.
Crit Care Med. 2018 Jun;46(6):935-942. PMID: 29509570.


DM患者の血糖のターゲットは、ちょっと高めの方がいいかもね、というbefore-after研究。

この話題は以前からチラホラ出ている。どれも普通の観察研究だったんだけど、ついに多施設のbefore-afterでもそういう結果になっちゃった。

ぐるっと回って、やっとこさ180で良いよねっていうことになったのに。
まだしばらく血糖の話題は続きそう。

これは単なる直感だけど、DMではターゲットは高めにしましょうという結論に終わる気がしている。
単なる直感ですけど。
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敗血症の臓器障害と長期予後

2018年06月11日 | 感染
Schuler A, Wulf DA, Lu Y, et al.
The Impact of Acute Organ Dysfunction on Long-Term Survival in Sepsis.
Crit Care Med. 2018 Jun;46(6):843-849. PMID: 29432349.


約3万例の敗血症患者を中央値で2年以上追跡、急性期の臓器障害と長期の死亡率との関連を調査。
臓器別に見ると、神経はすごく長期予後と関連があって、肝臓はちょっとあって、凝固と腎臓はあまり関係なくって、呼吸と循環は臓器障害がある方が予後がいい。

読み込めば違う印象を持つかもしれないけど、ざっと読んだ限りでは不思議な結果。
多変量解析だからお互いに潰しあって、こんな結果になるのかしら。さすがに、おお呼吸不全と循環不全があるから長期予後はいいな、嬉しいな、と思うべし、ということではないだろう。

それよりも、ちょっとどうかしらと思ったのは。
AKIは短期予後だけでなく長期予後も悪い。その理由は一旦は腎機能が改善しても数年でCKDが発生するから。
ということになっているけれど。
それって、投入する因子によって変わるんじゃないだろうか、という疑問。
臨床への影響はないし、悩んでも仕方のないことだから、考えるだけ時間の無駄かもしれないけど。
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ARDSにステロイドはねー。

2018年06月10日 | 呼吸
今月号のCCMにこの話題が2つ。

Meduri GU, Bridges L, Siemieniuk RAC, et al.
An Exploratory Reanalysis of the Randomized Trial on Efficacy of Corticosteroids as Rescue Therapy for the Late Phase of Acute Respiratory Distress Syndrome.
Crit Care Med. 2018 Jun;46(6):884-891. PMID: 29432350.

Meduri先生が、negativeに終わったNEJM2006の研究データを再解析して、ステロイドの減量はもっとゆっくりやらないとダメだということを示した。

Gerard L, Bidoul T, Castanares-Zapatero D, et al.
Open Lung Biopsy in Nonresolving Acute Respiratory Distress Syndrome Commonly Identifies Corticosteroid-Sensitive Pathologies, Associated With Better Outcome.
Crit Care Med. 2018 Jun;46(6):907-914. PMID: 29521713

治りの悪いARDS51例に肺生検をしたら、そのうち19例でステロイドが効きそうな病理像が得られた。

うーん。
Meduri先生、頑張るわー。
でも正直、あまり影響されない。
病理はちょっと、へー、とは思ったけど。

敗血症に対するステロイドもそうだけど、いつまでたっても論争が終わらない。不思議な薬だ。
大量ステロイドが有効→有効どころか有害かも→少量は有効→やっぱり無効→いやいや、効くかもよ

もういい年なので、振り子に付き合ったりする気にはならない。
おお!
という結果が出ない限り、基本的には使わないっす。
というのが個人的見解っす。
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SALTなんか認めません。

2018年06月09日 | 循環
もう一個レターを。

Vincent JL, De Backer D.
We Do Not Appreciate SALT.
Am J Respir Crit Care Med. 2018 May 15;197(10):1361. PMID: 29253347.


かの有名なVincent先生がSALTについて文句を言っている。
ちなみにSALTとは、これこれのpilot study。
簡単に言えば、Vincent先生が、こんな研究やっちゃダメだと怒ってらっしゃって、それに対して著者が返答している。

読んでみての感想は、著者に賛同する点が多い。
Vincent先生、それはちょっと違うのではないですか?

読み比べてみそ。
根拠に基づいた医療とは何ぞや、的なことを考える、良い材料になるのでは。
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ICUにおけるβグルカン測定の経験

2018年06月08日 | 感染
というタイトルの、1ページのレター。

Dagens A, Mughal N, Sisson A, Moore LSP.
Experience of using beta-D-glucan assays in the intensive care unit.
Crit Care. 2018 May 12;22(1):125. PMID: 29751822.


ロンドンの教育病院。3年間で30例にβグルカンが測定され、提出から結果を得るまで平均で5日かかり、6例が陽性で、死亡率は50%だった。

所変われば検査も変わる。
日本では、病院によっては院内での当日測定が可能。慈恵ICUでもクサるほど測っている。

ロンドン、遅れているわー、という感想はダサい気がする。
頻回測定が予後改善につながっているのか、の方が気になる。

昨日紹介した研究などと関連するけど、慈恵ではトロポニンが院内で測定されない。昔からある定性検査(トロップT)しかない。
ちょっとダサいだろ、とずっと思っているけど、測定できるようになったら患者予後の改善につながるんだろうか。逆に無駄な検査や処置や処方が行われちゃったりしないだろうか。

βグルカンやトロポニンのエビデンスはあるけれど。
それなりの数、読んできたけれど。
検査って、思っているより難しくて、そう簡単に意義は語れない気がする。
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術中のバイタルと術後の心筋傷害

2018年06月07日 | 感染
Abbott TEF, Pearse RM, Archbold RA, et al.
A Prospective International Multicentre Cohort Study of Intraoperative Heart Rate and Systolic Blood Pressure and Myocardial Injury After Noncardiac Surgery: Results of the VISION Study.
Anesth Analg. 2018 Jun;126(6):1936-1945. PMID: 29077608.


先日の勉強会で、術中の状態や麻酔内容とPMIの関係についての情報はないのか、という質問があって、あれまちょーど良いわ、と思って紹介。

頻脈と低血圧は術後の心筋傷害と関連あり。まあそりゃそーだわな。問題は、それが治療対象となるかどうか。
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DEXはせん妄を予防するか

2018年06月06日 | 神経
Skrobik Y, Duprey MS, Hill NS, et al.
Low-Dose Nocturnal Dexmedetomidine Prevents ICU Delirium. A Randomized, Placebo-controlled Trial.
Am J Respir Crit Care Med. 2018 May 1;197(9):1147-1156. PMID: 29498534.


2施設100例のRCT。少量のDEXは循環などに影響することなくICU患者のせん妄を予防した。

DEXはせん妄を予防するのか。
DEXはせん妄の罹患期間を短くするのか。
せん妄を予防すると予後は改善するのか。
せん妄を治療すると予後は改善するのか。
DEXは予後を改善するのか。

ARDSの治療と同様、これもここ数年のトピックの一つ。
さあ、どんな結論になるのだろう?

現状で大切なこと。
十分な根拠なしに臨床を変えない。
実は副作用が有害かもしれない。コストは確実にかかる。
高い薬剤で介入しようと思うときは必ず立ち止まること、です。これが歴史から我々が学んだこと。
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テンプレート変更ー2018夏

2018年06月05日 | ひとりごと
暑くなってきたので、涼しい感じのやつにしてみた。

今年はすごく暑いらしい。やだなー。
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