Dr内野のおすすめ文献紹介

集中治療関連の文献紹介が主な趣旨のブログ。
しかし、セミリタイアした人間の文献紹介なんて価値があるのか?

補液反応性とうっ血シグナルの共存

2024年03月10日 | 循環
Muñoz F, Born P, Bruna M, et al.
Coexistence of a fluid responsive state and venous congestion signals in critically ill patients: a multicenter observational proof-of-concept study.
Crit Care. 2024 Feb 19;28(1):52. PMID: 38374167.


補液反応性があるから補液しよー、とか、
補液反応性があるということは溢水ではないはずだ、とか。
そういうことを言う人がいるから、それは本当か検討してみたよ、そしたら溢水シグナルの有無と補液反応性は関係がなかったよ、という研究。

実際そういうことを言う人はいるので、大事な研究だと思いつつ。
それよりも面白いなと思ったのは研究デザイン。
”溢水”とか”うっ血”とかって、まあそれを言ったら”脱水”とかも、極端な場合を除いて診断するのはすごく難しい。ICUにいる間は極端な状況にはならない(はずだ)から、その難しいことをいつもしていることになる。臨床診断ですら難しいのだから、それを研究にする、つまり定義を決めるのはもっと難しい。

で、この研究は”venous congestion"というものを対象としているので定義が必要なのだけど、明確に定義するのではなくて、CVPとか心エコー所見とか、複数の”うっ血”っぽいシグナルを測定して、そのシグナルが陽性になる数が多ければ多いほどよりうっ血の可能性が高くなるという仮定のもので、その陽性シグナル数と補液反応性の関連を検討している。

うまいやり方でしょ。
研究しようと思ったけど定義が難しいから諦めようかな、という時はこういう手法も検討してみては?
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