Dr内野のおすすめ文献紹介

集中治療関連の文献紹介が主な趣旨のブログ。
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重症敗血症におけるβ-ラクタムの持続投与と間欠投与の比較

2024年06月20日 | 感染
これ、やっと終わった。2ヶ月くらい前からずっと準備していて、にも関わらず無駄に緊張し、時間配分も間違えるという散々な結果。
もう忘れます。
で、臨床文献をだんだん読み始めている。
CCR24でたくさん発表されたやつをいくつか読んでみたところ、この2つが気になった。

Dulhunty JM, Brett SJ, De Waele JJ, et al.; BLING III Study Investigators.
Continuous vs Intermittent β-Lactam Antibiotic Infusions in Critically Ill Patients With Sepsis: The BLING III Randomized Clinical Trial.
JAMA. 2024 Jun 12. Epub ahead of print. PMID: 38864155.


Abdul-Aziz MH, Hammond NE, Brett SJ, et al.
Prolonged vs Intermittent Infusions of β-Lactam Antibiotics in Adults With Sepsis or Septic Shock: A Systematic Review and Meta-Analysis.
JAMA. 2024 Jun 12. Epub ahead of print. PMID: 38864162.


結果はご存知の通りとして。
これまで行われた研究と比べて圧倒的に大きなNの研究で、primary outcomeはnegativeだったのに、この文献内でも、メタ解析でも、editorialでも、さらにはpodcastでも、"prolonged influsionやろーぜ〜!”感になっている。特にpodcastなんか(早回しで聞いているので数字とか怪しいけど)、
Deputy editor:「私のところでも1年半くらい前からprolongedでやっている」
メタ解析の著者:「ある調査では60%の施設がすでにprolongedで投与しているので、残りの40%の診療が変わるといい」
みたいな会話をしている。
いやいや、そこまで言い切るの?
しかも、7000例のRCTでギリ有意差なし、ICUや病院死亡率のp値は.035と0.27。もう少し表現はマイルドにするべきでは?

もう一つ気になるのがprolonged / extendedという言葉。
BLING IIIは持続だし、メタ解析の方でも18研究中17が持続投与。つまり単回投与よりも持続投与が良い、ということをこの2つの研究は示しているのに、なぜかタイトルもpodcast内の会話もprolongedになっている。それはちょっと語弊があるのでは。

この二つの研究から言ってよさそうなことは、「持続投与は単回投与よりも少しだけ有効そう。ただし感染症の治癒効果はそれなりに認められるものの、死亡率的には効果があるとしてもわずかで、NNTで50程度。」
臨床導入してもいいし、しなくてもいい、くらいではないか?
ちなみに、メルぺネムは調整後は8時間でダメになるそうなので、1日3回作り直さないといけません。
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