先週はピンとくる文献がなかったので、クエン酸の話でもしようかと。
とりあえず、こんな文献が出てました。
Tiranathanagul K, Jearnsujitwimol O, Susantitaphong P,et al.
Regional citrate anticoagulation reduces polymorphonuclear cell degranulation in critically ill patients treated with continuous venovenous hemofiltration.
Ther Apher Dial. 2011 Dec;15(6):556-64. PMID: 22107692.
長い名前だと思ったらタイの人達。
AKIに対するCVVH(日本で言うところのCHF)の抗凝固剤として、ヘパリンとクエン酸でRCT、10例ずつ。
フィルター前後のミエロペルオキシダーゼ(MPO)やサイトカインの濃度を測定。
その結果、
・CVVH開始6時間後のMPOはヘパリン群でフィルター前<フィルター後、クエン酸では差無し。
・フィルター前(つまり血液中)のMPOは24時間でヘパリン群は変化無し、クエン酸群では減少。
・サイトカイン濃度もクエン酸群で低め。
・フィルター寿命はクエン酸の方が長い。
さて。
クエン酸のCRRTって、全然ご存じないかもしれないので、簡単に説明。
・フィルター前にクエン酸を投与することにより、カルシウムがキレートされ、抗凝固作用を発揮
・血中のイオン化カルシウム濃度を定期的に測定し、低ければカルシウムを補正
・この2つをすることで、体内では抗凝固作用は起こらない
・これまでヘパリンと比較して有意にフィルター寿命が長かった抗凝固剤はクエン酸のみ
というのが基礎知識で、
・好中球の脱顆粒が起こるときはカルシウムが細胞内に流入
・血液がフィルターを通ると好中球は活性化される
・じゃあクエン酸を投与すれば、脱顆粒が抑制され、体にいいかも?
という仮説のもと、この研究が行われ、たしかにヘパリンよりもクエン酸を投与した方がMPOやサイトカインが低くなった、と。
じゃあ、予後を良くするのか、という話については相反する2つのRCTがあって、
Oudemans-van Straaten HM, Bosman RJ, Koopmans M, et al.
Citrate anticoagulation for continuous venovenous hemofiltration.
Crit Care Med. 2009 Feb;37(2):545-52. PubMed PMID: 19114912.
Hetzel GR, Schmitz M, Wissing H, et al. Regional citrate versus systemic heparin for anticoagulation in critically ill patients on continuous venovenous haemofiltration: a prospective randomized multicentre trial.
Nephrol Dial Transplant. 2011 Jan;26(1):232-9. PMID: 20876598.
前者は死亡率を減らす、後者は変えない。
まあ、抗凝固剤でCRRTを必要とするAKI患者の死亡率が減らせたら、びっくりですけどね。
何はともあれ、出血は起こさないしフィルター寿命は長いしで、世界中でどんどん使用されているらしい。
でも日本じゃ使えないじゃん、と思うかもしれないけど、それは間違い。
ちゃんと保険収載されてます。
http://www.e-pharma.jp/dirbook/contents/data/prt/3331401A2029.html
慈恵でも、術直後の患者さんとかに24-48時間限定でボチボチ使用中。
ただし、高ナトリウム血症とアルカローシスのため、日本の現状では長時間の使用は難しいけど。
海外では、クエン酸専用の透析/置換液(バッファーやカルシウムが入っていないやつや、クエン酸そのものをバッファーにしたもの)が売られていて、そんな副作用はなかなか起こらない。特にクエン酸がバッファーだと、前置換でCVVHをすれば抗凝固剤の代わりもしてくれるので、手間が省けるというオマケ付き。
日本でもそんな商品が出てきたら、便利なのにねー。
ちなみに、
CRRT中の抗凝固剤、および日本流のナファモスタットについては、INTENSIVISTのバックナンバーをご参照に。
INTENSIVIST 2010年2号:CRRT
7. 抗凝固剤:その使い方とエビデンス 江木 盛時 岡山大学医学部 麻酔・蘇生学 集中治療部
【コラム】CRRT 中の抗凝固剤としてのナファモスタットメシル酸塩 内野 滋彦
とりあえず、こんな文献が出てました。
Tiranathanagul K, Jearnsujitwimol O, Susantitaphong P,et al.
Regional citrate anticoagulation reduces polymorphonuclear cell degranulation in critically ill patients treated with continuous venovenous hemofiltration.
Ther Apher Dial. 2011 Dec;15(6):556-64. PMID: 22107692.
長い名前だと思ったらタイの人達。
AKIに対するCVVH(日本で言うところのCHF)の抗凝固剤として、ヘパリンとクエン酸でRCT、10例ずつ。
フィルター前後のミエロペルオキシダーゼ(MPO)やサイトカインの濃度を測定。
その結果、
・CVVH開始6時間後のMPOはヘパリン群でフィルター前<フィルター後、クエン酸では差無し。
・フィルター前(つまり血液中)のMPOは24時間でヘパリン群は変化無し、クエン酸群では減少。
・サイトカイン濃度もクエン酸群で低め。
・フィルター寿命はクエン酸の方が長い。
さて。
クエン酸のCRRTって、全然ご存じないかもしれないので、簡単に説明。
・フィルター前にクエン酸を投与することにより、カルシウムがキレートされ、抗凝固作用を発揮
・血中のイオン化カルシウム濃度を定期的に測定し、低ければカルシウムを補正
・この2つをすることで、体内では抗凝固作用は起こらない
・これまでヘパリンと比較して有意にフィルター寿命が長かった抗凝固剤はクエン酸のみ
というのが基礎知識で、
・好中球の脱顆粒が起こるときはカルシウムが細胞内に流入
・血液がフィルターを通ると好中球は活性化される
・じゃあクエン酸を投与すれば、脱顆粒が抑制され、体にいいかも?
という仮説のもと、この研究が行われ、たしかにヘパリンよりもクエン酸を投与した方がMPOやサイトカインが低くなった、と。
じゃあ、予後を良くするのか、という話については相反する2つのRCTがあって、
Oudemans-van Straaten HM, Bosman RJ, Koopmans M, et al.
Citrate anticoagulation for continuous venovenous hemofiltration.
Crit Care Med. 2009 Feb;37(2):545-52. PubMed PMID: 19114912.
Hetzel GR, Schmitz M, Wissing H, et al. Regional citrate versus systemic heparin for anticoagulation in critically ill patients on continuous venovenous haemofiltration: a prospective randomized multicentre trial.
Nephrol Dial Transplant. 2011 Jan;26(1):232-9. PMID: 20876598.
前者は死亡率を減らす、後者は変えない。
まあ、抗凝固剤でCRRTを必要とするAKI患者の死亡率が減らせたら、びっくりですけどね。
何はともあれ、出血は起こさないしフィルター寿命は長いしで、世界中でどんどん使用されているらしい。
でも日本じゃ使えないじゃん、と思うかもしれないけど、それは間違い。
ちゃんと保険収載されてます。
http://www.e-pharma.jp/dirbook/contents/data/prt/3331401A2029.html
慈恵でも、術直後の患者さんとかに24-48時間限定でボチボチ使用中。
ただし、高ナトリウム血症とアルカローシスのため、日本の現状では長時間の使用は難しいけど。
海外では、クエン酸専用の透析/置換液(バッファーやカルシウムが入っていないやつや、クエン酸そのものをバッファーにしたもの)が売られていて、そんな副作用はなかなか起こらない。特にクエン酸がバッファーだと、前置換でCVVHをすれば抗凝固剤の代わりもしてくれるので、手間が省けるというオマケ付き。
日本でもそんな商品が出てきたら、便利なのにねー。
ちなみに、
CRRT中の抗凝固剤、および日本流のナファモスタットについては、INTENSIVISTのバックナンバーをご参照に。
INTENSIVIST 2010年2号:CRRT
7. 抗凝固剤:その使い方とエビデンス 江木 盛時 岡山大学医学部 麻酔・蘇生学 集中治療部
【コラム】CRRT 中の抗凝固剤としてのナファモスタットメシル酸塩 内野 滋彦
藤原と申します。
現在、私は、維持透析をクエン酸含有重炭酸(味の素ファーマ・商品名カーボスター)の透析液にて治療をうけている患者です。
酸塩基平衡是正にも優れており、イオン化カルシウムも5時間でのHD、HDFは血圧の低下などもなく、クエン酸のキレート作用によりFeなどを錯体するため貧血下のEPO投与においても鉄が効率よく使われているようです。
クエン酸によるカルシウムのキレートが抗凝固作用を発揮していることは救急の現場においての出血を防ぎ予後をよくしていることは、素晴らしいと思いました。
上記の、クエン酸含有重炭酸透析液(カーボスター)がクエン酸の量的にヘパリン等、無しで使用できるかわかりません。どうお考えになられますでしょうか?
日本の透析においてもサイトカインの減少fetuimuAなどの動脈硬化因子の減少の文献もあるようです。
これからも、宜しくお願いいたします。