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Dr内野のおすすめ文献紹介

集中治療関連の文献紹介が主な趣旨のブログ。
しかし、セミリタイアした人間の文献紹介なんて価値があるのか?

院内心停止蘇生時の遠隔医療による集中治療医へのコンサルテーション

2022年08月18日 | ICU・システム
Peltan ID, Guidry D, Brown K, et al.
Telemedical Intensivist Consultation During In-Hospital Cardiac Arrest Resuscitation: A Simulation-Based, Randomized Controlled Trial.
Chest. 2022 Jul;162(1):111-119. PMID: 35063451.


院内心停止のCPRのシミュレーションにおいて、ICUの医者が遠隔から蘇生チームに参加するかどうかでRCT。蘇生率には影響はなかったが、心停止の原因はより高頻度に同定された(69% vs. 29%)。

ざっと読んだ限り、蘇生チームは病棟医がリーダーになっているようだ。シミュレーションだし、するべきことをすれば蘇生率には影響しないことは想像できる。
それよりも、診断率が全然違うのが興味深い。

昔から、ICU医師にもっとも必要なことの一つは診断能力だと思っている。
実際、自治でも慈恵でも、カンファレンスで話されることの相当の割合は”患者さんに何が起こっているか”だ。

この研究は、そのことをなんとRCTで示してくれた。
研究の限界(Nが小さい、実際の臨床の場ではない、誰かが考えた病態の診断なので単純、など)は当然あるとしても、とても面白い研究だと思う。
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術中の麻酔科医の申し送りは患者予後を悪化させない。

2022年06月12日 | ICU・システム
Meersch M, Weiss R, Küllmar M, et al.
Effect of Intraoperative Handovers of Anesthesia Care on Mortality, Readmission, or Postoperative Complications Among Adults: The HandiCAP Randomized Clinical Trial.
JAMA. 2022 Jun 4. Epub ahead of print. PMID: 35665794.


申し送りって、以前からずっと興味がある。ICUでは申し送りが行われまくるから。
探してみたら、過去ログもこんなにあった。
集中治療専門医の申し送りの質
胸部外科術後のOP室からICUへの申し送り
慈恵ICU勉強会 190305
術中の麻酔科医の交代と患者予後
1950年代からの脱却
申し送りの未来

この研究では、特に申し送りにルールは作らず、施設にもプロトコルとかはなかったのだけど、予後に影響を与えなかった。
ICUの申し送りはどうだろう?
以前の慈恵にも今の自治にも申し送りにプロトコルはない。それで情報の欠損が起こるかどうかというと、たまに起こる。それが患者予後に影響するかというと、したんじゃないかな?と思うことはある。
これが、ICUと手術室の違いなのか、申し送りの質の施設間差なのか、測定可能なほどの差はないのか、気のせいなのか、は分からない。
どんな申し送りがいいのかずっと考えているけど、今のところ名案もない。

うーん、まとめられなかった。ごめんなさい。
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日本の病院のICUベッド数(R2年度)

2022年04月21日 | ICU・システム
以前書いた記事
気がついたら、厚労省のデータが更新されR2年度のデータが出ていたので、再計算。

なお、「ICU」というものを、
・特定集中治療室管理料 1 - 4
・救命救急入院料 2 or 4
・小児特定集中治療室管理料
のどれかを算定している病床と定義した。
()の中はH30年の数字。

・ICUは601(←625)の病院に760(←794)病棟、7015(←7204)病床あった。
・ICUのある病院の全病床数のうちのICUベッド数の割合の平均:2.36%(←2,35)。
・人口10万当たりのICUベッド数:5.71床(←5.70)

次に、ICUのベッド数が多い病院トップ10。


病床数が200以上ある病院のうち、bed_ratioが高い病院トップ10。


循環器や小児など専門病院が含まれるので、対象を500床以上の病院に限定(総合病院であろうと仮定)。


以上。
H30年からR2年で、ICUベッド数は人口減少と同じ程度に減少。
いくつかの大学病院でICUが増設され、順位に変動あり。
2年で一極集中が少し進んだということか。
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政府によるICU入室基準の変化と、臨床実践・転帰・ICU病床占有率との関連

2022年03月26日 | ICU・システム
Ohbe H, Goto T, Matsui H, Fushimi K, et al.
Associations of Government-issued ICU Admission Criteria with Clinical Practices, Outcomes, and ICU Bed Occupancy.
Ann Am Thorac Soc. 2021 Nov 23. Epub ahead of print. PMID: 34813412.


先日の集中治療医学会の学術集会で発表された研究。
2014年度のICU患者基準の変更前後で、
・モニタリングが増えた。特にA-lineの利用率はすごく増えた。
・病院死亡率はまったく変化なし、ICU滞在日数とコストは増えた。

素晴らしい研究。
DPCのデータを使った研究って、「いやーこれはちょっと。。。」と思うのがチョコチョコある。少なくともICUの研究で、「〇〇の病態における△△の有効性」的な研究は、単にNが大きいだけで、どれも無理がある。
それらに比べ、これはDPC研究はかくあるべしという感じで、とても好き。
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集中治療医学会の理事会における性別の分布

2022年03月25日 | ICU・システム
Ravioli S, Moser N, Ryser B, et al.
Gender distribution in boards of intensive care medicine societies.
J Crit Care. 2022 Apr;68:157-162. PMID: 34836749.


ESICMに関連のある各国の集中治療医学会の理事会における性別の分布を調査。女性が理事長だった割合は15%、理事会のメンバーのうち28%が女性だった。
理事会メンバーの女性の占める割合は、
南アメリカ:46%
北アメリカ:42%
ANZ:35%
ヨーロッパ:31%
アフリカ:21%
アジア:10%
だった。

アカンわ、アジア。

それ以前に、日本の集中治療医のうちの女性の占める割合、低くない?
JIPADのワーキンググループメンバーなんか、20人全員男性。2の20乗分の1って100万の1なんですけど。

関連のある過去ログ:
集中治療医の性差
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呼吸不全はICUに来た方がいいが敗血症は来ない方がいいって言われたらどうします?

2022年03月10日 | ICU・システム
Anesi GL, Liu VX, Chowdhury M, et al.
Association of ICU Admission and Outcomes in Sepsis and Acute Respiratory Failure.
Am J Respir Crit Care Med. 2022 Mar 1; 205(5):520-528. PMID: 34818130.


救急外来にやって来た、ラボデータ的にそれなりに重症だけど、昇圧剤は不要な敗血症と挿管が不要な呼吸不全患者についての多施設研究。
ICUに来た患者と病棟に行った患者を比較。ICUの敗血症患者の死亡についてのオッズ比は1.48、呼吸不全は0.75。

さて、どう解釈しよう。もしくはどう裏を読もう。

ディスカッションでは、
・敗血症がICUに来ると、よけいな補液をしたり、動かさなかったりする。
・呼吸不全がICUに来ると、呼吸ケアのレベルが高かったり、NPPV / HFNCを適切に使ったりする。
からこういう結果になったのでは、と。

初めは、何か「裏」があるのでは、つまり研究手法や解析方法によって生まれた結果なのでは、と考えてみたのだけど、だんだんこのディスカッションの説明に賛成したくなってきた。特に、「有害な補液」と「レベルの高い呼吸ケア」をICUでは提供される可能性がある、というのはその通りじゃなかろうか。

いっっっつも思うのだけどさ、
その補液、本当に必要かい?
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中国がICUリサーチで本気出すとこうなる。

2022年01月26日 | ICU・システム
Li Z, Ma X, Gao S, et al.; China National Critical Care Quality Control Center Group.
Association between hospital and ICU structural factors and patient outcomes in China: a secondary analysis of the National Clinical Improvement System Data in 2019.
Crit Care. 2022 Jan 21;26(1):24. PMID: 35062981.


ICU死亡率とかVAPの頻度とか公立病院の方が予後がいいとか患者看護比は予後と関連があるとか、
結果自体は普通のことで驚きはないけど。
Nが笑える。2820病院ですって。

AIもそうだし、なんでもかんでも中国が世界一になりつつあるけど、集中治療の臨床研究も、きっとそうなるのでしょう。
人口は3000万に満たないのにNが7000とかあるRCTをバンバンやるANZICSはすごいけど、数で勝負したら勝てるわけない。
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ICUのスラング

2021年12月20日 | ICU・システム
BMJのクリスマス版より。
あるイギリスのICUで半年かけて集めたのだそうだ。

Hodgetts JM, Mohamed A, Lewis S.
Just a smidge, or a bridge too far? Slang use in the ICU.
BMJ. 2021 Dec 16;375:e067900. doi: 10.1136/bmj-2021-067900. PMID: 34916214.


日本語にもあるのかな。ちょっと思いつかない。
テレビのリモコンを自分で操作して見たいチャンネルを選べるくらい意識がしっかりしていて筋力のある患者さんを、「テレビ試験陽性」と呼んでいたのだけど、他の人は使ってくれなかった、というのを思い出したくらい。

単純に英語の勉強になるので、冬休みにでもどうぞ。
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ICU患者のfrailtyのスクリーニング

2021年11月24日 | ICU・システム
Darvall JN, Bellomo R, Paul E, et al.
Routine Frailty Screening in Critical Illness: A Population-Based Cohort Study in Australia and New Zealand.
Chest. 2021 Oct;160(4):1292-1303. PMID: 34089741.


ANZICS-APDでは2017年度からclinical frailty scaleの収集をルーチンで開始したそうだ。
その結果、23万人中19%がICU入室前にfrailtyの状態にあり、病院死亡率は有意に高かった(16% vs. 5%)。Frailtyの情報をAPACHE IIIjに追加すると、予測死亡率のAUROCが0.868から0.882に改善した。

入院前のfrailtyが予後に強く関連することは容易に想像できるし研究も多いけど、それをルーチンに多施設で収集するとなると結構大変。
例えば、JIPADではデータを事務の人がカルテを見ながら収集している施設が少なくないのだけど、カルテを読み込まないとfrailtyの情報は出てこないから、この項目だけで収集にかかる時間が数分長くなってしまう。ちょっと現実的とは言い難い。情報が見つからないこともきっと珍しくないだろうし。

でも相当パワフルな予後予測に関連する因子(16% vs. 5%ってマジか!)だし、本当ならデータベースにはとっても必要。
さて、いつか収集を開始できるだろうか?
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集中治療医としてのキャリアを終えての教訓

2021年11月16日 | ICU・システム
ちなみに、僕のことじゃないでーす。

Curtis JR.
Life lessons after a career in intensive care medicine.
Intensive Care Med. 2021 Nov 8. PMID: 34748040.

(タイトルをDeepLで直訳。上手いこと訳すなー。)

ICUで30年働き、今年ALSを発症した人が書いた文章。

・好きな人と働く
・しっかり休みを取る
・家族を大切にする
・末期患者であるかのように日々を過ごす
この4つが"Life lessons after 30 years in intensive care"であると。

よく聞く話ではあるけど、重い。
現状に疑問を感じている人、一生懸命働きすぎている人は、一読の価値ありと思います。
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