徒然なるままに…なんてね。

思いつくまま、気の向くままの備忘録。
ほとんど…小説…だったりも…します。

ぶらり…旅…③ 札幌編→変…?

2006-12-21 17:12:00 | ぶらり…旅
 以前…札幌でアイスクリームの食べ比べをした…と話してくれたクラスメートがいた…。
そのせいかどうかは知らないけれど…友達の予定に入っていたようだ…。
札幌で二種類のアイスクリーム…何れもバニラを食べてみたけど…どちらもまあまあ美味しかった…。

 何かどうでもいいみたいだって…?
そういうわけでもないんだけど…。

 何で感動が薄いのかというと…それがもっと昔なら…わあ…札幌にはこんな美味しいアイスがあったんだぁ…ってことになったんだろうけど…すでに高級を謳った既成のアイスが他の地方にも出回っていて…それほど味にめちゃくちゃ差があるとは感じられなかったからだ…。

 むしろ…今のようにご当地ものが流行っている時代の方が…それぞれの土地で美味しいアイスにありつけると思うよ…。

 
 さて…ちゃんと観光もしてきたんだ…ってとこも話さなきゃね…。
北海道庁旧本庁舎(赤れんが庁舎)という重要文化財の建物を見に行った…。
現在は資料館みたいになっているけど…今でも道庁の会議室として使われている現役さん…。
 1888年に建てられたアメリカ風ネオ・バロックという様式の建物。
1909年に火災にあって建てなおされた二代目なんだそうだ…。
お城みたいで綺麗な建物だよ…。

 不思議だと思わない…?
この時代…明治21年頃と言えば…日本はまだヨーロッパに目を向けていたのに…この建物はアメリカ風なんだよ…。

 1800年代の西洋建築の建物は…ほとんど西欧系で…ゴシック様式を取り入れたものが多いような気がするんだけど…。
ネオ・バロック様式の建物は1900年代には幾つか建てられている…。

 建てなおされてからネオ・バロックになったわけじゃなくて…もともとだったようだね…。
他の地方に比べると北海道はまだ若い都市だったから…新しいものを取り入れたんだろうか…?

 建築関係の知識は全然持ち合わせてないから真相はよく分からないけれど…ひょっとしたら…これからの町だから何処よりも新しく…なんて思ってたかも知れないね。
当時の人の意気込みを考えたりすると…なんか面白いじゃない…?


 それから時計台を見て…さらに観光スポットの市場へ…。
めちゃくちゃたくさんの店が並んでいて…どこで何を買おうかと迷う…。
威勢のいい掛け声が響く中…中部地方でタクシー運転手をしていたことがあるというおじさんの居る店で買い物…。

 紅鮭一本と筋子を買って…実家へ送って貰った…。
おじさんから聞いたところでは…鮭は釧路に揚がるものが一番だという話だった。

 さて…土産を送ったからにはオカンに連絡しておかなければならない…。
何しろ生ものだからな…。

出発してから初めて電話を入れた。

 「なぁんだ…あんた生きとったんかね? 」

オカンの第一声…。
生きとるに決まっとるだろうが…電話しとんのやぞ…。
勝手に殺すな…。

 「なしのつぶてだから…何処ぞでのたれ死んどれせんか…と思っとったわ。 」

死んどりゃテレビで…行き倒れ発見…のニュースがやるわい…。

 「生きとるなら電話くらいしなさいか! 」

ま…気が向いたら…な。
そう言いたいところを我慢の子…。
下手にしゃべって借金に利息をつけられたらかなわん…。

 「何処に居るの? 」

札幌じゃ…明日は何処行くか分からんけどな…。
何しろ計画なしの気まま旅…。
鮭送ったから…と…やっと用件を言って電話を切った。


 後から聞いた話じゃ…あの紅鮭…実家の出刃では歯が立たず…のこぎりで切ったろか…と思うくらいさばくのが大変だったんだそうだ…。
後年…自分で鮭をさばくようになって…鮭はやっぱり切り身を買った方がいい…としみじみ思う…。
鍋にすると…あの鮭の頭は最高に美味しいんだが…労力を考えると…ね。

 ね…ちゃんと観光してたでしょ…?
えっ…どっか違うって…?

う~ん…どこか…なぁ…?





黒糖ドーナッツだよん…。

2006-12-20 12:11:27 | 簡単手抜き料理
meko母さんへ…うちのオリジナルです…。
サータアンダギーのつもり…なんだけど不細工だね…。

自分は本当の作り方を知らないので…まあこんな感じ…ってところで手を打っています。

久しぶりに作ったら…焦がしちゃった…。
黒糖ドーナッツなので色黒…。
ぱっくり開いたお口が可愛いでしょ…。

次代おばあとしては…嫁…婿に貰ってもらえそうかな…?

ぴーさん…おつさん…おやじさん…ひとつ…いかがっすか?

ぶらり…旅…② 温根?編→変…?

2006-12-19 22:40:00 | ぶらり…旅
 これは…多分…多分ね…温根だったと思うんだよ…。
北キツネ牧場…というところを訪ねた…。
近くにもうひとつ北海道きつね村があるそうなんだけど…おそらくこっち…。
間違ってたらごめんなさいね…二十年以上も前の話だから…。

また…キツネかい()!…って怒らないで…よ。

 キツネ大好きなんだけど…動物園か映画でしか見たことなくてさ。
友だちが行くって決めてから…ずっとわくわくしてたんだ…。
なんたって…あの尻尾がいいじゃないか…。

それまでキツネの牧場なんて聞いたことなかったんだから…。
不思議だったね…。

 何故…不思議かっていうと…キツネには寄生虫を持っているのが居るんだ…。
エヒノコックス或いはエキノコックスと呼ばれる寄生虫でね…肝臓や脳に障害を及ぼすらしい…。
命を失う危険性が非常に大きい感染症だと聞いている…。

 ノネズミなんかに幼虫が寄生しているというから…おそらくはそれを媒介にして成虫が犬やキツネに寄生するんだろう…。
寄生された犬やキツネに触れることで…或いは…糞尿から人間にも経口感染するんだよ…。

 野生のキツネにみだりに近付いてはいけない…のは当たり前で…そのキツネをたくさん飼っている牧場があるっていうことが非常に興味深かったわけ…。

 牧場の出入り口付近にはちゃんと手洗い場が設けてあって…感染防止のために必ずここで手洗いをするように…というような内容の注意書きがしてあった…。

 鉄柵を挟んでのご対面…やっぱり可愛い…なぁ。
大好きなオオカミ相手とはまた違った感覚で見ているのだけど…。

 中に白いキツネのコーナーがあって…何匹か白いキツネが居た…。
これだけたくさん居るっていうのは…アルビノってわけではなくて…そういう種類なんだろうね…。

 もしくは…冬毛が白いとか…さ…。
アルビノなら眼が赤いんじゃないかな…。
 その白狐の目が赤かったって記憶はないんだ…。
う~ん…赤いのも居たのかもしれないけど…どうだったかなぁ…。
頼りないなぁ…この齢で…もう…惚けたんかなぁ…。

ごめんね…。
キツネが好きだって言うわりには知識がなくて…。

 牧場内には随分たくさんのきつねが飼われていた…。
環境も…まあ…なんとなく自然っぽい感じにはなってたけど…野生じゃないってのは…すぐ分かる…。

逃げないもんね…。 人間を怖がらないし…。
餌くれるからなぁ…人間が…。

でも…まあ…可愛かったからいいや…。
尻尾が特に…ね。

こうなったら…野生の鹿…見たい…!
見られると…いいな…!

最後にちゃんと手を洗って…。
キツネ…バイバイ…またね…。

 今…生きてここに居るってことは…まあ…感染しなかったからだね…。
人間に飼われているあのキツネたちが寄生虫を持ってたかどうかは分からないけれど…予防は大切…。

ところ変われば…寄生虫も変わるってお話…。

えっ…全然…旅行記になってないって…?

…ごめんね…。



ぶらり…旅…① 函館編→変…?

2006-12-18 20:04:00 | ぶらり…旅
 かれこれ…二十年以上前になるか…ぶらっと旅に出たことがある…。
前日か前々日くらいに友だちから行かないか…と誘われて…じゃ…行こうか…ってな具合で決めてしまった…。

オカン…明日…北海道行って来るわ…。
金貸して…。

あっそ…行ってらっしゃ~い…。
十一でいかが~?(十日に一割の利息…だよ。)

そいつは暴利だぁ…元金しか返さんぜぇ…。

あっけないくらい簡単…?に許可を貰って出発…。
勿論…後からちゃんと返済したってば…オカンは甘くないんだよ…。

 行き先は北海道…それ以外に何処と決めていたわけではない…。
寝台列車に乗って青森へ行き…青函連絡船に乗って北海道へ渡った…。
話には聞いていたけど…列車の寝台のめちゃくちゃ窮屈なこと…半身起き上がったら頭打ちそうだった…。

 連絡船だから…当然のように最初の土地は函館…。
何しろ自分は北海道なんて始めてだし…何処にどんなものがあるってこともまったく知らない…。
行く先の予定はその都度…友だちが決めてくれるので…ただ…それに従うだけ…。

 昼中…レンガ造りの建物なんかを見て周り…素泊まりの宿だけ確保して…函館山へ夜景を見に行った…。
ロープウェイに乗って…山頂へ…。
冬の終わり頃で…とにかく…寒かった…。

夜景より何より…自分は売店のおばちゃんの話が興味深かった…。

少し前まではこのあたりにもキツネが居たんだけどねぇ…この頃では姿を見せなくなっちゃったねぇ…。

そっかぁ…北海道でもそうなんかぁ…。

 何しに行ったか…北海道…。
もっと見るものがあったでしょうに…。
 ほらほら100万ドルの夜景はどうなったの…?
綺麗だった…ってか…夜景ってそんなに何処でも変わらないと思うから…あんまりそこのだって記憶がないんだよね…。

函館の記憶が消えたキツネとは…まったくどうしようもない頭だね…。

 あ…もうひとつ…どでかいカレイ…まるのまんまの唐揚げを食べた…。
迫力だったな…。

 ちょっと前に作ってみようと挑戦してみたんだけど…家庭用の油鍋では小さ過ぎて大苦戦だった…。
こっちで手に入るずっと小さいカレイだったのに…それでも鍋に納まらない…。
半分ずつ揚げてやっとこさっとこ…。

 おまえ…本当は何見てきたんだ…って?
いやぁ…申しわけない…なんせ二十年も前のことで…。

ちゃんとトラピスト教会など観光にも行って参りましたです…はい…。

てへへ…。 








うさぎの居た森

2006-12-17 21:47:00 | 生き物
 毎日天気が悪いので部屋中に洗濯物が干してある…。
もう少し気温が低ければ暖房を入れるけれど…それほどでもないのでよけいに始末が悪い…。
 
 部屋干し用の洗剤を使っても無駄だということが分かった…。
におうものはにおうんだ…。
やっぱりお日さまには敵わないね…。

 そろそろ…こちらでも雪が舞いそうなものなんだが…温暖化のせいか昔ほどは降らなくなった…。
過ごし易いと言えば…その通りなんだけどね…。


 雪が積もるといつも…犬を連れて森へ入った。
寒くなると自分の尻尾をお尻の下に敷くほど寒がりな犬だけれど…遊びに行くのは大好き…。 
雪の中を喜び勇んで走り回る…。

 森の少し開けたところで鎖をはずしてやった。
当時は…犬を放してはいけないなどという決まりがなく…人の居ない広いところでは自由に遊ばせることもしばしばあった。

 狩猟の季節なので森の奥の方には行けないが…森の入り口から近い辺りでも十分遊べた。

 犬が自由に駆け回っている間…雪景色を眺めながら散策する…。
雪国ではないから積もっているとは言ってもそれほど深い雪ではない…。

それでも辺りは白く静寂な世界…時折…鳥の声が聞こえる他は雪を踏みしめる足音が響くだけ…。

 雪の多い地方では生死に関わるものだから…こんな悠長なことを言ってられないんだろうけれど…めったに降らないこの土地では雪も楽しむことができる…。
申しわけないような贅沢な時間だ…。

 しばらく歩いて…いつものように犬が寄ってこないことに気が付いた…。
臆病者だから…放してもすぐに飼い主の傍に戻ってくるのに…足の傍をすり抜けるようにして駆けていくのに…。

 犬の名前を呼んでみる…。
が…寄って来ない…。

 仕方なく…元の場所へ戻ってみる…。
足跡を辿ってみると…藪の中へ続くところで途切れていた…。

どうやら…藪の中へ入り込んだらしい…。

 よく見ると…犬の足跡だけではない…。
小さな足跡が点々としている…。

うさぎだ…。

犬はうさぎを追って藪の中へ入ったのだ…。
どおりで…戻ってこないわけだ…。

 この森へ入った時には…もう…姿は見えなかった…。
うさぎは敏感だから人間に気付いて逃げ出したんだろうけど…犬の鼻には敵わない…。

 跡を追って行った姿を想像する…。
運動神経の悪い犬…だから…到底追いつけやしないな…。
…思わず笑みがこぼれた…。

白い世界に…犬とうさぎ…藪の中を追いつ追われつ…。

 突然…まったく別の方からハアハアと犬の息遣いが聞こえてきた…。
全身の毛に白い粉をふきながら…白い息を吐いて駆けて来る。

森の中をぐるっと回ってきたのかい…?

 犬がすね擦りして逃げようとするのを捕まえた…。
ちょっと不満げ…。 
もっと遊びたいのに…とでも…思っているのかも知れない…。

 帰るよ…あまり奥まで行くと…おまえが銃で撃たれてしまうからね…。
それに…うさぎが気の毒だから…さ…。

 もう一度…藪の方に眼を向ける…。
チラッとでも姿を見せてくれないかな…。

しんと静まり返った森の中…。
細かな雪がちらちらと舞い始める…。

そんな奇跡は…起こらないね…。
…ほんの少し頬が緩む…。

帰ろう…。

 鎖を繋いで森を出る…。
森の外は日常の世界…止まった時間が動き出す…。



続・現世太極伝(第百五話 捻じ曲げられた空間)

2006-12-16 16:48:00 | 夢の中のお話 『続・現世太極伝』
 若手のHISTORIANをひとりふたり眠らせて…その能力を封じたところで…丘の中腹辺りからいきなり気の砲弾が飛んできて目の前の家屋を貫いた…。

 仲根も亮もその凄まじさに呆気にとられて串刺しになった家屋を見つめた。
中には住人も居るはずだが…気付いていないのか…声もしない…。

まさか…こんなに派手にぶっ壊れてんのに…気付かないはずねぇだろ…。

 「この町…妙に…静かですよね…。」

亮があたりを見回しながら言った。

 そう…町の中に入ってからかなり時間が経っているのに…HISTORIANと発症者の他には人っ子ひとり見当たらない…。

通りにも車一台走っていない…。
まるで町全体が閉鎖された空間の中に存在するかのようだ…。

 「町全体を封印して…出入りができないようにしているかもしれない…。
おそらく…住人の意識も操作しているんだろう…。 」

 そう言って仲根は住居のひとつを覗き込んだ…。
人が居ないわけじゃないもんなぁ…。

町全体を…そんなことができるんだろうか…と亮は思った。

 「この町の住人たちは…自分の周りで何が起こっているのか…まったく気付いていない…。
気の砲弾が壁をぶち抜いても…ひどい風だ…くらいにしか感じられないんだ…。」

 家は修理すりゃぁ良いとして…人間に当たっちゃったらどうするんだろう…。
そんな不安が亮の頭を掠めた…。



 吾蘭はどんどんボルテージを上げている…。 
北殿や子安さまだけでなく輝にもそれははっきりと感じられた…。
小さな身体の中にどれほどのエナジーが充満しているのかは分からないが…少なくとも並みではない…。

もし…歯止めの効かない力が暴発したら…。

輝の胸を不安が過ぎった。

 「子安さま…クルトとケントを別の部屋に避難させた方がいいのでは…? 」

にこにこと吾蘭の方を見つめている子安さまに向かって輝は訊いた…。

 「そうですねぇ…。 迷うところですね…。
ふたりの姿が見えなくなると…アランがパニックを起こすかもしれませんから…。
そうなってはかえって危険ですし…北殿…どういたしましょうか…? 」

輝の問いには直接答えず…子安さまは北殿に伺いをたてた。

 「心配なら…輝さん…ケントだけ連れて母屋の方で様子を見てたらいいわよ…。
アランとクルトについては…これから先のこともあるから…行動を観察しておく必要があるの…。 」

 ケントには用はないから…とはっきり言われたような気がした…。
用はないかもしれないけど…自分の子供だけ連れて避難するわけにもいかない…。
輝は途方に暮れた…。


 
 西沢の表面からは姿を消したとは言え…魔物…もとい…滅のエナジーは依然…西沢の中に居るに違いない…。

だけど…なぜ…紫苑の中なんだ…?

 眼の前で繰り広げられる少年と西沢のぶつかり合い…というよりは少年の一方的な攻撃を何ほどのことでもなくかわしていく西沢…を見ながら滝川は考えた…。

あの時か…!

 ノエルが西沢の生命エナジーの基盤を産んだ際に…太極は確かに自分の一部を西沢の中に埋め込んだ…。
勿論…人間はもともと太極の一部ではあるが…普通の人間には備わっていない何かを西沢の基盤と融合させたのではあるまいか…。

紫苑が媒介のノエルを通さず…直接…太極やエナジーたちと話ができるようになったのはそのせいかも知れない…。

 突如…それまで控えていた老人が動き出した。
場数を踏んでいない少年のぎごちない戦いように業を煮やしたようだ…。

 百戦錬磨のこの老人はさすがに少年とはひと味もふた味も違う…。
動きの鈍い少年や仲間に的確な指示を与えながら…自らも戦い…まるで若者のような身軽さを見せる…。
先程まで静かに控えていたのが嘘のよう…。

 「魔物がこの男の中に居るのなら…それはそれで面白い…。
おおいに暴れて貰おうじゃないか…。
奴が人間の中に居る限りは…封じられないものでもない…。 」

 老人が動き出すとHISTORIANは見違えるように統制の取れた戦いっぷりを見せるようになった。
しかも…老人という後ろ楯のある安心感からか…それぞれの力がだんだん増してきたようにも思われる…。
お蔭で…滝川もぼけっと西沢だけを見ているわけにはいかなくなった。

 「あの子と…おじいちゃんと…どちらが上なんだろう…。 」

ノエルがそんなことを呟いた…。

 「じいさんだな…。 力から言っても上だ…。 
ただ…じいさんはトップというわけではないみたいだよ…。
大物には間違いないけれど…。
本物のトップはここに現れていないんじゃないかな…。 」

金井がそう答えた…。

 ふたりの会話が聞こえたのか…少年はいきなりふたりに気の砲弾を浴びせた。
すんでのところでふたりは直撃を逃れたが…煽りで吹っ飛んだ…。

 「あっちゃ~っ! 油断したぁ…。 金井さん…大丈夫? 」

ノエルは腰を擦りながら立ち上がった…。

 「大丈夫だよ…。 パワーだけはあるな…あいつ…。 」

金井も他の連中の攻撃を遮りながら少年に眼を向けた。
少年はまだふたりを睨みつけていた…。


 「冷静になれ…。 おまえは最高指導者だ…。
そう感情的になるでない…。 見苦しい…。 」

老人はそんなふうに…少年を諌めた…。

 「だって…こいつら…僕を馬鹿にしてるんだ…。 」

少年は怒りを抑え難いように老人に食って掛かった…。
やれやれ…もう少し大人になっているかと思ったが…老人は溜息をついた。

 「おまえが要らざる手紙を添えなければ…西沢もここまで深く首を突っ込むこともなかったのだ…。 
この男…妙に好奇心が強いから…あれに惹かれて動き出したようなものだ…。 」

腹立たしげに老人は言った。

 「僕は生まれてからずっとあの話を聞かされて育ったんだ…。 
正しい行いをしているのだから…事実を話すのが当たり前じゃないか…。 」

少年は不服そうに口を尖らせた…。

 そうか…三宅が持ってきた手紙…あれは翻訳じゃなかったんだ。
英文とかなりずれがあったんで…ひどく分かりにくいとは思ったんだが…どおりで…な…。

納得したように滝川はひとり頷いた…。

 「坊や…いい加減…目ぇ覚ました方がいいぞ…。
HISTORIANがしていることは決して正しいことなんかじゃないぜ…。 」

老人に叱られてふくれっ面をしている少年に…滝川はそう呼びかけた。
何だって…と少年は怒りに眉を吊り上げた…。

 「僕等は命懸けで世界中の人たちを護ってやっているんだ…。
理想的な国家を築いて…滅びに向かいつつある人々を救うことが…どうして正しくないんだ…? 」

そう言い返した…。

 「誰が…HISTORIANに護ってくれと頼んだんだ…?
おまえたちに護って貰わなくても…この国の能力者たちが何とでもするさ…。
余計なお世話だよ…。

 勝手にひとの国に入り込んでおいて…英雄気取りは止めてくれ…。
無関係な人を犠牲にして…抵抗する邪魔者も消して…政府に取り入って…この国を思いのままに動かそうなんざ…侵略以外の何ものでもない…。
何処が正しいよ…? 」

滝川は少年にそう問いかけた…。

黙れ!

少年は苛々した面持ちで滝川を見た。

西沢の翼が再び大きく羽ばたいた…。
瞳が完全に少年を捉えている…。 獲物を狙っている眼だ…。

 「坊や…悪いことは言わない…。 仲間を連れて自分の故郷へ帰れ…。
紫苑が本気を出す前に…立ち去れ…。 」

 その忠告には答えず…少年は合図を送った…。
それまで金井とノエルを攻撃をしていたHISTORIANが滝川目掛け…集中攻撃を開始した…。

やれやれ…面倒な…。

 滝川が悠長にもそんなことを思った瞬間…滝川を攻撃していた者たちが四方八方に投げ出され…地面に叩きつけられた。
何が起こったか分からないくらいのスピードで…。

 「紫苑…よせ…。 僕のことは気にするな…。 」

滝川がそう言うと…西沢はチラッと滝川の方に目を向けた…。
が…またすぐに少年の方に向き直った。

 「よく考えろ…坊や…。 
これまで幾度となく同じ過ちを繰り返してきたではないか…。
そのたびに世界は滅んだ…。 無関係な者まで巻き添えにして…。 」

喧しい!

滝川の窘める言葉が終わるか終わらないかのうちに…少年ではなく…老人の方が滝川目掛けてショットガンのように気を炸裂させた…。

 滝川自身は難なくそれを避けたものの…半ば壊れかけていた西沢の理性を見事に吹っ飛ばした…。

お伽さまを攻撃したばかりでなく…恭介にまで牙を剥くか…!

 「世界が滅んだのは我々のせいではない…。 すべて…この男の中に潜む魔物のせいだ…。
我々HISTORIANは常に世の中に貢献してきた…。 危険と犠牲を顧みず他国や他民族のために戦ってきた…。 

 我々がこの世界を治めることによって…すべての人々が幸せになれる…。
アカシックレコードの知恵で…世界に平和を齎すことができるのだ…。 
邪魔をするおまえたちこそが悪だ…。 」

 老人がそう叫んだ…。
まるで少年に考える隙を与えまいとするかのように…。

 突如…轟音とともに…世界が激しく揺れだした…。
地震のように大きく足元がぐらついて…とても立って居られなかった…。
激しい震動のために誰もが地面を転げまわった…。

西沢だけがその場を動くことなく…面白そうに周りを見回していた…。

 ようよう揺れが止まって…身を起こそうとするとめまいのような感覚を覚えた。
身体が平衡感覚を失い…上手く立てなかった…。

 少年も老人も這いつくばった状態で頭を上げてあたりを見た。
滝川や金井…ノエルもそれは同じだった…。

さも可笑しげに魔物の笑みを浮かべながら見下ろしている西沢の周りの景色が…ひどく歪んで見えた…。

 彼等の存在するこの空間が…確かに…歪み…傾いでいた…。
あたかも…無理矢理…捻じ曲げられでもしたかのように…。






次回へ

おふくろの味…?

2006-12-15 17:38:07 | オカン
 あなたにとって御袋の味とはなんですか…? 
そう訊かれたら…う~んと唸ってしまうかもしれない…。
強いて言えば…おにぎりとおでん…なんだけど…。

そうなんだけど…この御方の場合…多々難有り…。
 
 言っちゃ何だがはっきり言うと…オカンは料理が下手だ…。
子供の時分から料理をしているにも関わらず…味がまったく安定しない…。
 同じものを作っても日ごとに味が変わるから…どれがオカンの味か分からない…。

汁物ひとつとっても…水のように薄い時もあれば…喉がえらえらしそうなくらい塩っ辛い時もある…。

 これはすべての手料理に言えることで…シャビシャビのカレーとゴテゴテのカレーだったり…味のない煮物と佃煮のようになってしまった煮物だったりするから…何が御袋の味か…と訊かれても…はっきり答えようがないのだ…。

同じ材料使って同じもの作って…毎度これだけ違う味になるってのも…ひとつの才能かもしれないのだが…。


 前にも書いたけれど…オカンは虫が嫌い…。
野菜なども栄養がとんでしまうほどごしごし洗う…。
菜っ葉なんて一枚一枚洗わないと気が済まないほどだ…。

それなのに時々…脱走しているのが居る…。
運がいいのか…丈夫なのか…。

サラダボールの縁をのんびり尺とっていらっしゃる青虫くん…。

オカン…一生懸命…何洗ったの…?


 あれは…旅行か…合宿から戻った夜…だったと思う。
みんなが夕飯を食べ終わったところに帰宅した…。
オカンは優しく野菜スープを温め…大皿にたっぷりとよそってくれた…。

疲れて空腹だった自分は喜び勇んでスプーンをスープに…。

ベロ~ン!

5センチほどのイモムシが…具になっている…。

プカ~ッと浮いていらっしゃる…。

オカン…だしが…よう…きいとる…な…。

ありゃりゃ…っとオカンは覗き込んだ。
だしが出た後でこれじゃ…もっと大きいのだったんだねぇ…。
あはは…みんな食べちゃったよ…。

あはは…って…何洗ってたんかねぇ…?

 まあ…仕方がないのでイモちゃんだけ捨てて…スープは食べた…。
白菜しか食っていないイモちゃんは毒ではないだろうけれど…。
プカ~を見ちゃった後では…美味しいとは思えない…。

溜息…。

えっ…そんな気持ちの悪いスープを食べたのかって…?
そうなの…そうしないと生きられないの…我が家では…。

なぜかって言うと…オカンは常習犯なのだ…。

ほうれん草のおひたしの茎と茎の間に…デロ~ン…。
十六ササギの間にノベ~…。

いちいち食べずに捨てていては…おかずがなくなる…。

死活問題なの~!
それも…何故か…決まって自分の皿にだけ出現するのだ~!

運が悪いだわ…とオカンはけらけら笑う…。

 あのな…イモちゃんの皿は自分のだけど…あんた食べた野菜も一緒に湯がいたやつでしょうが…。
だしは同じ…出てんだよ…い~っぱい…。

 あれだけ洗って何故…とも思うのだが…。
考えてみるとごしごし洗ってるということは…イモちゃんは逃げる間もなく一緒にごしごしされて目を回し…束ねられ…鍋に放り込まれたわけで…。

よく洗われたイモちゃんだから…清潔よ…ってなことで…済むかっ!


自分の御袋の味って…イモちゃんスープのだし…なんだろうか…?

う~ん…。 





あたし…綺麗…?

2006-12-14 11:35:00 | ひとりごと
 何日も雨が続いて…枯葉もすっかり落ちてしまった…。
代わりに山茶花が勢いよく花を咲かせているが…この雨ではメジロも蜜を吸いに来られないだろうなぁ…。
間もなく…この雨も雪に変わるんだろう…。


 そう言えば…昔…クリスマスの近いこの季節にボランティア活動で簡単な劇を演じたことがある…。
まだ…自分が16くらいの頃のことだ…。

 演じるのは素人ばかりだし時間的にも簡略化された劇なので余興みたいなものだったのだが…主役の女の子は演劇部の子にやって貰った。

 参加人数も少ないので後は適当に割り振って…自分は女王さまの役を貰った。
それも…雪の女王さま…だ。
ボランティアの責任者だったから成り行きでそうなっただけなんだけどね…。

雪の女王さまというからにはスリムで美人でなくてはならない…。

 スリムで…美人…どうせいっちゅうんじゃ…と鏡を見て考える…。
運動部だから…腹は出てないけどなぁ…。
 前にも書いたとおり…手足の短いおっさん役ならまだしも…。
喜劇か…これは…。

う~ん…化けるしかない…。

 カーテンの生地で何とか白いドレスを作った…。
ヒールの靴は…誰かに借りたと思う…。
衣装は…何とかそれで間に合うんだろうが…。

問題は…顔じゃ…。

 しか~し…生まれてこの方…化粧品などというものを手にしたことがない…!
従って…化粧の仕方も知らない…。

取り敢えずはオカンの使っている白粉と口紅を借りたらいいか…。

 そんな甘い考えで当日を迎えた…。
後から思えば甘過ぎた…。

 控え室ではみんなメイクの真っ最中…。
年頃の女の子が圧倒的に多いから…当然のようにあれもこれも持っている…。
アイシャドウ…眉描き…頬紅…等々。

えぇ~っ…何これ何これ…?
何で…そんなバックにいっぱい要るわけ…?

みんなは当然…一応女王役なんだから…こいつもいろいろ持ってきたはずだ…と思っているから…こっちを見ようともしない…。

ま…いいか…。

オカンに借りた白粉を出した…。
顔に塗ろうとして…塗れないことにやっと気付いた…。

 いろんなものを段階的に塗りたくっていかないと最後の白粉がくっつかない…ということを初めて知った…。
つまり…下地になるクリームか何かを塗っておかないとだめなのだ…。

クリームかぁ…。

 クリームと言えば…持っているのはハンドクリーム…。
同じ油なんだから…これでいっか…! お肌すべすべにしときゃいいんだろ…。

 女の子に頼んで借りゃあいいものを…そのままハンドクリームを塗りたくった。
昔のハンドクリームは今のもののように良質ではないから…すべすべどころかギトギト…。

その上から白粉を重ねる…。

 当然のように…白粉はフィットせずにムラムラの状態になる…。
オカンの白粉だから色も合うわけがなく…顔は悲惨なまだら模様…。
で…その上に真っ赤な口紅…。

うぇ~…雪の女王じゃなくて雪の変死体だぁ…!

 上演時間が決まっているから…今更…女の子から借りて直している暇はない…。
とにかく衣装を身につけて…変死体は立ち上がった…。

 
 まあ…こいつのことだから…こんなもんだろう…と日頃から慣れている友人たちは途中笑い出しもせず…何とか無事に上演を終わった。

 遠くから見ていた顧問の先生には顔がはっきり見えなかったようで…白いドレスと真っ赤な口紅のお蔭で…何とか遠目には誤魔化せたようだ…。

二度と…美人の役は…せん!

…ってか…次にやったのは…変死体を飛び越えて…おばあちゃんの…幽霊役だった…。




おうちがだんだん遠くなる~…♪

2006-12-13 12:19:00 | ひとりごと
 あの町この町日が暮れる…今来たこの道帰りゃんせ…。
そんな童謡があったな…。

 弟がまだ小さい頃に…遊びに出たまま暗くなっても帰って来なくて…雷の鳴る中をオカンが探しに出たことがあった…。
弟は雷と雨の中を幼馴染とふたり…遠くの方から…わんわん泣きながら戻って来たそうだ…。
夕闇と稲光と雷鳴…そして雨…怖いもの知らずの悪がきたちも相当…心細かったんだろうなぁ…。 

 迷子の心細さは大人になっても変わらない…。
どうしようかと途方に暮れる時の…涙出そうな気持ち…。
無力な子供の頃とは違って…何とでも自分で対処できるから…泣かずに済んでいるだけなのかもしれない…。 


 オカンが緊急入院したのは自分が中学一年か二年の頃だったと思う…。
手術当日…下校してから病院に駆けつけるつもりだったのだが…病院の場所を知らない…。
入院の時も学校へ行っている間のできごとだったので病院の名前しか分からないのだ…。 

 近所のオカンと仲のいいおばさんに聞いたら…見舞いに行ってきたばかりだから…と丁寧に教えてくれた。
市電に乗って○○町で降りて…向かって右の進行方向へ真っ直ぐ進んで一本目の広い交差点を左…あとは真っ直ぐだよ…。 

近所に頼れる人が居てほんと助かった…。

弟たちを連れて行くかどうか迷ったが…初めての道だし…病院なので置いていくことにした…。

 予定では…4時には着けるはずだった。
その時間ならまだ手術中か…ちょうど終わった頃かな…そう思っていた。

 当時まだ町には市電が走っていて市民の便利な足となっていた…。
乗ってしまえば目的地まで運んでくれる。
安心で快適な乗り物だった…。

 目的の○○町で降りて…向かって右の進行方向へ真っ直ぐ進んだ。
一本目の広い交差点がなかなか現れない…。
かなり先へ進んだところ…多分…次の停車場との中間ぐらいでやっと広い交差点に出た。
後は左へ曲がるだけ…のはずだった。 

 曲がったはいいが…行けども行けども病院がない…。
真っ直ぐと言われているから…真っ直ぐに進むしかないのだが…。

どうなってるんだぁ…? 

 メモを見直してみる…ひょっとしたら見間違いかもしれないし…。
けれど…言われたとおりに確かに来ている…。
手術はもう終わっただろうか…駅についてから…かなり時間経ってるし…。

 気持ちは焦るが…どうしようもない…。
知らない町をただひとり歩いた…真っ直ぐに…。

 次の大通りに出たところで思案した…。
これは原点に戻るしかない…。
 戻るしかないと言ってもすでに一時間以上は歩き続けている…。
もと来た道を戻るか…別の道をとるか…。

すでにあたりは暗くなりかけていた…。
足が痛い…。

来た道を戻るのが常道だけど…このあたりの大通りは…ほとんど平行だからな…。

 戻るのを止めて左へ曲がった…。
また…真っ直ぐ真っ直ぐ歩いた…次の広い通りを目指して…。

 何故…次の広い通りを目指したか…と言えば…。
方向音痴のオカンならやりそうなことを思い出したからだ…。

最初の…向かって右へ進行方向…あれが…向かって左へ戻る方向だったとしたら…。

 延々歩いて…やっとのことで広い通りに出た。
さらに左へ向かう…。

 やがて…市電の通りが見え始めた頃…道の右手に病院はあった。
窓に明かりが煌々と灯っていた。
何はともあれ…ほっとした…。

停車場から二~三分で来られるところなのに…いったいどのくらいかかったんだ…?

 やっと病室に辿り着くと…すでに…会社帰りの親父が来ていた…。
オカンはまだ麻酔が覚めかけたばかりで意識が戻っていなかった…。
 掛け布団が直接腹の上に乗らないように籠のようなもので覆って支えてある…。
それがやけに痛々しい気がした…。

 疲れたのと安心したのと術後のオカンの様子とで…泣きそうな気持ちにはなったが…親父の前では意地でも泣かんと決めていた…。


 後で思えば…弟たちを置いていって正解だった…。
病室の時計を見て分かったのだが三時間近くも知らない町を歩いていたわけで…。

 オカンの体調がよくなってからこの話をすると大笑い…。
実は…あのおばさんはオカンと同類で物凄い方向音痴なのだそうだ…。
 道案内には絶対向かない…お方だという…。
他の事は頼りになる人なんだけどね…そう言ってまた笑い転げた…。

オカン…頼むて…それ先に…言っといてくれ…。
 

おうちがだんだん遠くなる~遠くなる~…。
 今来たこの道 帰りゃんせ~帰りゃんせ~…。



オカンの小言とミニバイク

2006-12-12 11:45:00 | オカン
 このところ土日になるとバイク回収者が町内を回っている…。
ご不要になりましたぁ…バイク回収いたしますぅ…お気軽にお訊ね下さい…などと流しながら軽トラがゆっくりと道を進んでいく…。

バイクかぁ…ちょっと懐かしいなぁ…。

 あっ…いえいえ…決して夜の街を暴走していたわけではござんせん…。
真面目に通勤に使っていたわけで…。 ほんとですってばぁ…。


 高校の頃から一度はバイクに乗ってみたいと思っていた…。
ところが…オカンはバイクは危ないから絶対だめ!…と言って譲らない…。
免許取るなら四つ輪にしろ…という…。

四つ輪もいいけどさ…やっぱ…二輪…乗りたいよなぁ…。

 そんな思いが胸の中にずっとあった…。
車種はどうでもよかったけど…。

 就職して赴任地が比較的家の近くに決まった時…これはチャンスだ…と思った。
オカンに黙って近所のバイク屋さんに出かけて行き…黒のスクータータイプを一台買った。
本当はスポーツ系のもうちょっとカッコいいのにしたかったんだが…何せ通勤用…通勤バックをシートの下に入れられると言うのが魅力で…これに決めてしまった。

 オカンが帰宅すると家の前に新しいバイクが置いてある。
あいつは…内緒で…こんなもん買ってきおって…ってなもんで…危ないの連発…。
しばらくぶつぶつ言っていたけれど…後の祭り…。

もう…買っちまったも~ん…。

 さて…通勤に使う前に少し乗っておかなけりゃ…というので…早速休日に練習を始めたのはいいが…ひとりで操作するのはこれが始めて…。

 直線はいいが曲がり角が上手くいかない。
もともと運動神経が鈍いので…身体を傾けるタイミングが合わないのだ…。
しかも…初心者の焦りもあってだんだん頭に血が上って来る…。

あれこれやっているうちに小さな通りに飛び出し転倒した…。

痛ってぇ…!

 幸いなことに誰も見ておらず…車も走ってなかった。
新品のバイクのミラーは無惨に割れ…ボディも傷…。
自分も両足のあちこちに打ち身と傷…。

げげっ…困ったな…。

ちょうど…その時…まるで示し合わせたかのようにバイク屋のおっちゃんが軽トラに乗って現れた…。

奇跡か…。

 大丈夫ですかぁ…とおっちゃん…。 他に車が居なくて良かったねぇ…。
口調は心配そうだが…明らかに…その顔はドジ!…と言っている…。
壊れたバイクを軽トラに乗せてほくほく顔で修理に持って帰ってくれた…。

 例のバイクの姿が見えないものだから…帰宅したオカンは何事かあったのを直感的に察した。

 足に残った…あちらこちらの大きな青あざを見て…ほれ見たことか…だから危ないって言ったろうが…とからかった…。

へいへい…自分が悪うございました…。

 バイクが修理から戻ってきてからは…不思議なことに一度もこけなかった…。
別に乗り方を変えたわけではなかったが…思いっきりこけたせいで…バイクの動きに慣れたのかもしれない…。
結構…便利に何年か乗れたから…あれは厄払いだったのかなぁとも思う…。

 あの後…親父がこそっと教えてくれた。
あの人もな…若い頃…ブレーキのかけ方も知らずにバイクに乗って…田んぼに突っ込んだんだわ…。

はぁ…なんじゃそりゃ…? 

 聞けば…オカンは人のバイクに乗せて貰ったのはいいが…どれがブレーキかも知らずに乗って…走っちまってから大騒ぎ…。
周り中に…どいて!どいて!どいて!…と叫びながら田んぼに飛び込んだらしい。

いくらなんでもブレーキのかけ方くらいは覚えてから乗れよ…。
田んぼがあってよかったな…オカン…!

今にも噴き出しそうになりながら自分がそう声をかけると…振り向きざまにオカンはニヤッと笑った。

イヒヒ…ばれたか…。