あの町この町日が暮れる…今来たこの道帰りゃんせ…。
そんな童謡があったな…。
弟がまだ小さい頃に…遊びに出たまま暗くなっても帰って来なくて…雷の鳴る中をオカンが探しに出たことがあった…。
弟は雷と雨の中を幼馴染とふたり…遠くの方から…わんわん泣きながら戻って来たそうだ…。
夕闇と稲光と雷鳴…そして雨…怖いもの知らずの悪がきたちも相当…心細かったんだろうなぁ…。
迷子の心細さは大人になっても変わらない…。
どうしようかと途方に暮れる時の…涙出そうな気持ち…。
無力な子供の頃とは違って…何とでも自分で対処できるから…泣かずに済んでいるだけなのかもしれない…。
オカンが緊急入院したのは自分が中学一年か二年の頃だったと思う…。
手術当日…下校してから病院に駆けつけるつもりだったのだが…病院の場所を知らない…。
入院の時も学校へ行っている間のできごとだったので病院の名前しか分からないのだ…。
近所のオカンと仲のいいおばさんに聞いたら…見舞いに行ってきたばかりだから…と丁寧に教えてくれた。
市電に乗って○○町で降りて…向かって右の進行方向へ真っ直ぐ進んで一本目の広い交差点を左…あとは真っ直ぐだよ…。
近所に頼れる人が居てほんと助かった…。
弟たちを連れて行くかどうか迷ったが…初めての道だし…病院なので置いていくことにした…。
予定では…4時には着けるはずだった。
その時間ならまだ手術中か…ちょうど終わった頃かな…そう思っていた。
当時まだ町には市電が走っていて市民の便利な足となっていた…。
乗ってしまえば目的地まで運んでくれる。
安心で快適な乗り物だった…。
目的の○○町で降りて…向かって右の進行方向へ真っ直ぐ進んだ。
一本目の広い交差点がなかなか現れない…。
かなり先へ進んだところ…多分…次の停車場との中間ぐらいでやっと広い交差点に出た。
後は左へ曲がるだけ…のはずだった。
曲がったはいいが…行けども行けども病院がない…。
真っ直ぐと言われているから…真っ直ぐに進むしかないのだが…。
どうなってるんだぁ…?
メモを見直してみる…ひょっとしたら見間違いかもしれないし…。
けれど…言われたとおりに確かに来ている…。
手術はもう終わっただろうか…駅についてから…かなり時間経ってるし…。
気持ちは焦るが…どうしようもない…。
知らない町をただひとり歩いた…真っ直ぐに…。
次の大通りに出たところで思案した…。
これは原点に戻るしかない…。
戻るしかないと言ってもすでに一時間以上は歩き続けている…。
もと来た道を戻るか…別の道をとるか…。
すでにあたりは暗くなりかけていた…。
足が痛い…。
来た道を戻るのが常道だけど…このあたりの大通りは…ほとんど平行だからな…。
戻るのを止めて左へ曲がった…。
また…真っ直ぐ真っ直ぐ歩いた…次の広い通りを目指して…。
何故…次の広い通りを目指したか…と言えば…。
方向音痴のオカンならやりそうなことを思い出したからだ…。
最初の…向かって右へ進行方向…あれが…向かって左へ戻る方向だったとしたら…。
延々歩いて…やっとのことで広い通りに出た。
さらに左へ向かう…。
やがて…市電の通りが見え始めた頃…道の右手に病院はあった。
窓に明かりが煌々と灯っていた。
何はともあれ…ほっとした…。
停車場から二~三分で来られるところなのに…いったいどのくらいかかったんだ…?
やっと病室に辿り着くと…すでに…会社帰りの親父が来ていた…。
オカンはまだ麻酔が覚めかけたばかりで意識が戻っていなかった…。
掛け布団が直接腹の上に乗らないように籠のようなもので覆って支えてある…。
それがやけに痛々しい気がした…。
疲れたのと安心したのと術後のオカンの様子とで…泣きそうな気持ちにはなったが…親父の前では意地でも泣かんと決めていた…。
後で思えば…弟たちを置いていって正解だった…。
病室の時計を見て分かったのだが三時間近くも知らない町を歩いていたわけで…。
オカンの体調がよくなってからこの話をすると大笑い…。
実は…あのおばさんはオカンと同類で物凄い方向音痴なのだそうだ…。
道案内には絶対向かない…お方だという…。
他の事は頼りになる人なんだけどね…そう言ってまた笑い転げた…。
オカン…頼むて…それ先に…言っといてくれ…。
おうちがだんだん遠くなる~遠くなる~…。
今来たこの道 帰りゃんせ~帰りゃんせ~…。
そんな童謡があったな…。
弟がまだ小さい頃に…遊びに出たまま暗くなっても帰って来なくて…雷の鳴る中をオカンが探しに出たことがあった…。
弟は雷と雨の中を幼馴染とふたり…遠くの方から…わんわん泣きながら戻って来たそうだ…。
夕闇と稲光と雷鳴…そして雨…怖いもの知らずの悪がきたちも相当…心細かったんだろうなぁ…。
迷子の心細さは大人になっても変わらない…。
どうしようかと途方に暮れる時の…涙出そうな気持ち…。
無力な子供の頃とは違って…何とでも自分で対処できるから…泣かずに済んでいるだけなのかもしれない…。
オカンが緊急入院したのは自分が中学一年か二年の頃だったと思う…。
手術当日…下校してから病院に駆けつけるつもりだったのだが…病院の場所を知らない…。
入院の時も学校へ行っている間のできごとだったので病院の名前しか分からないのだ…。
近所のオカンと仲のいいおばさんに聞いたら…見舞いに行ってきたばかりだから…と丁寧に教えてくれた。
市電に乗って○○町で降りて…向かって右の進行方向へ真っ直ぐ進んで一本目の広い交差点を左…あとは真っ直ぐだよ…。
近所に頼れる人が居てほんと助かった…。
弟たちを連れて行くかどうか迷ったが…初めての道だし…病院なので置いていくことにした…。
予定では…4時には着けるはずだった。
その時間ならまだ手術中か…ちょうど終わった頃かな…そう思っていた。
当時まだ町には市電が走っていて市民の便利な足となっていた…。
乗ってしまえば目的地まで運んでくれる。
安心で快適な乗り物だった…。
目的の○○町で降りて…向かって右の進行方向へ真っ直ぐ進んだ。
一本目の広い交差点がなかなか現れない…。
かなり先へ進んだところ…多分…次の停車場との中間ぐらいでやっと広い交差点に出た。
後は左へ曲がるだけ…のはずだった。
曲がったはいいが…行けども行けども病院がない…。
真っ直ぐと言われているから…真っ直ぐに進むしかないのだが…。
どうなってるんだぁ…?
メモを見直してみる…ひょっとしたら見間違いかもしれないし…。
けれど…言われたとおりに確かに来ている…。
手術はもう終わっただろうか…駅についてから…かなり時間経ってるし…。
気持ちは焦るが…どうしようもない…。
知らない町をただひとり歩いた…真っ直ぐに…。
次の大通りに出たところで思案した…。
これは原点に戻るしかない…。
戻るしかないと言ってもすでに一時間以上は歩き続けている…。
もと来た道を戻るか…別の道をとるか…。
すでにあたりは暗くなりかけていた…。
足が痛い…。
来た道を戻るのが常道だけど…このあたりの大通りは…ほとんど平行だからな…。
戻るのを止めて左へ曲がった…。
また…真っ直ぐ真っ直ぐ歩いた…次の広い通りを目指して…。
何故…次の広い通りを目指したか…と言えば…。
方向音痴のオカンならやりそうなことを思い出したからだ…。
最初の…向かって右へ進行方向…あれが…向かって左へ戻る方向だったとしたら…。
延々歩いて…やっとのことで広い通りに出た。
さらに左へ向かう…。
やがて…市電の通りが見え始めた頃…道の右手に病院はあった。
窓に明かりが煌々と灯っていた。
何はともあれ…ほっとした…。
停車場から二~三分で来られるところなのに…いったいどのくらいかかったんだ…?
やっと病室に辿り着くと…すでに…会社帰りの親父が来ていた…。
オカンはまだ麻酔が覚めかけたばかりで意識が戻っていなかった…。
掛け布団が直接腹の上に乗らないように籠のようなもので覆って支えてある…。
それがやけに痛々しい気がした…。
疲れたのと安心したのと術後のオカンの様子とで…泣きそうな気持ちにはなったが…親父の前では意地でも泣かんと決めていた…。
後で思えば…弟たちを置いていって正解だった…。
病室の時計を見て分かったのだが三時間近くも知らない町を歩いていたわけで…。
オカンの体調がよくなってからこの話をすると大笑い…。
実は…あのおばさんはオカンと同類で物凄い方向音痴なのだそうだ…。
道案内には絶対向かない…お方だという…。
他の事は頼りになる人なんだけどね…そう言ってまた笑い転げた…。
オカン…頼むて…それ先に…言っといてくれ…。
おうちがだんだん遠くなる~遠くなる~…。
今来たこの道 帰りゃんせ~帰りゃんせ~…。