徒然なるままに…なんてね。

思いつくまま、気の向くままの備忘録。
ほとんど…小説…だったりも…します。

オカンの小言とミニバイク

2006-12-12 11:45:00 | オカン
 このところ土日になるとバイク回収者が町内を回っている…。
ご不要になりましたぁ…バイク回収いたしますぅ…お気軽にお訊ね下さい…などと流しながら軽トラがゆっくりと道を進んでいく…。

バイクかぁ…ちょっと懐かしいなぁ…。

 あっ…いえいえ…決して夜の街を暴走していたわけではござんせん…。
真面目に通勤に使っていたわけで…。 ほんとですってばぁ…。


 高校の頃から一度はバイクに乗ってみたいと思っていた…。
ところが…オカンはバイクは危ないから絶対だめ!…と言って譲らない…。
免許取るなら四つ輪にしろ…という…。

四つ輪もいいけどさ…やっぱ…二輪…乗りたいよなぁ…。

 そんな思いが胸の中にずっとあった…。
車種はどうでもよかったけど…。

 就職して赴任地が比較的家の近くに決まった時…これはチャンスだ…と思った。
オカンに黙って近所のバイク屋さんに出かけて行き…黒のスクータータイプを一台買った。
本当はスポーツ系のもうちょっとカッコいいのにしたかったんだが…何せ通勤用…通勤バックをシートの下に入れられると言うのが魅力で…これに決めてしまった。

 オカンが帰宅すると家の前に新しいバイクが置いてある。
あいつは…内緒で…こんなもん買ってきおって…ってなもんで…危ないの連発…。
しばらくぶつぶつ言っていたけれど…後の祭り…。

もう…買っちまったも~ん…。

 さて…通勤に使う前に少し乗っておかなけりゃ…というので…早速休日に練習を始めたのはいいが…ひとりで操作するのはこれが始めて…。

 直線はいいが曲がり角が上手くいかない。
もともと運動神経が鈍いので…身体を傾けるタイミングが合わないのだ…。
しかも…初心者の焦りもあってだんだん頭に血が上って来る…。

あれこれやっているうちに小さな通りに飛び出し転倒した…。

痛ってぇ…!

 幸いなことに誰も見ておらず…車も走ってなかった。
新品のバイクのミラーは無惨に割れ…ボディも傷…。
自分も両足のあちこちに打ち身と傷…。

げげっ…困ったな…。

ちょうど…その時…まるで示し合わせたかのようにバイク屋のおっちゃんが軽トラに乗って現れた…。

奇跡か…。

 大丈夫ですかぁ…とおっちゃん…。 他に車が居なくて良かったねぇ…。
口調は心配そうだが…明らかに…その顔はドジ!…と言っている…。
壊れたバイクを軽トラに乗せてほくほく顔で修理に持って帰ってくれた…。

 例のバイクの姿が見えないものだから…帰宅したオカンは何事かあったのを直感的に察した。

 足に残った…あちらこちらの大きな青あざを見て…ほれ見たことか…だから危ないって言ったろうが…とからかった…。

へいへい…自分が悪うございました…。

 バイクが修理から戻ってきてからは…不思議なことに一度もこけなかった…。
別に乗り方を変えたわけではなかったが…思いっきりこけたせいで…バイクの動きに慣れたのかもしれない…。
結構…便利に何年か乗れたから…あれは厄払いだったのかなぁとも思う…。

 あの後…親父がこそっと教えてくれた。
あの人もな…若い頃…ブレーキのかけ方も知らずにバイクに乗って…田んぼに突っ込んだんだわ…。

はぁ…なんじゃそりゃ…? 

 聞けば…オカンは人のバイクに乗せて貰ったのはいいが…どれがブレーキかも知らずに乗って…走っちまってから大騒ぎ…。
周り中に…どいて!どいて!どいて!…と叫びながら田んぼに飛び込んだらしい。

いくらなんでもブレーキのかけ方くらいは覚えてから乗れよ…。
田んぼがあってよかったな…オカン…!

今にも噴き出しそうになりながら自分がそう声をかけると…振り向きざまにオカンはニヤッと笑った。

イヒヒ…ばれたか…。