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婦人科漢方治療と劉寄奴(りゅうきど)

2007-01-08 14:24:40 | うんちく・小ネタ

卵巣嚢腫 子宮内膜症 子宮筋腫の治療

上海中医薬科大学付属曙光病院の張寧寧教授から教えをいただいた「卵巣嚢腫」の基本治療生薬について、忘れないように「自分なりの語呂合わせ」を作った覚えがある。以下のようなものだ。

化痰散血(かたんさんけつ)黄薬子(おうやくし)

破血消癥(はけつしょうちょう)劉寄奴(りうじーぬー)

紅藤(ほんたん)赤芍(あかしゃく)半枝蓮(はんしれん)

夏枯草(かごそう)海藻(はいざお)効軟堅

化痰解毒(かたんげどく)沢漆(たくしつ)鶏金(けいないきん)

語呂がいいように、日本語と中国語の混合で覚えた。こういった覚えた方は、一度覚えると忘れないので便利である。中段の紅藤は清熱解毒 消?散結 活血止痛に働く。赤芍は淤止痛に、半枝蓮は清熱解毒 活血淤 利尿に働くと共に婦人科系腫瘍に多用される漢方抗癌生薬の一種である。語呂がいいように単に並べただけで効能は省いてある。

一方、「子宮内膜症」の基本治療生薬として、同様に語呂合わせで記憶しておくと便利なものがある。私の考案であるから出来はやや悪い。

温里散寒(おんりさんかん) 肉桂(にっけい)烏薬(うやく)

理気活血(りきかっけつ)香附子(こうぶし)益母草(やくも草)

破血消腫(はけつしょうしゅ)に劉寄奴(りうじーぬー)

芍薬(しゃくやく)甘草(かんぞう)延胡索(えんこさく)

最終段は鎮痛効果の目的である。

もちろん以上は基本生薬であり、患者さんの体質に合わせてせんじ薬を作成する場合は、通常20種類程度の生薬数になる。

劉寄奴(りゅうきど)

心 肝 脾経に作用し、破血通 散淤消腫 斂瘡消腫 止痛に働くとされる。

(寄蒿ジーハオ)の全草である。赤の温薬で表示したが、性味にはやや生産地によって特徴がある。

私が漢方を学んだのは上海であり、上海地区、浙江省、江蘇省、江西省、福建省で産出される劉寄奴は南劉寄奴とよばれ、苦温の性質を持つ。一方、中国北部で産出されるものは北劉寄奴とよばれ、辛苦涼の性質を持つ。従って、上海でのノートには苦温と記載してある。上海科学技術出版社の中薬学には苦温と記載されてある。日本の清書には辛苦涼と記載されている場合もある。

効能に大差はないものの、用量が北劉寄奴は南劉寄奴に比べやや多く、一方南劉寄奴には消食作用(消化作用)があるために「化食丹」とも呼ばれているようだ。

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劉寄奴(りゅうきど) 宋建国の劉裕の幼名 (康仁写生)

Artemisiae Anomalac Herb

劉寄奴の「破血通経」 「斂瘡消腫」とは?

淤血(おけつ)を除く作用を淤(きょお)と言うが、その作用の中でも特に強い淤作用を破血という。血を破ると書くが、その血は淤血の血である。通経とは生理を再び起こさせるという意味である。しかし、生理が正常にあっても使用しても問題は無い。卵巣嚢腫 子宮内膜症 子宮筋腫に中国では治療効果をあげている。

私の子宮筋腫の経験を申しあげる。

冷え 子宮筋腫 月経過多 経期延長 生理痛の症例から

37歳の女性で、直径5cmの子宮筋腫があり、一児はいるものの、将来の妊娠分娩を希望している女性が漢方外来を受診された。脈象は細弱、青紫舌で舌下静脈やや怒張、下肢が冷え冬場にしもやけになりやすく、眠れないくらい足先が冷えるとのこと、生理痛があり、生理が来ると痛みが増し、バッファリンを服用して痛みをコントロール、月経量が多く、月経期間が7~10日と長く、生理に血塊が混じるとの事であった。

気血両虚、気虚不摂血気味、寒凝血、筋腫合併と診断した。気血両虚に対して人参 白? 茯苓 生甘草 当帰 熟地黄 白芍 川芎 を、衝任寒証に対して、

肉桂 桂枝 烏薬 小茴香の温薬を、寒凝血淤に対して益母草 丹参 紅花 桃仁 莪? 三棱 などやや多目の活血薬を、理気止痛の目的で川郁金 延胡索 香附子を、筋腫に対しては夏枯草 蒲公英根 威霊仙 蘇木 劉寄奴を配合しせんじ薬を調合した。赤は温薬、ブルーは涼寒薬、グリーンは平薬である。

 

服用後1ヶ月後、生理痛も無く、とても楽であったとのこと、手足の冷えも改善し、生理時の血塊が少なくなり、生理期間も5日に短くなって調子がとてもいいと喜んでおられた。

斂瘡消腫(れんそうしょうしゅ)とは傷を収斂させ(固めて)、腫れや浮腫を除くことを意味する。古くから刀傷には単味を粉末にして外用すると、傷の治りが非常に早いとされている。

劉寄奴伝説

1500年前の中国の「五湖十六国」の時代に、東晋を滅ぼして新たに宋朝を起こした劉裕の伝説がある。劉裕は現在の江蘇省の下級官吏の子として生まれた。

東晋の小部隊長として戦を続けていた時に、江南のとある山麓で、一匹の巨大な蛇が行く手をふさぎ、劉裕は「生まれて初めての恐怖」を味わった。しかし、勇を振るい起こし「お前が去らなければ射殺すぞ」と、急所に一矢を放ち部隊に戻った。

 翌朝、大蛇の消えたあたりに、蛇色の服を着た数人の子供が石臼で薬草をついていた。劉裕の問いに「お師匠様が昨日傷つけられた、この薬の粉を付ければ傷はすぐに治るんだ。矢で傷つけた兵の名は劉寄奴で将来、天子になる人だ。」と大蛇の弟子の子供たちが言った。劉裕は「劉寄奴」という名前が自分の幼名であったためにひどく驚くとともに天命を知った。

子供たちを追い散らしたあとで、石臼に残っている薬の粉末を持ち帰り、部隊の部下に携行させるように命じた。以後、「刀傷に妙効がある神仙から授けられた薬がある、もう戦で負傷しても死ぬことは無い」という噂が広まり、部隊は強大になった。それ以降この薬草は劉寄奴と呼ばれるようになった。

1500年前といえば、日本では古墳時代であり、遣隋使の始まりの607年より約200年も前の話である。この種の伝説の真偽はともかくとして、中国には薬草にまつわる伝説が非常に多い。劉裕死後1500年にも渡り、劉寄奴が民間生薬として中国人に愛されてきたことは確かである。

   続く、、