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婦人科生理の悩みの漢方治療と莪朮(がじゅつ)

2007-01-12 20:04:54 | うんちく・小ネタ

婦人科生理の悩みの漢方治療と莪朮(がじゅつ)

生理痛の治療

生理痛を伴う月経を漢方用語では痛経(つうけい)と言います。痛経には、少腹部(下腹部)の痛みの他にも、腰痛、吐き気、乳房の張痛などがあり、ひどい場合には「転げまわるほどの痛み」も出現し、意識を失うような重症もあります。痛経の治療は漢方治療の最も得意とする分野の一つです。

日本人に多いタイプから順に説明します。

まず「冷え」が基本的な原因となる場合です。

寒凝胞中(ほうちゅう)

 最近の日本女性は冬でも薄着をし、肌を露出し、生冷な食品や果物を過食する傾向があります。陽気が失われることに関して余りにも無頓着なのが日本の女性でしょう。生理が遅れたり(月経後期)経血量少ない(月経過少)を合併することがあります。生理の色は暗紫色で、質はやや粘調で、寒凝血淤のための血塊が混じることがあります。 舌質白あるいは青紫、四肢が冷え、舌に紫斑が見られることがあり、一般的に脈は沈などの診察上の特徴があります。加温すると症状が軽くなります。

 人参 肉桂 小茴香 茱萸 艾葉などの体を内側から温め、寒を除く生薬と、当帰 莪朮 延胡索 牛膝 蒲黄 五霊脂などの血のめぐりを良くして淤血を取り除く生薬や、鎮痛作用のある芍薬や甘草を併用すると効果的です。

有名方剤

温経湯(うんけいとう) 漢代「金匱要略」

人参 当帰  肉桂 莪朮 丹皮 白芍 牛膝 甘草の組成です。

赤は温薬、ブルーは涼寒薬、グリーンは平薬です。

方意は温経散寒調経 温補活血兼調経であり、冷えを伴う生理不順に用いられます。近代中国の婦人科でよく使用される理気鎮痛薬の香附子は含まれていません。

温経湯は実寒による月経異常の良方とされ、温して不燥 攻めて不傷 補して不滞の良薬と言われています。加減として月経量が多い場合は、牛膝や莪朮を除き、 炮姜や焦艾叶を加えて温経止血をはかるとされます。 牛膝(ごしつ)は引血下行の作用があり、子宮を充血させる作用があるので生理過多の場合には除いたほうが無難であるとされますが、しかし寒凝胞中(ほうちゅう)型の痛経で生理過多は殆ど見られません。むしろ、諸薬を子宮に降ろすという中国医学独自の「引経薬」という側面を持ちます。

下腹部痛があり、手で押さえると痛みが増すような拒按(きょあん)や血塊が生理血に混じる場合には、さらに 蒲黄と五脂(二薬を一緒にしたものを失笑散という)を加味して化淤止痛をはかるとされます。

 五霊脂(うーりんじ)は実は「むささびの糞」です。中国人は抵抗無く服用するが、「やや生臭い」感じがして日本の女性には向きません。桃仁 紅花 三棱などが無難な選択です。紅花を莪朮に代えて、桃仁 莪朮 三棱 を一緒に使用すると生理量が多くなる副作用があるとの報告がありますが、私自身の経験では、寒凝胞中(ほうちゅう)型の痛経ではそのような月経過多は生じません。

次に「冷えと湿」が基本的な原因となる場合である。

寒湿凝滞型

気候的に寒冷多湿な地方に見られます。私は神戸に住んでいるので冬場の湿度はあまり感じませんが、日本では新潟や山陰地方、中国では冬場の上海地区では「寒湿」が強いと感じます。さらに最近では年中スイミングを行っている日本女性がいることも事実です。温水プールであるといっても体を冷やすと共に「外湿」が悪影響を与えると考えられます。甘いものの過食や、冷たいビールの飲みすぎによって「内湿」がたまっている状態に薄着をして体を冷やす日本女性も多いのです。痛経のみならず関節痛や神経痛、冷えを訴える場合が多いのが特徴です。

有名方剤加減

少腹逐淤湯に? 茯苓などを加味します。

少腹逐淤湯(しょうふくちくおとう) 清代「医林改錯」

小茴香 干姜 延胡索 没薬 肉桂 当帰 赤芍  蒲黄 五霊脂の組成である。清代の王清任の方剤で婦人の生理痛の9割以上に効果があるとされます。

方意は活血化淤 温経止痛であり、温里剤の小茴香 干姜 肉桂、理気止痛剤の延胡索、更には活血淤剤の「失笑散(蒲黄と五霊脂)」と赤芍、鎮痛剤の没薬の配合になっています。 少腹とは下腹部のことです。