頭痛漢方専科 女性に多い片頭痛
慢性頭痛の中で、「片頭痛」に悩まされている人は、15歳以上の人口の約8%を占めるといわれています。男女比を比べると圧倒的に女性に多く、男性の約4倍です。片頭痛の原因はよくわかっていませんが、祖母 母親 娘三代に渡るような家族的な発症が見えけられる場合もあります。若い女性に多いのも特徴です。
片頭痛の痛みの特徴
最も多いタイプとしては、月に1~3回ぐらいの割合で発生する、発作的な強い頭痛です。2~3時間から、長い場合は半日から3日間ほど続く場合があります。片頭痛の名前から頭の片側だけに生じると誤解されている方もいらっしゃいますが、片側に限らず両側が、あたかも脈打つように、ズキンズキン、ドクンドクンあるいはガンガンと表現されるような痛みであり、吐き気を伴います。特徴の一つとして、体動によって症状が悪化することです。慢性頭痛の別のタイプである緊張型頭痛では体動によって頭痛が軽減することが多いので鑑別点の一つです。また、片頭痛では光や音に対して過敏になり、それらの外界からの刺激により頭痛が悪化します。発作時には日常生活に支障をきたすほど酷いものですが、発作が収まるとケロッとしていることも特徴です。
片頭痛の原因とされる西洋医学的なファクター
ストレスが誘引であることは漢方の見解と一致しています。西洋医学者は中には、ストレスがかかっている最中ではなく、ストレスの原因が取り除かされたあとに片頭痛が起こることを強調される医師が存在します。特定の飲食物、たとえば乳製品、ワイン、チョコレートなどが誘引となる場合もあります。また、妊娠中の発作が少なく、産後に発作が再発することや、経口避妊薬などで発作が起きやすくなるなどの観察から女性ホルモンが誘発要因にもなるようです。
片頭痛は脳内の血管が何らかの原因で拡張するために、血管周囲の神経を刺激して痛みを発生させることが原因です。生体は必要に応じて、血管を収縮させたり、拡張させたりしながら、生体を順応維持していきます。脳血管の過大な拡張が原因とすれば、生体の順応能力の変調とも考えられます。つまり自律機能の失調状態です。広い意味での自律神経失調症にも含まれる病態です。現代医学でも何故、脳血管が過大に拡張するのかの正確な原因究明は始まったばかりです。
片頭痛の予兆や前兆とは?
片頭痛のあるすべての人に見られるわけではありませんが、頭痛発作の前駆症状(ぜんくしょうじょう)があります。予兆は頭痛発作の1~2日前の前駆症状であり前兆は発作直前の前駆症状のことです。予兆は欠伸(あくび)が良く出る、イライラ、精神不安定、空腹感、手足のむくみっぽさなどが多く、前兆で多いのが、視覚異常の閃輝暗点(せんきあんてん)です。雑誌を読んでいる時などに、最初に視野の中心部の文字がかすれて見えにくくなり、そのうち視野の周辺部にチカチカした、まぶしい線が現れるというものです。この前兆の後に激しい片頭痛の発作が出現します。予兆前兆の極端な例として、一過性の話そうと思っても言葉を発することの出来ない失語(しつご)などの脳の言語中枢の症状が出現することもあります。予兆の後で前兆なしに頭痛発作が始まる場合もあれば、予兆がなく、前兆から頭痛が始まる場合もあります。
ストレスを貯めるなと医者は言うけれど、、
西洋医学の片頭痛の治療原則は
① 頭痛の誘因を避ける
②薬剤で脳の血管が拡張するのを防ぐ、あるいは収縮させる
ときわめて単純です。
ストレスをためないようにする、経口避妊薬を避ける、ホルモン補充療法などを避ける、誘引となる食物を避ける。発作時に睡眠をとるなどです。
しかしです、
そもそもストレスを溜めないようにしてくださいと医者に言われても、簡単にはいきません。
生きるということはストレスの連続です。「私に代わって生きてくださいよ」といいたくなる気持ちになりますね。経口避妊薬をやめてくださいといわれてもパートナーの協力が必要です。パートナーに話して納得してもらわなければなりません。それもストレスの種です。婦人科系がん治療後の女性ホルモン枯渇状態や強度の更年期障害でホルモン補充療法を受けている場合もあります。睡眠がいいといわれても、そもそも酷い頭痛があるわけですからタイミングを合わせて発作時に眠るなどは難しいのです。睡眠剤を服用しなければ眠れないほどの痛みなのですから。現代社会では、誘引となる食物成分は外観ではわからないように外食製品に含まれています。毎日お弁当を持って出勤するのもストレスの種です。職場の集まりではまったくお酒を飲まないわけにもいきません。あれこれ言い訳を言わなくてはならないのもストレスの一種です。本当に医者が言うように「ストレスを溜めない」なんてことが簡単に出来るはずがないのです。
以上の経過から、「結局は薬を飲んだほうが早いわ」ということになり、エルゴタミン系、トリプタンなどの血管拡張予防薬を服用することになります。一部の患者さんは薬剤に依存するようにもなります。自然の経過です。
中国漢方医学は片頭痛をどうとらえるか?
基礎的な考え方を簡単に申し上げれば、
片頭痛=肝火肝陽+痰濁+淤血 の3つの病因が各個人によってそれぞれ違った比率で組み合わって発生すると考えます。
精神的ストレスは肝気の鬱滞を起こし、やがては肝鬱化火となり肝火を発生させます。睡眠不足や腎陰の不足が原因となって、肝陰も損ねられ、肝陽を肝陰が制御できなくなって陽気が上亢して発生するのが肝火肝陽頭痛です。このタイプが優勢だと、眩暈(めまい)などが前兆となる場合があります。平素不眠傾向もあります。口が苦いなどの口味異常もあります。純粋な肝陽頭痛には釣藤散(ちょうとうさん)、天麻鈎藤飲(てんまこうとういん)、川芎茶調散(せんきゅうちゃちょうさん)などが有効です。
脂っこいものや甘いものが特に好きで、お酒を飲む、やや肥満傾向があるタイプで、頭痛の原因は胃腸機能が低下し、水湿の運化が低下し、病理産物の痰湿などが体にたまりやすいタイプに生じる頭痛が痰濁頭痛です。平素、頭がすっぽりと被いかぶさったような頭重感や胸の痞え(つかえ)があり、平素から悪心や嘔吐などがあります。純粋な痰濁頭痛には温胆湯(うんたんとう)、黄連温胆湯(おうれんうんたんとう)、竹茹温胆湯(ちくじょうんたんとう)、眩暈(めまい)をともなう場合は半夏白朮天麻湯(はんげびゃくじゅつてんまとう)などが有効です。
針で刺されるような頭痛があり、頭痛部位が一定で、舌が暗い紫色である場合は淤血頭痛が考えられます。血液の流れが一時的に悪くなった場合の頭痛です。純粋な淤血頭痛には五積散(ごしゃくさん)や通竅活血湯(つうきょうかっけつとう)などが有効です。
片頭痛に有効な生薬
平肝息風通絡剤である菊花 天麻 川芎 白芷(びゃくし) 生石膏 藁本 蔓?子(まんけいし) 鉤藤 全蝎(サソリ)地竜などを主体にします。 肝火の程度に合わせ竜胆草 山梔子 黄芩 丹皮などを、痰濁の程度に合わせ半夏 陳皮 胆南星などを、淤血の程度に合わせ桃仁 紅花 赤芍などを合わせて用います。
群発頭痛などにも有効で、西洋薬依存症や西洋薬を飲んでいたが最近飲まないと痛みが酷くなったとか、前より効き目が薄くなってきたと感じるようになった方は是非試してはいかがでしょうか?
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白芷 (びゃくし)(祛風解表 止痛 消腫排膿)
白芷 の祛風止痛作用は特に陽明経の前額部の頭痛に有効とされる。
独自の香りがあり中国では香白芷 とも呼ばれる。
香白芷 (こうびゃくし)の名前の由来伝説
古代中国の話である。とある秀才の男が頭痛に耐え切れず、顔面や脇の下から冷や汗を流すほどで、数人の医師の往診をうけたもののいっこうによくならず、寝込んでしまった。現在の湖北省の巫山に頭痛の名医がいると聞き及んで、馬車に揺られて数日の旅をしてようやく評判の医師に家に着くやあまりの頭痛に倒れこんで入院することになった。
「薬を飲んでよくなったらそのまま帰るように。治療の内容は尋ねないこと」
を条件に入院となった。現在ならインフォームドコンセント ゼロでの入院である。
「わかりました。老師! 絶対にお約束しますので、早くこの地獄のような頭痛をどうにかしてください」と秀才は頼みこむや気を失いそうになった。
医師は蜂蜜で練り上げた丸薬を2~3粒、秀才に服用させた。 蜂蜜の甘味と薬草の独自な香りがした。 結果は如何?
翌朝、嘘のように痛みは消え去り、秀才はキョトンとした面持ちで
「すごい薬だ。もうしばらく入院を決め込んで、秘密を探ってやろう」
と、生来の好奇心が頭をもたげた。早朝に医師とその弟子たちは大かごを担いで
近山へ薬草を取りに出かけた。留守を確認し、秀才は昨晩の薬箱を調べ、同じ香りのする丸薬を見つけ出した。
「これだ!しかし、いったい何の薬草を混ぜたものだろうか?」
そのうち、医師と弟子たちは帰ってきた。鍋で蜂蜜を炊いて、石臼で薬草の乾燥根を挽き、蜂蜜と一緒にし、みるみるうちに弟子たちは件(くだん)の丸薬を作り始めた。
「この匂いだ。あの薬草に違いない」
と秀才は頭痛が無いにもかかわらず、2~3日の入院延長を頼み込んだ。
それ以降、連日の秀才の午前中の不審な行動はやがては医師に知られることになった。
「この薬草について、あなたはもう知ってしまいましたね。もはや隠し立てはできません」
医師は微笑むと話し始めた。
「この薬草は、先祖代々受け継いできた秘薬ですが、名前が伝わっていないのです。あなたは都の秀才です。なにかふさわしい名前を付けていただきたい」
と老医師は秀才に頼んだ。
「とんでもないことです。約束を破ってこのような無礼なことをしてしまって」
秀才は心から謝罪した。
「いいや、医師であるのに薬草の名前も知らぬとは、我ながら恥ずかしい。どうか老人の頼みをきいてくださらないか」
秀才は感激のあまり、声もなかったが、しばし熟考した後
「それでは、先生 “香白芷 ”ではいかがでしょうか?この生薬には独自の香気があります。それにこの生薬の根は白く、芷 という文字は最初にでてくる根という意味があります」
老医師はいたく喜んだ。 それ以降、湖北省 巫山の香白芷 丸は鎮痛特効薬として全中国に広まっていったという。
続く、、
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