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映画好き、円柱野郎のブログです

「虹色のトロツキー」を読みました

2010年07月14日 23時28分11秒 | 本・雑誌
最近色々と本を読む機会が増えたけど、相変わらずマンガの方が比率が高め。
でも少年漫画よりも青年系といった感じでシフトしつつあるのかなあ?
まあ雑誌は読まないので、過去の名作とかを単行本で買うことが多いけど。

そんな中で最近読んだ安彦良和著の「虹色のトロツキー」は面白かった。

虹色のトロツキー愛蔵版1

昭和初期の満州国。
日蒙ハーフの青年である主人公は、幼い日に家族が殺された現場で目にしたトロツキーの姿。
一方、関東軍の石原完爾と辻正信は、対ソの謀略として満州国の建国大学にトロツキーを招聘する計画を練っていた。
…というところから話が始まり、主人公ウムボルトの目を通して満州国や上海、そして日本がソ連軍と戦端を開いたノモンハン事件を描いていく。

「トロツキー計画」という作者の独自見解はあるものの、満州国における人々の姿や日本人や他民族の関係、ノモンハン事件のことがすごくよく分かる作品でした。
特に五族協和の建前の元に設立されたという建国大学については、文献で名前を知っていた程度だったので、少なくとも当時の内地よりも思想的に自由で先進な校風で描かれる話は、とかく勉強になったね。
学校の歴史の授業では、日中戦争以降のこの辺の時代がとにかく避けられる傾向があったから、まともに習った記憶がないんだよなあ。
ほとんど大学中に趣味みたいな感じで独学したもんですわ。

さて、歴史的事実を元にした作品とはいえ、基本的に主人公の出自に関わるサスペンスとして構成された話なので、素直に面白い。
それに歴史や人生を背負った人物が多々なので話しも非常に深みを感じます。
実際トロツキーや出自に関する謎やサスペンスは纏めに入る前に収束してしまって、終盤はノモンハン事件に関わる歴史マンガ的な雰囲気に変わった行った気もしなくもないけど、でも戦争に翻弄された主人公の残酷な青春の物語として読み応えはありました。

主人公がハーフなので、日本側(満州国軍)と抗日ゲリラ側の視点を行き来できたのも、作品主観のバランスにとって良かった。
これがどちらの視点に偏っていても、いまいち気持ちの良いモノにはならなかったろう。

そして関東軍参謀・辻正信の狂言回し的な訳としてデフォルメされたキャラクター。
これが大変良い。
この作品にあってその顔立ちなどは一人だけマンガなんだけど、その策士っぷりと信念…。
「正義王道の楽土をこの大東亜に実現し!
 ユーラシアを打って一丸となす大使命を果たさんがためなら
 百万の命も オレは惜しまんぞ!!」
との叫びは、後の歴史を知っていれば末恐ろしい決意でしかないけど、この辻少佐は“旧日本軍”のカリカチュアライズとして素晴らしい造形のキャラだと思います。


それにしてもやはり安彦さんはとんでもなく絵が上手い。
6年の連載でほとんど絵が変わっていない…、いや単純に絵が上手いというだけではない魅せる構成力がすごいんだよな、きっと。
これはセンスなんだよなあ。

現在執筆中の「機動戦士ガンダム THE ORIGIN」も続きを楽しみにしてます!
コメント
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