こげの耳に★ねんぶつ★

たわいない日々の思うことと愛犬こげと花が咲いていたら花の写真など

無人島で・・・

2012-04-09 05:30:30 | 読書
このブログ(新しくなってから)を始めたときは 失意にうちひしがれていた(大げさな)

私は、こんなときこそ本を読もうと思い立った。この日のために購入したわけではないけど

そう、買ったときはもっと私の思いは違ったところにあったのはたしか・・・



      『漂流』 吉村 昭 と『無人島に生きる十六人』 須川邦彦 

両方とも新潮文庫だったんだ。いま気がついた。昨年の三月以来、どう表現するのが言い得

ているのか、「人間ってどこまで生きられるんやろ」寿命ではなく、精神的にだ。あの

惨状を画面を通してみながら、被災した人が毎日毎日泣きながらも「前をみなくちゃ明日が

はじまらん」「がんばっぺ」「死んでいった人の分も自分たちが生きなきゃ」などと話す姿

が、「私は自分なら乗り越えられるのか」と思うことが多かった。そんなときNHKのニュー

スのコーナーで取りあげられていたのが『漂流』だった。いつものように家事をしながら

聞き流していたから詳しくは覚えていないけど、大震災に見舞われていないけどこの本を

きっかけに「生きる」ということに何かを感じた・・みたいなことだったかな。景気の

先行きとか仕事につけない若者とかにも読まれていると言っていた(ような気がする)。

うろ覚えなのも昨年の話だからしかたない、半年くらい寝かしておいた本だもん。

正直、近頃話題になった『蟹工船』みたいな本かな?くらいに思い(実際『蟹工船』は

暗そうなので読んだこともない)、いまの私に何かヒットするかも!で購入。届いた本を

開いて「え~、時代が江戸やん!苦手なジャンル。おまけに思ったよりぶ厚いやん」で

パラパラめくって年を越してしまった。

『無人島の十六人』も新聞の読書感想文を載せたところで、その感想文を読んで単に

「ふ~ん、面白そう」で買ったらカバーの表紙がとてもマンガチックで「え~、これは

お子ちゃま本?」パラパラめくると 途中の挿絵も「イラスト画」と言ったほうがいいくら

いの現代っぽいものでこちらも読まずに保留した。

 なにがきっかけになったのか?やはり今年の三月を迎えた頃だと思う。昼間はあれやこれ

やとバタバタするので、夜眠る前にしか読む気が起こらないので内容が期待外れだといつ

読み終わるか見当もつかない。気長に読むべぇ~と読みだしたのが『漂流』。

作者の吉村昭ってだれ?作家紹介には数々の文学賞を受賞したとあるけど私が知る題名が

ない。「序」からスムーズに読みすすんでいけるなかなかの内容だと、読み始めてすぐ思っ

た。江戸 天明年間しけにあい絶海の火山島の無人島に漂着した男たちは 水も食料もない

過酷な状況に一人、二人と死んでいき最後に一人だけになった長平は、その後また難破し

流れついた男たちと生きて家族に会おうと ありとあらゆる知恵をしぼり生きぬいていく。

長平にいたっては13年間も無人島で暮らしたことになる。作者は当時の幕府の記録や

藩の取り調べ書から、小説として書きおこしたもので実際そうだったかはわからないけど

生きて帰るという執念が痛いくらい伝わってきた(私見ね)ので、もうハラハラしどおしで

最初に仲間が体力的に弱り、精神的に弱りはじめたときにあれこれ工夫をする。帰れないと

悲観的になって食料も探さずゴロゴロしていると 病にとりつかれ足が腫れ、目の中まで

黄疸になり 歩くこともでき死んでいく・・長平は島に群れているアホウドリを殺し食糧に

するが 刃物もなく打ち寄せられた船材から釘を引き抜き石でたたいて 薄くし身を切り

開く火が無く生肉を食べることになる。アホウドリは無数にあるがそれだけを食べていては

栄養の過不足で体調を崩す者がではじめ、このままではみんな死んでいくと考えた長平は

一人、磯を歩き小さなカニやワカメを採る。水の確保も雨が降ったらアホウドリの卵の殻に

溜めることにし、洞窟のまわりに殻が並ぶ、虫やゴミが入らぬように殻の半分を蓋にして

蒸発もふせぐ・・・私は毎夜、長平の生きようとする姿にドキドキしながら読む。長平は

仲間のために鳥肉以外の食べ物を調達してくるけど、多くの仲間は帰国をあきらめ協力を

しない。ある者は一日ずっと洞窟の奥に向かって寝転がり、ある者は心が折れて海に飛び込

んでしまう。歩くことといろんなものを食べて絶対帰るという気持ち、そして彼らより前に

この島に流れ着いて脱出できずに 死んでいった船乗りたちの遺骨とともに信仰心も捨てず

弔う。生きていけない島で長平一人になった時、彼の様相はもう日本人という姿にはまるで

見えず、日焼けしアホウドリの羽を蓑にし、体からは鳥の臭いが立ち鬼が島の『鬼』のよう

だった。アホウドリを捕まえてその足につかまって脱出しようと考えたりする。長期にわた

りアホウドリを捕まえ肉を食べ、次に渡ってくるまでの食料用にそれで干し肉を作る。一人

あたり百羽以上を殺し続けるので、「無事に国に帰れたらもう二度と鳥を殺生しない」と

こん棒で鳥を追いかけ、叩き殺す。アホウドリも島に流れ着いた人間に怯えることもなく

卵をうみヒナを育て、また巣立って飛んでいくをこの島を休憩地とした時から繰り返してい

たのに、長平達を見ると逃げようとするほど恐怖心を持つようになってしまっていた。

新しく流れ着いた船乗りたちと長平は 今度こそ脱出しようと、でもそれまではなんとか

水と食料とそして沖に出るための船を持たなくてはならないと決心し、滅多に流れつかない

難破船の船材を集め、丁寧に釘を抜き船を造りはじめる・・・・

 私は読み終えてあまりにも現代とかけ離れた無人島での暮らしに、実際に刃物ひとつ、

水を溜めておく工夫、釘を造りだす手法などありとあらゆるものを江戸の時代にやっての

ける船乗りたちに敬服したのだ!この時代、学問所に通うことなく船乗りとして働く、

その前に違う仕事に就いて親方や、家業の技を見よう見まねで覚えておく、それらの知恵

が生きて帰れた証だと思い感動したのだ。水を多量に溜めておく池を造る辺りはそんなふ

うにするのか!と初めて知ったし・・。長平達が救助され生国に帰るまでにも、藩や国の

お調べがありすぐには家族の元に戻れない。八丈島の島抜け人ではないかと思われたりも

する。しかたがない、江戸時代多くの船が帰港できずに波の中に沈んでいき、何百人もの

船乗りたちが命を落としているのだ。島に流れ着いた板きれにそんな亡霊や亡者がとりつ

き、帰国できなかった無念を自分たちが脱出していく船に災いを乗せるんじゃないか、

「いやどうにか自分たちを帰らせてくれ。いっしょに日本に帰ろう」と沖に漕ぎだす。

 彼らの船乗りとしての知識と生きるという希望を持ち続けたことで難局を乗り切ること

ができた。最後のほうは、作者も「手を抜いた?」と思われる(私見ね)箇所もあったけ

ど、とても印象に残る一冊になった。


私はサバイバルものが好き?学生時代なぜだか男の子のマンガ誌の『サバイバル』さいと

うたかお のコミックを持っていた。『ゴルゴ13』の作者やろ?なんかあれも劇画チッ

クの絵で、内容は忘れたけど動物園から逃げ出した猛獣たちのシーンにはハラハラした。

あれは少年が友達と探検ごっこをしていたら 地震と火山の噴火で都市が崩壊し一人で

生き抜いていく話だったな・・・。楳図かずお『漂流教室』もコミックで途中まで買って

いたな。海外ドラマ『LOST』も 飛行機が爆発・墜落した島が怪しげで乗客がすさまじく

生きてアメリカに帰る・・・んだけど、いまだ何回見ても理解不能。私は生きぬけるだろ

うか・・・。もしものことが起こったら、私の意識の下に 長平 を置いておこう。でも

もしものことが起きて自分という意識があればいいけど・・・

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