いよいよパイパーセネカ(Seneca II / PA34-200T) のチェックアウトを受けることになった。この機体の保険には私を含めて3人のパイロットの名前が登録されている。私以外の二人は文句無しで保険がかかった。一人はレシプロマルチで千時間以上、総飛行時間が6000時間くらいあり、コーポレートパイロットをしていた強者。もう一人は軍のジェット輸送機を飛ばしていた飛行時間1万時間以上の強者。ここで問題は私。他の二人に比べ飛行経歴が弱すぎる(総飛行時間が550時間で双発がビーチクラフトダッチェス BE76のみの経験で50時間)。当然ながら保険会社は私だけに条件を付けて来た。
このセネカターボを私が一人機長として飛ばすにあたり、
1)最低5時間の同乗飛行
2)引き続き、最低5時間の単独飛行
この条件を満たして、初めて乗客を乗せられるというもの。
この機体を一人機長で自由に飛び回らせてくれと言うのは、今の自分の飛行経歴では明らかに少し早いのかもしれない。もう少しBeechcraft Duchessのような訓練機で時間を積むべきなのだろうが、せっかくの機会なので、色々な機体を飛ばせるようになりたいというのが正直な所。
まずはプリフライトインスペクション。第一印象は大きな機体、でも全高が低い機体。6人乗りのパイパーサラトガがベースなので、シングルエンジンの機体のような低い着座位置。この日のインストラクターR氏の推奨はプリフライトインスペクションとして2周するようにとの事。右主翼後ろから始まり、まずはエルロン、フラップなどを確認し、そのままランディングギアを確認、そして燃料をサンプリングする。それぞれの翼の下に3個のドレーンがある。fuel selectorは左右とも1タンクずつという扱いだが、この機体は長距離用の予備タンクを装備しており、実際はそれぞれの翼に2個ずつタンクがある事になる。そしてエルロンのヒンジなどを確認。オイルも確認するが、6-7クオーツで良いようだ。これで1周目終了。2回目はフラップを出して再確認、必要があればライトの確認。これでインスペクション終了。
いよいよ機体に乗り込み、チェックリスト読み上げでエンジン始動。まず、マスタースイッチオン、そしてこの時点で左右のオルタネータースイッチもオンになる(このタイミングは使うチェックリストで異なるかもしれない)。ミクスチャーリッチ、燃料ポンプスイッチオン、そしてプライムブーストボタンを押して燃料の流量が15gal/hrくらいになったらオフ。マグニートスイッチを2個ともオンにする。ここでスターターボタンを押してエンジン始動、すぐに燃料ポンプをオフとする。これを左右エンジンで繰り返す。この機体だと、エンジンが暖まるまで回転数は1200rpmを維持するらしい。
そして一通りのチェックリストをこなし、いよいよタクシーアウト。ちょっとした急なノーズギア操作でガタガタと揺れる。本当にノーズギアが弱い!!。これは速度を出して曲がったりしたら大変なことになる。あと1200rpm、ミクスチャーリッチのままでのタクシーが気持ち悪い。エンジンが暖まるまでは1000rpmなどにするとエンジンがラフるらしい。このあたりは他のセネカオーナーやパイロットに聞いてみたいが、ミクスチャーリッチのままタクシーするように言われた事に多少なりとも疑問を感じていた。
離陸前チェック(ランナップ)もBE76とこのPA34では流儀が違う。プロペラのフェザーリングチェックがアイドリング回転数のままチェックする。あと、この機体特有の癖なのかもしれないが、低回転ではプロペラピッチレバーが非常に鈍感なのに、高回転になると極端に敏感になること。いずれにせよ、この機体に慣れないといけないことが多い。 もう一つ注意しないといけないのが、セネカではFuel Selectorの中立位がOFF、前に倒してON、後ろに倒してCROSS FEEDということ。飛び慣れたDuchessでは中立位がCROSS FEEDだったので、ついつい勘違いしてしまいがち。一つ一つの動作を確認しながら行わないといけない。
いよいよ離陸、ノーズギアをいたわりながら滑走路に入る。フルブレーキで間にフォールドプレッシャー30インチまでスロットルを入れ、エンジン計器や震度などを確認、ブレーキをリリースして35インチまでスロットルを入れる。これがすぐにオーバーブーストしそうな勢い。なかなか気持ち良い加速を感じる。38インチまで上げられるので少し余裕があるが、ちょっと気をつけないと地上の気圧では38インチを遥かに上回り、簡単にオーバーブーストしそうだ。Positive Rateでギアアップし、Vy105ktくらで上昇。1000ftくらいまで来たら35インチから30インチまでスロットルを戻し、2500rpmくらいに回転数を下げる。このあたりは他のコンプレックス機と変わりなく、ターボを労るような特に丁寧なスロットル操作に気をつけるくらいでいいと思った。
この日はトーランス空港 Rwy29Rからストレートアウトだったが、最初は3500ftくらいまで昇りPractice areaでレベルオフ。2300ー2400rpm、Fuel Flow Gaugeで65% というのが65%出力設定。ここまでカウルフラップを開けたままだったが(チェックリスト通り)、シリンダーヘッド温がなかなか暖まらない。もともとこういうものなのか、計器の調整が必要なのか分らないが、とにかく早々にカウルフラップを閉めた。
そしてロングビーチ空港に向かい、一番長い滑走路 Rwy30に下りることにした。VFRでRwy30に着陸するにはSocal Appraochにコンタクトしなければならない。Rwy30にVFRで下りたいという旨を伝え、着陸に向けて1分1インチくらいの割合でスロットルを徐々に絞っていく。ピッチコントロールで500fpmの降下を維持。これがなかなか難しい。重さがある為か、思ったよりも抵抗が少ないのか、なかなか減速しない。目標は80kt、Short Finalでは75kt。最初はスロットル操作と速度処理が多少後手後手となった感じがあり、Vge129ktに到達した時点で早々にランディングギアを出した。これでかなり速度処理が楽になった。
JetBlueなどのAirbus320の間に入り、ロングビーチ空港 Rwy30のファイナルに乗った。このセネカの姿勢だが、想像以上のピッチアップだった。どこからランドアウトか分らないまま、微妙なエレベーター調整でまあまあの接地となった。まぐれで決まった着陸だ。 そのままRwy30から右に曲がるようにTAXI WAY "K"に入り、そこからRwy25Rまでのタクシーをリクエストした。すぐにVFRで離陸できることに。Straight Outで出て、別の大きな滑走路、トーランス空港 Rwy29Rに向かうことに。Fwy110の上空を飛び、Rwy29RのFinalを直角に近い感じで曲がり、集中しながら速度と高度の処理。2回目はこの機体に慣れてきて、なかなかの出来。接地もまあまあだった。ただ、速度処理などについてはインストラクターのアドバイスも入ったことから、自分で着陸した!と言えるほどじゃない。
2回の着陸をしたが、まだ着陸訓練が必要ということで、再びトーランス空港から離陸し、ロングビーチ空港まで戻ることにした。3回目の着陸になるが、ここではスロットルを抜くタイミングが3、4秒早く、ドーン!というショックを感じる着陸、、、。機体の特性をつかみ切っていない証拠だ。 再びロングビーチ空港からトーランス空港まで戻り、最初の着陸は気を引き締めてかかる。先ほどの大きめのショックの着陸が頭に残っており、トーランス空港への着陸はスロットルが残り気味となった。接地はスムーズだが、滑走路を使い過ぎる長い制動距離の着陸となった。
トーランス空港 Rwy29Rに着陸してタクシーバック、再びRwy29Rから離陸してくパイパーセネカ
(我々がセネカで飛んでいるのを無線で聴いたKさんが、ランプから撮影してくれた動画)
http://www.youtube.com/watch?v=6RIOoMhxyj4
この日はこの4回の着陸で終了。飛行時間は1.8時間だった。凄く面白い機体だが、これでマンモスヨセミテやセドナなどに自信を持って飛んでいけるようになるには、あと2回くらいは同乗訓練をやってもらわないといけない気がする。ただ、こうやって少しずつ大きな機体を飛ばして遊べる環境にあるのは有り難いことだ。
トーランス空港でセネカのチェックアウト1回目を終え、サンタモニカ空港に帰還することになった。愛機Grumman AA1ことヒヨコに乗り込み、帰途につく。この愛機はセネカの三分の一の重量。乗用車から原付に乗り換えたようだった。先ほどの緊張もほどけ、空の景色を楽しみながら飛べるのは愛機ならではだ。
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PA34-200Tはなかなか楽しい機体ですよ。本当のショートファイナルでは75kt近くになりますが、Vs0が69ktなので、その速度での進入はかなりnose up atitudeになります。85ktくらいで進入していくとラウンドアウトへの移行がかなり楽になりますが、かなりの制動距離が必要になります。過給器付きなのでこの機体で片発の訓練はしませんが、それ以外のフラップ無しや色々な速度域の着陸など、色々試して遊んでみたいと思ってます。CNOにもこれで遊びにいきます。
双発機はスピード感が全然違うんでしょうね。近いうちに自由に飛べるようになるなんて羨ましい限りです。
short finalで75ノットなんですか?!セスナとほとんど変わらないんですね・・・びっくり