日本の震災の様子、原発事故の様子について、アメリカと日本の両国の報道が耳に入ってくるので、様々な側面で物事が捉えられる。その反面、情報を基にしたコメントに一貫性がなく、不安を煽る。異国の地で働く愛国者を自負する自分としてはいたたまれない。沈んだ気持ちを盛り上げるため、リラックスする為、軽く空に上がることにした。自分にとって空を飛ぶことは最高にリラックスでき、大切な肉親を失った時にも、取り憑かれたかのように空を飛び続けた事がある。
サンタモニカ空港で愛機に乗り込む。気温は15度くらいで、飛ぶには丁度いい。ランナップの後、Rwy21にタクシーしていく。ここで管制塔の周波数に合わせると、JJ HelicopterのN教官(日本人)が飛ばすRobinson R44がサンタモニカ空港の管制域に入って来るべく交信していた。時を同じくしてこちらも離陸許可を要求。N教官もこちらの機体ナンバーを認識してくれたようだった。セスナサイテーションがショートファイナルに居たので、Immediate Take Off!と管制塔。Rolling!!と言って滑走開始する私。Rwy21から海岸線向けて離陸、眼下にはJJ HeliのR44が飛んでいるのが見える。お互いがお互いを認識している。このアメリカ、ロサンゼルス、サンタモニカの空域で、日本人アビエーター達が空で互いを認識し合っているというのも感慨深い。日本人ここにありという感じだ。
こちらはそのまま高度を上げ、Special Flight Ruleでロサンゼルス国際空港を越え、そのままシールビーチ空港上空を目指す。ちょっと鈍ってしまったHoldingの練習をする為だ。ロングビーチ海上からSocal Approachを呼び、”Request traffic advisory during holding pracitice over SLI 180 radial”と伝えた。すぐにSquawk 0202という覚え易い番号をもらい、レーダーコンタクトとなった。HoldingはDirect entry、結局は5周ほどStandard /右回りのパターンを回った。IFRではVORトラッキングを頻繁にしているが、それでも局上ホールディングの感覚は鈍るな実感。安全にHoldingするという意味では十分な出来だったが、針を追いかける精度、針の動きと機首から風を読む感覚が鈍っている。技術向上ではなく、技量維持にも練習は不可欠だと思った。Holdingの感覚を取り戻し、再びSocal Approachを呼び、トーランス空港ILS/Localizer Practice Approachを打ちたいとお願いした。すぐにレーダーベクターが始まり、3500ftから2000ftまで降下、最終的にはHeading 270でLocalizerをインターセプトした。雲が無いので気楽なもので、IAS 100ktを維持してファイナルを飛んだ。特に難無くアプローチ、着陸となった。着陸はノーフラップで、ノーズギアを持ち上げたままのウイリー走行をして遊んだ。
着陸のコクピット動画:http://www.youtube.com/watch?v=muXtEb1Qe2E
上記リンクの動画では、1分32秒の時点でメインギアが接地。そのままノーズギアを浮かせ、ラダー操作で左旋回し、ノーズギアを浮かせたままタクシーウェイへ曲がる。そして2分7秒でノーズギア接地となる。完全な遊びと言われればそれまでなのだが、ノーズを上げたまま主翼の空気抵抗を最大限に使って遊んでいると、ブレーキパッドの減りが少ないこと!。節約にもなる。
トーランス空港着陸後、そのままFuel Pitに向った。すると、先ほど上空ですれ違ったN教官がランプでヘリの整備をしていた。N教官と一緒にTさん、H君の姿も発見。全員日本人。今日は何故だか空や空港で日本人に会う確率が高い。Fuel Pitで給油を開始すると、初めて会うSさん(日本人)が話しかけてきて、”日本人の方ですか?、こちらで飛んでいるのですか?、これは自分の機体ですか?”と質問された。すでに自家用免許を持っており、今は計器飛行の免許に挑戦中とのこと。そうこうしていると、今度はCFIのN君(日本人)がBeechcraft Duchessに乗って着陸してきた。着陸後は彼もFuel pitへやってきた。そのまま、給油しながら立ち話となった。そうこうしていると、JJ Heliの教官、Hさん(日本人)の姿を発見。手を振って挨拶し合うと、Hさんは個人所有のR44に乗って、オーナーさんと共に飛んでいった。 ここは日本か?!と錯覚するほどの光景だった。でも、異国の地で、こうして日本人が空の世界に浸り、マナーを守って空を楽しみ、マナーを守って空で仕事をする姿は、極めて間接的ながら日本の為になっているのだと信じる。少し気持ちが明るくなる光景だった。
給油後、サンタモニカ空港に帰ることに。帰りはIFRで飛ぶことにした。Towe Enroute ControlでIFR Clearanceをもらう: fly runway heading, intercept LAX170 radial, V64, SMO125 radial, SMO VOR, SMO 059 radial, ELMOO, Direct;3000ft/4000ft 10min after departure; Departure frequency 134.9; Squawk 4xxx。このクリアランス、完全に暗記してしまっている。5分ほど離陸待ちがあるとSocal Approachから連絡があり、ランナップエリアで待機。そして離陸すると、すぐにレーダーベクターで北へと進路を振られる。最初は上昇の為にS字のクネクネ飛行をさせられた。この日は600−700fpmで上昇していたが、ロサンゼルス国際空港上空をIFRで通過する時には、最低4000ftの高度には上昇させられる。当然ながら、この機体で単純右旋回させられ直線飛行で北上したのでは、ロサンゼルス国際空港上空に達する時には3000ftくらいにしか来ていないと思う。最初はHeaidng030、そして330となり、採取的に030のHeadingで4000ft巡航となった。管制圏が134.9から128.5になり、ロサンゼルス国際空港に降りる機体(主にダウンウィンドを飛ぶ旅客機)を管制する周波数へと移る。1−2時の方向、MD80; 11時の方向、B737、、という感じで、非常に忙しい。この時の高度は3000ftなので、完全にロサンゼルス国際空港Class Bの中を飛んでいるから、忙しいのは当然の話し。速度もできるだけ維持するように言われ、2550rpmで飛行を続ける。降下時は125ktくらい、巡航時は110ktくらいで飛んでいたと思う。しばらくして135.05の管制圏にハンドオフされ、ここからは少し忙しさが軽減。とは言っても、サンタモニカ空港に降りるビジネスジェットが並びながらファイナルを駆け下りてきているようで、管制官からは”サンタモニカ空港まで斜めに直接飛んでいくVisual Approachを打ってくれないか?”とお願いされた。本当はVOR/GPS-Aを打ちたかったが、そこは”No problem”といって快諾。3000ftからサンタモニカ空港目指して左旋回降下、後続ビジネスジェットとの距離を考えて全速力で飛ぶ。すぐにサンタモニカ空港の管制塔へハンドオフされ、cleared for visual & cleared to landとなった。難無く着陸、そしてグランドにコンタクトすると、”Thank you for the help、taxi to LSE parking”とサンタモニカ管制官。お礼の言葉とともに、こちらの機体と駐機場所を認識していてくれている。
なんとなく暗い気持ちで飛び立ったが、日本人アビエーターここにあり!という感じのフライトで、少しは気分も晴れた。