LOS ANGELES FLIGHT DIARY

愛機ビーチクラフトボナンザで南カリフォルニアの空を駆ける日本人飛行機乗りの日記。

フライトログ:最近型のセネカVでクロカン飛行 第一話

2010-02-07 | Flight Log (機長)

パイパーセネカII / PA34-200Tを飛ばすようになってしばらく経つ。セネカの飛行時間も20時間くらいとなり、そのうち半分くらいがソロ時間。セネカという機体の魅力が見えてきた時期だが、幸運にも最新鋭のセネカV / PA34-220Tを操縦する機会を得た。セネカ自体の操縦性には慣れているので、セネカVを操縦するにあたっては最新鋭の機能を使いこなせるかというのが課題。さっそく事前勉強してみたが、やはり実際に飛ばしてみないと頭には入らない。

フライトの行程はTorrance Airport - Flagstaff Airport (もしくはSedona Airport) - Riverside Airport - Torrance Airportというもので、Flaggstaffまではチャーターフライトとなる。Flaggstaffで人をおろし、帰りにRiversideで一人ピックアップして帰還という予定。

使う機体は2008年登録のパイパーセネカV (PA34-220T)で、当然ながらAvidyne Glass Cockpit。オプション装備も満載で、Avidyne Situational Awareness Package, Satellite Data Link System, Weather Radar!!!, Traffic Alert, Yaw Damper System!!!, Known Ice Certified!, Build In Oxygen Sytem。それ以外に、快適装備でエアコン、低騒音インテリアがついている。

このフルオプションのお陰でPayloadが少ないのが難点。この日は大人4人、私が左席、友人CFI R氏が右席、後部席はこのフライトをチャーターした知人のS氏とその奥さん。二人の荷物が40キロ程度だが、これ位の積載で80galちょっとの燃料しか入れられない(満タン120gal)。豪華装備はいいが、1時間25gal、上昇中は44galくらい燃料を消費するこの機体、IFR Reserveを残して目的地に着陸する為にはかなり燃料計算に神経を使う。近距離なら良いが、この日はFlaggstaff Airport (FLG)までのフライト。朝の段階で100feet Overcast Visibility 1/8SM Temperature -1という状態。ダイバート先はClark Memorial Airport (CMR)、Sedona Airport (SEZ)、最悪の場合はPrescott Ernest Love Field Airport (PRC)。 Flaggstaff Airportまでは直線距離で340nm、IFRでダイバートすることになるとFuel Reserveがギリギリ合法。Clark Memorial AirportやSedonaはVFR-MVFRの状態なので、ダイバートするならCancel IFRとしようと決めた。Prescottは完全にVFRだったので、Cancel IFRでVFRで着陸すれば、30分以上のFuel Reserveは確実に残せる。アナログ時代の機体ならばこういう飛び方はしたくないが、Glass Cockpit デジタル計器のこのセネカVの燃料残量表示は極めて正確。

さっそくインストラクションを受けながらプリフライトを行い、Weight and Balanceを確認、そして必要量の燃料を給油した。特に寒い冬のチャーターフライトなので、ヒーターの使用は必至。ヒーター稼働による1時間2、3galの余分燃焼を見込み、右のみ5gal程度余分に給油した。いよいよ機体に乗り込んでコクピット説明開始。AvidyneのGlass Panelは初体験だが、Garmin G1000よりもとっつき易い感じがした。基本的にGarmin G430/530の使い方が分っていれば、2時間くらいのフライトである程度Avidyne Glass Cockpitを使えるようになると思う。

いよいよエンジン始動、恐ろしいほどスムーズ。これが新品のセネカかと感動するほど。ある意味ため息が出るほど。自分が普段飛ばしているセネカIIとは違う。タクシーしていても際めてスムーズ。目をつむってもこの機体が新品だと分るほど全てがスムーズ。オプションも入れて機体本体で有に120万ドルを越える機体。価格を感じながら飛行機を味わうのはダサい話しだが、その価格に納得させられてしまうほどの良さを感じてしまう、しかもタクシーしているだけで。ランナップも気持ちよく、チェックリストを淡々とこなす。そしてフライトプランを入力し、いよいよ離陸待ち。

我々の前に離陸していったのはビーチクラフトのギングエアー、そしてこちらもすぐに離陸となった。このセネカVはWastegate付きなので、フルスロットル39inchで回る2発のコンチネンタルは強烈な加速をする。いつも飛ばすセネカIIはWastegate無し!という操縦の困難さから、オーバーブーストを警戒して35-37inch程度のManifold Pressureしかかけられないのが悲しい。それにしてもこのセネカV、振動の少なさ、こもるような音の少ない静寂さ(レシプロ機にしては)、ジェットを飛ばすのはこんな感じなのか?!と錯覚させるほどの気持ち良さだった。Hazeというか雲というか、視程の悪いエリアを一瞬で突き抜けて上空へ出た。

120ktのクルーズクライムで11500feetまで上昇。オートパイロットで飛ばすのは後にして、エンルートで10分程の間ハンドフライトを楽しむ。乗客がいるのでYaw Damperをオンとしたが、コンピューターのラダー入力に馴染めず、なんだか変な感じがした。オートパイロットと連動したYaw Damperは良いが、ハンドフライトでYaw Damperをオンとするのは操縦しずらい(このクラスの機体では)。コンピューターのラダー操作と自分の操縦桿操作と戦っている感じになり、結果的に乗り心地が悪くなっている。むしろ自分が完全に操縦したほうが乗客にも良いと思い、ハンドフライトの時にはYaw Damper OFFとした。

エンルートでクルーズを開始してチェックリストを行っている時に感じたのだが、Prop Syncは便利な装備だと思った。エンルート2400rpm、27インチの65%パワーを設定し、Prop Sync!のスイッチを入れると勝手にプロペラをシンクロさせてくれる。クルーズチェックリストを行いながらPropを微調整するのは面倒で、神経質に微調整しながら30秒から1分くらいの時間を使ってしまいがちだ。それがProp Syncだと1秒で終了。これはパイロットの仕事負担を減らしてくれる気が利く装備だ。そんなもの必要なのか?と思っていたが、使ってみれば納得の装備。

65%の出力設定でTrue Airspeedが170kt、追い風もあってGround Speedは200kt。カタログデーターでは最高クルーズ速度が200kt弱となっているが、確実にその数値は出るなと思う。ただし、燃費を気にしなければ。燃料消費と速度のバランスを考えると、65-70%くらいの出力設定が良いのではと思う。 オートパイロットの使い方を習い、いよいよハンドフライトとはお別れ。せっかくだから自分の出て飛ばしたいなと思ったが、これが間違いだった。 Avidyne / Garmin430と組合わさったオートパイロットは比較的設定が容易で、管制官の指示に応じてコースの入力をしながらオートパイロットで機体を飛ばすのもなかなか楽しい。

動画:バンニングパスを高度11500ft 200ktで飛ぶセネカV
http://www.youtube.com/watch?v=_qirZsLFXsI


せっかくなので全部の装備を使おうと、Weater Raderを作動させた。別に嵐の中を飛行するわけじゃないが、ビジネスジェットや旅客機のように、目の前にレーダーのスキャン画面があるのはその気にさせる。地形、トラフィック、サテライトリンクで送られてくる気象データ、タービュランスが出ている位置、エアスペース、各空港の METAR、トラフィック、これらの情報が全部出ているMFDの上に、気象レーダーの画像がオーバーラップするように設定。情報過多の気もするが、これが案外見易い。ガルフストリームのG550などやAirbus A380でも飛ばさない限り、そこらへんのジェット機よりもGlass Cockpitのインターフェースの斬新性はAvidyneやG1000を積んだレシプロ/ターボプロップ機の方が優れていると痛感。こんな飛行機をIFRで飛ばしていれば、外の景色をスキャンするというパイロットとしての基本を完全に忘れてしまうだろう。それくらい凄いパッケージングだと思う。今まで自分が飛ばしてきたアナログのレシプロ機の世界とはまったく違う。

流石に200kt巡航をしているとすぐにFlaggstaff Airportが近づいてきた。気象情報 / METARなどがリアルタイムでコクピットに表示されるのは便利だ。この時のFlaggstaffは風向きと雲の低さ(300ft)でGPS Approachを使っていた。このアプローチのMinimumは400ft、下りれない可能性大。ウインドシールドヒーターオン、プロペラヒーターオン!と、 De-icing Systemのスイッチを入れる。氷点下の中、Visible Moistureに堂々と突入!。Jeppesenのアプローチチャートが画面に出ており、自分の機体の位置がアプローチチャートにオーバーラップして出てくる。これで飛んだらIFRの訓練にならないなと思うほどラクチン装備。ただ、これだけ豪華装備を持ってしても、Minimum以下に下がるわけにはいかず、結局Flaggstaffに下りることができずにMissed Approachとなった。もう一度Initial Approach Fixまで戻って Approachをやり直すべく、レーダーベクター開始。ここで燃料をチェックすると、もう一度アプローチを打てばReserveが1時間を切ることがわかった。ダイバーとするか、VFRに切り替えるか考えたが、一番ラクチンな選択肢、5分先のSedona AirportにVFRで下りることになった。難なくRwy3に着陸し、無事にランプイン。 乗客を下ろして任務終了。ここでR氏と二人でランチをして、トンボ帰りでロサンゼルスに戻ることになった。続きは第二話で。



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2 コメント

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Unknown (DAIJA)
2010-02-11 00:05:31
こんにちは、セネカ凄いですね!動画も拝見しましたが私が訓練で乗っていたセネカとはまったく違う飛行機に見えました!!

第2話が楽しみです。
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Unknown (C2)
2010-02-11 05:14:13
>DAIJAさん
グラスコクピットのセネカVは最高でした。カタログやパイパー社のサイトで見るよりも、実機のコクピットの方が数段格好良く、思ったよりも質感が高かったです。G1000におされて人気が低下中のAvidyneですが、なかなか使い易いシステムでした。
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